第54話 戦場の真実
サニアの交易路護衛を続けるうち、俺たちは王国の裏のやり方をさらに知ることになった。
襲ってくるのは、必ずしも王国兵だけじゃない。
流民を装った傭兵、飢えた盗賊団、操られたように動く魔物。どれも表向きは王国と無関係に見える。だが装備、連携、補給経路を辿ると、どこかで王国の影が見える。
「これ、もう戦争じゃん」
玲奈が討ち漏らしの短剣を拾いながら言う。
「表に出てないだけでな」
俺は答える。
今回も、薬材を運ぶ小規模商隊が襲われた。
だが盗賊にしては撤退判断が早すぎるし、魔物の誘導まで絡んでいた。しかも倒した一人の腕に触れた時、流れ込んできたのは戦場後方支援の技能だった。
「ただの賊じゃない」
俺が低く言う。
「兵站崩しに慣れてる」
サニアが舌打ちした。
「商いを狙ってるんじゃない。街を干上がらせるつもりだよ」
物資が滞れば、不満が溜まる。治安が悪化する。都市は内部から弱る。王国はそこまで見てやっている。
「最低ですね」
美咲さんの声も冷えていた。
「戦場って、前線だけじゃないんだな」
俺がぽつりと呟くと、サニアが苦く笑う。
「今さら気づいたかい。食い物、薬、道、噂、金。全部戦場だよ」
その言葉は重かった。
俺はこれまで、戦うと言えば剣や魔法のことだと思っていた。だが本当は違う。生きるための土台そのものが、既に戦場なのだ。
そして王国は、そこを狙うことにまるで躊躇がない。
「だったら」
俺は手にした書類束を見た。
「こっちも、戦い方を変えないといけないな」
ただ前線で勝つだけでは意味がない。
王国が壊そうとしているものを繋ぎ止め、奪おうとしている信用を逆にこちらの力へ変える必要がある。
戦場の真実は、想像以上に泥臭かった。
だが今の俺たちには、その泥臭さの方がむしろ現実的だった。




