第47話 敵では終われない
アストラへ戻った翌日、俺たちは木箱の中身を整理した。
フィリア、サニア、そしてギルド側の口が堅い人間を最低限だけ交える。
「うわ、これは本気でやばいわね」
フィリアが一枚目を見た瞬間に言った。
「召喚陣の改造記録?」
俺が聞く。
「それだけじゃない。職業定着補助に精神誘導、適応強化、制御性評価……王国、想像より数段悪質よ」
サニアも資料を見て舌打ちした。
「これが本物なら、商会どころか諸国全部が黙っちゃいないよ」
「でも出し方を間違えると、逆に握り潰される」
美咲さんが冷静に言う。
その通りだった。
証拠はある。
でも、見せれば勝ちじゃない。
どこに、どう出すかで全部変わる。
「それに」
フィリアが別の紙束をめくる。
「この資料、途中で繋がってる。王国単独じゃないかもしれない」
「どういうことだ?」
「古代術の解析系統が複数あるの。王国の宮廷魔術師だけじゃなく、外部協力者がいる筆致」
つまり、王国の裏にはまだ何かいる。
厄介すぎる。
その時、サニアが机を軽く叩いた。
「だからこそ、敵を一つに決めない方がいい」
「……?」
「王国と敵対してる連中は、人間国家にも亜人国家にもいる。全部まとめて敵味方で分けると、利用できる手札まで捨てることになる」
セラフィナとの接触を思い出す。
敵では終われない。
そういう相手が増え始めている。
「魔人側とも、条件次第では組むべきだと?」
俺が聞く。
「組むって言い方は早いけどね」
サニアは肩をすくめる。
「少なくとも、王国より話が通じるなら使えばいい」
フィリアも珍しく同意した。
「研究資料の保全だけ考えても、その方が合理的ね」
そこで玲奈が少し不安そうに言う。
「でも……私たち、王国から見たら完全に敵国通じですよね」
「もう今さらだろ」
俺が言うと、玲奈は複雑そうに笑った。
「それもそうなんですけど」
美咲さんが静かに口を開く。
「私は、王国を止めたい」
「美咲さん」
「でも、人間全部と敵対したいわけじゃない。王国にいる普通の人たちまで、敵にしたいわけじゃないの」
その言葉に、俺も頷いた。
同じだ。
王国を壊したいわけじゃない。
王国の嘘と禁術を止めたい。
そのために、敵では終われない相手がいるなら、利用する。
「じゃあ決まりだな」
俺は言う。
「王国以外で組める相手は選ぶ。国や種族じゃなく、目的で見る」
「賛成」
サニア。
「妥当ね」
フィリア。
「うん」
ルナ。
玲奈も美咲さんも、最後に頷いた。
線引きが少し変わる。
人間か、魔人か。
王国か、反王国か。
そんな単純な話ではもうない。
この戦いは、もっと入り組んでいる。




