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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第6章 禁術の証拠

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第49話 玲奈の選択

アストラの宿で、玲奈は一人、窓辺に座っていた。

夕方の光が斜めに差し込み、机の上の矢じりが鈍く光る。

最近ようやく落ち着く時間ができたはずなのに、心はちっとも落ち着かなかった。

先輩と再会して、王国を離れて、今は同じ場所で動いている。

それなのに、まだ胸の奥には引っかかりが残っている。


「……私、どうしたいんだろ」


小さく呟く。


好きだと言った。

それは本当だ。

でも、それだけじゃない。

自分は先輩を助けられなかった。

その後悔がずっとある。


今ここにいるのが償いのためだけなのか、自分で選んだからなのか、その境界が時々分からなくなる。


「悩んでる顔」

 不意に声がして振り向くと、ルナが扉のところに立っていた。


「ノックしてくださいよ」

「した」

「気づかなかった……」


ルナはつかつかと入ってきて、ベッドの端に座る。


「玲奈、先に言う」

「何を」

「コーイチのこと、好きなのは知ってる」

「うっ……」


直球すぎる。

ルナは構わず続ける。


「でも、それだけでここにいるなら、たぶんだめ」

「……」

「戦う時、迷うから」


玲奈は視線を落とした。

図星だ。

好きだから一緒にいたい。

でも、それだけでは足りない気もしていた。


「私、先輩に助けられたんだと思う」

 ぽつりと口に出す。

「会社でも、異世界に来てからも。だから今度は私が助けたいって思ってる」

「うん」

「でも、それってちょっと自己満足かもしれない」

「うん」

「そこで全部うんって言うのやめてくれません?」

「ほんとだから」


ぐうの音も出ない。

ルナは少しだけ考えてから言う。


「玲奈、自分で決めたらいい」

「決める?」

「助けたいでも、好きでも、怒ってるでもいい。誰かのせいじゃなくて、自分でここにいるって決める」


シンプルだった。

でもたぶん、それが一番難しい。

しばらく黙っていた玲奈は、やがて息を吐いた。


「……私、王国が嫌いです」

「うん」

「先輩を捨てたことも、私たちを使おうとしたことも、全部」

「うん」

「だから止めたい。先輩のためだけじゃなくて、私自身が嫌だから」

「それでいい」


ルナは即答した。


「玲奈が玲奈で決めたなら、それでいい」

「……ありがと」

「うん」


少しだけ胸が軽くなった。

好きだから隣にいたい。

でもそれだけじゃない。

自分の意志で、王国を止めたい。

その答えがようやく少し形になった気がした。


「じゃあ、明日からもっと頑張ります」

「玲奈、もともと頑張ってる」

「じゃあもっとです」

「欲張り」


その言い方に、思わず笑った。

玲奈の選択は、ようやく“誰かの後悔”から少しだけ離れた。

自分で選んで、ここにいる。

それだけで、矢を握る手に少し力が戻った気がした。

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