第44話 旧神殿潜入
フィリアの調査と、サニア経由で入った裏情報が噛み合ったのは、その二日後だった。
アストラ郊外にある旧神殿跡。
今は半ば廃墟だが、夜になると王国筋の人間が出入りしているという。
「王国の表施設じゃない」
サニアが地図を指で叩く。
「だからこそ、表に出せないものを置いてる可能性が高い」
「召喚絡み?」
俺が聞く。
「かもしれないし、別件かもしれない。でも、あんたらにとって無関係とは思えないね」
行くしかなかった。
もちろん全員賛成ではない。
「危ない」
ルナはいつも通り短く言う。
「でも、行くんだろ」
「ああ」
「ならルナも行く」
最近こればっかりだ。
日が落ちてから、俺たちは旧神殿へ向かった。
建物自体は崩れかけていた。柱は折れ、壁面の彫刻も風化している。だが入口周辺だけ妙に足跡が多い。
「見張り二人」
玲奈が小さく告げる。
「正面」
「横から入る」
俺が決める。
裏手は半壊していて、床下に近い隙間があった。ルナが先行し、俺、美咲さん、玲奈と続く。
中は想像以上に広かった。
崩れた礼拝堂の奥に、地下へ続く階段がある。しかも新しい灯りの痕跡まである。
「当たりだな」
「嬉しくない当たりですね」
玲奈が小声で言う。
地下へ降りると、空気が変わった。
冷たい。
それに、微かに薬品の匂いがした。
奥の部屋から人の声が聞こえる。
「第二段階の適合率は?」
「聖属性側は安定しています」
「器側の検証は?」
「例外個体の喪失により停滞中です」
例外個体。
その言葉だけで、背筋が強張る。
俺のことか。
壁際からそっと覗くと、白衣に近いローブ姿の術者たちが机を囲み、資料を広げていた。
そこに並んでいたのは、召喚陣の図、職業相関図、そして――
「……俺たちの名前」
美咲さんが息を呑む。
本当にあった。
朝倉美咲、篠宮玲奈、桐生大雅、神崎恒一郎、相沢恒一。
それぞれの職業名と、適性、制御性、危険性。
人じゃない。完全に実験資料だ。
玲奈が震える。
「なにこれ……」
俺は喉の奥が冷えるのを感じながら、その中の自分の欄を見る。
職業欄:空欄
備考:定着失敗/器型変異の可能性
処理:保留後、排除許可
処理。
銀貨十枚で追い出した時点で、王国にとって俺はもうそういう扱いだった。
「……持ち帰る」
俺が言う。
「全部は無理でも、証拠になるものを」
美咲さんも頷いた。
「ええ」
その時、奥の扉が開いた。
「誰だ」
まずい。
見つかった。




