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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第6章 禁術の証拠

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第42話 召喚陣の残滓(改編)

翌日、フィリアに呼ばれて、俺たちは学術区のさらに奥へ向かった。


古代術関係の保管庫らしい。一般人はまず近づかない区域で、道も建物も妙に静かだった。


「こんな場所、よく入れますね」

「研究者特権よ」

「便利だな、それ」

「努力の結晶と言いなさい」


案内された地下室には、砕けた石版や古びた金属枠、魔術式の刻まれた板がいくつも並んでいた。

その中央にあったのは、円形の黒い石盤だった。


「これが?」

「召喚陣の残滓よ」


フィリアは真面目な顔で言う。


「完全なものじゃない。古代遺跡から発掘された破片を、私が解析用に復元しただけ」

「でも、召喚術の一部は残ってる」

「ええ」


俺は近づいて、石盤を見下ろした。

見覚えがある。

いや、正確には雰囲気だ。

王国で俺たちを呼び出した時、足元に広がったあの異様な幾何学模様。あれとどこか似ている。


「触らないでね」

「……今言います?」

「あなた、何でも吸いそうだから」


信用がない。

だがその通りでもあるから困る。

フィリアは石盤の縁を指差した。


「見て。通常の召喚陣は“来訪者の定着”と“世界への接続”を目的に作られる。でもこれは違う」

「違う?」

「接続だけじゃなく、切り分けてるの。魂の情報を」


よく分からない。

たぶん顔に出ていたのだろう。フィリアが呆れた。


「要するに、召喚された人間をそのまま運ぶんじゃなく、この世界に適合しやすい形へ再編してる可能性があるってこと」

「……職業を与えるために?」

「その可能性が高いわね」


美咲さんが小さく息を呑んだ。


「じゃあ、私たちが高位職を得たのも」

「偶然じゃないかもしれない」

 フィリアが答える。

「最初から“そうなるように調整された”可能性はある」


ぞっとした。

異世界召喚そのものが事故じゃない。

職業付与もまた、自然な恩恵ではない。

全部が術式の結果だとしたら。


「……俺だけ空白だったのは」

「術式に乗らなかったのか、弾いたのか、あるいは別系統だったのか。そこはまだ分からない」


そこでルナが石盤の近くにしゃがみ込む。


「やな感じ」

「分かる?」

 俺が聞く。

「うん。匂いが変。人の匂いなのに、人じゃないみたい」


その表現が妙にしっくりきた。

フィリアも頷く。


「古代術の再利用品はよくそうなるわ。形だけ真似て、本来の意味を理解しないまま使うと、術は歪む」


王国は、そんなものを使ったのか。

俺たちを呼ぶために。

フィリアは少し迷ったように、それから口を開いた。


「もう一つある」

「何ですか」

「あなたたちの召喚陣式、発掘された古代術そのままじゃない。後代の改造が入ってる」

「改造?」

「ええ。かなり新しい筆致。王国か、王国に近い術者集団の手ね」


玲奈が顔をしかめた。


「そこまでして……」

「戦力が欲しかったんでしょうね」

 フィリアは淡々と言う。

「でも、その代償が何かまでは考えなかった」


俺は石盤を見つめた。

銀貨十枚で追い出された、あの日。

全部が偶然の不運だと思っていた。

でも違う。


もっと前から、俺たちは使うために選ばれていた。


「触ってみる?」

 フィリアが急に言った。


「は?」

「もちろん慎重に。あなたなら、この残滓から何か拾えるかもしれない」

「やめた方がいいのでは」

 美咲さんがすぐ止める。

「危険すぎるわ」

「でも必要だわ」

 フィリアは譲らない。

「王国が何をしたのか知るには、当事者である彼の器が一番近い」


嫌な理屈だ。

でも、間違ってはいない。

俺は少しだけ迷ってから、頷いた。


「……やります」

「コーイチ」

 ルナが袖を掴む。

「無理ならすぐやめる」

「ああ」


ゆっくり手を伸ばす。

冷たい石に指先が触れた、その瞬間。

頭の奥で、白い光が弾けた。

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