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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第6章 禁術の証拠

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50/100

第50話 美咲の告白

その夜、倉庫の屋根の上で風に当たっていた俺のところへ、美咲さんが来た。


「ここ、好きね」

「静かなんで」

「確かに」


少し離れた場所に座る。

アストラの灯りは遠く、王都ほど整っていない。その雑多さが、今は少し落ち着く。


「相沢さん」

「はい」

「この前の答え、今すぐじゃなくていいって言ったけど……少しだけ続きがあるの」


真面目な声だった。

俺も姿勢を正す。


「私があなたを好きだって言ったの、本当」

「……はい」

「でも、それだけじゃない」


風が少し強く吹いた。


「たぶん私は、あなたに救われていたの」

「俺が?」

「ええ。会社でも、異世界に来てからも」


美咲さんは夜空を見たまま続ける。


「私は昔から、ちゃんとしてるように見られた。失敗しないように、迷惑をかけないようにって、ずっとそうしてきた」

「そんな感じはありましたね」

「でも、あなたはそういう私を、たまに少しだけ緩めてくれたの」


そんなつもりはなかった。

でも、彼女にはそうだったらしい。


「あの日、あなたが追放されて、私は初めて自分が“ちゃんとしてるだけ”だったって思い知った」

「……」

「守りたい人を守れなかったから」


言葉が重い。

軽々しく返せない。


「だから今ここにいるのは、後悔もある。でも、それだけじゃなくて……今度はちゃんと、自分の意志であなたの隣にいたいから」


前にも似た言葉は聞いた。

でも今夜のそれは、もっと静かで、もっと深かった。


「相沢さん」

「はい」

「私はあなたを支えたい。恋愛としても、仲間としても、どちらでもいいなんて言わない」

 そこで美咲さんは、初めてまっすぐ俺を見た。

「私は、あなたのことが好き」


夜風が止まった気がした。

言葉が出ない。

こんな状況で、こんなに真っ直ぐ言われるとは思っていなかった。


「……困ります?」

 少しだけ困ったように笑う。

「正直、かなり」

「でしょうね」


でも、その表情は少し柔らかかった。

俺は少し考えてから、ゆっくり言う。


「俺、まだ全部整理できてません」

「うん」

「美咲さんにも玲奈にも、まだ怒ってるところはあります」

「当然よ」

「でも……嫌じゃないです」

「え?」


「その、言ってもらえたこと」

 自分でもかなり言いづらい。

「嬉しくないわけじゃない」


美咲さんの目が少しだけ見開かれて、それからふっと和らいだ。


「十分よ」

「十分なんですか」

「今のあなたからそれ以上を引き出そうとしたら、嫌われそうだもの」

「否定できないです」


少しだけ笑い合う。

その空気が、思っていたよりずっと自然で、少し救われた。

王国のこと。戦いのこと。証拠のこと。全部まだ終わっていない。

むしろここからが本番だ。

でもその前に、今だけは一つだけ確かだった。

俺たちはもう、ただの元同僚じゃない。

戦いの中で、ちゃんと自分の意志を持って、同じ側に立っている。

そのことが、何より大きかった。

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