第52話 第二召喚計画
フィリアが木箱の底から見つけた一枚の資料は、他のどの証拠よりも重かった。
表紙には簡潔に、だがはっきりと記されている。
第二召喚計画・再構築案
「……ほんとにあったのね」
美咲さんが低く呟く。
俺はその資料をめくりながら、胃の奥が冷えていくのを感じていた。
内容は断片的だが十分だった。前回の召喚結果を踏まえ、より管理しやすい対象を選定し、高位職定着率を向上させ、例外個体の発生を抑制する――そんなことが平然と書かれている。
「例外個体、ってやっぱり先輩ですよね」
玲奈が顔をしかめる。
「露骨すぎるだろ……」
フィリアは羊皮紙を何枚か並べた。
「前回の失敗点として、“器型変異”“職業未定着”“従属補正不完全”が挙げられてる」
「人間のことを物みたいに」
美咲さんの声は冷たかった。
「王国にとっては、最初から物だったんでしょうね」
フィリアは淡々と返す。
「戦力として召喚して、使いやすい形に整えて、国家資産として運用する。その延長よ」
最悪だった。
だが同時に、ようやく輪郭が見えてくる。
王国は一度目で味をしめたのだ。
聖導姫、精霊弓姫、剣聖、賢王参謀。高位職を得た召喚者たちは、王国にとって想像以上の成果だった。その一方で、俺みたいな異物も出た。だから次は、もっと精度を上げて、余計な例外を消すつもりなのだろう。
「止めないと」
玲奈が強く言う。
「絶対に」
「ええ」
美咲さんも頷く。
「もう、同じ目に遭う人を増やしちゃいけない」
俺は資料を閉じた。
追放されたことへの怒りは、まだ消えていない。
でも今はそれだけじゃない。もしこれを見過ごせば、俺たちと同じように勝手に呼ばれて、人生を壊される誰かがまた出る。
「第二召喚計画、潰す」
俺ははっきり言った。
「王国の禁術も、召喚も、全部だ」
ルナが静かに頷く。
「うん。それ、嫌い」
短いが十分だった。
無職の旗は、ただ王国から逃げるだけじゃない。
次は、王国がやろうとしていることを止めるために動く。




