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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第5章 自由都市アストラ

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第40話 無職の旗

アストラでの数日で、少しずつ人が繋がり始めた。


サニアの商会からは追加の小口依頼が回るようになり、ギルドでも“王国絡みでも仕事をこなす連中”として覚えられ始めた。フィリアは召喚術の断片資料を持ち込み、代わりに俺の力の観察を続けている。


さらに、サニア経由で王国に居場所を奪われた商人や、獣人差別から流れてきた者たちとも接点ができた。


追われている者。

 切り捨てられた者。

 どこにも属せない者。


そんな連中が、少しずつこの宿の一角や、借りた小さな倉庫へ出入りするようになった。


「増えたね」

 ルナが倉庫の隅で呟く。

「そうだな」

「にぎやか」

「面倒も増えたけどな」


笑いながらそう返した時、サニアが酒瓶片手に近づいてきた。


「あんたら、変な集まりになってきたね」

「そう見えますか」

「見えるとも。王国に睨まれてる無職の男を中心に、流れ者や厄介者が寄ってきてる」


ひどい言い方だが、だいたい合っている。


「名前でもつけたらどうだい」

「名前?」

「こういうのは旗印があった方が人は集まるよ」


俺が言葉に詰まっていると、近くで酒を飲んでいた情報屋風の男が笑った。


「無職の旗、ってのはどうだ?」

「は?」

「王国が無職だ無能だって切った男のところに、行き場のない連中が集まってる。皮肉が利いてて悪くねえ」


周囲に小さな笑いが広がる。


無職の旗。


馬鹿にしているようで、でも不思議としっくりきた。


「悪くないですね」

 玲奈が笑う。

「むしろいいかも」

「うん」

 ルナも頷く。

「コーイチっぽい」

「どこがだよ」

「追い出されたところ」


そこは否定できない。


美咲さんが静かに微笑む。

「少なくとも、もう“ただ逃げてるだけの集まり”じゃないわね」


その言葉に、俺は倉庫の扉の外を見た。アストラの雑多な灯りが遠くに揺れている。


追放された無職。

 王国にとっては失敗作だった男。

 でも今、その周りには少しずつ人が集まり始めている。


大きな勢力じゃない。

 立派な組織でもない。

 ただ、行き場のない連中が寄り合って、明日を繋ごうとしているだけだ。


それでも、旗にはなる。


「……無職の旗、か」

 俺は小さく呟く。

「悪くない」


誰かが笑い、誰かが酒を掲げる。

 倉庫の中に、少しだけ熱が広がった。


王国は俺を切り捨てた。

 ならその先で、自分たちの居場所くらいは自分で作る。


もう逃げるだけじゃ終わらせない。

 次はこっちから、王国の嘘を暴いてやる。


そう静かに誓いながら、俺は小さな宴のざわめきを聞いていた。

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