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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第5章 自由都市アストラ

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第39話 切り捨てた側

捕らえた男をギルド経由で中立都市側へ引き渡した後、俺は一人で宿の屋上に上がった。


夜風は冷たい。だが頭の中は妙に熱かった。


神崎恒一郎。会社にいた頃から、あの人はいつも“正しい”側にいた。効率的で、冷静で、誰よりも状況を読んでいた。だから上からの評価も高かったし、現場でも逆らいにくかった。


でも今なら分かる。


あの人の正しさは、切り捨てる側の正しさだ。


「考え事?」

 背後から美咲さんの声がした。


「まあ、そんなところです」

「神崎さんのこと?」

「ええ」


彼女は俺の隣に立ち、しばらく街の灯りを見下ろしていた。


「会社にいた頃から、あの人は変わらないわ」

「でしょうね」

「組織にとって不要なものを切る。それ自体は間違いじゃない時もある。でも……」

「自分が切ったものの重さを、感じない」

「うん」


短い言葉だったが、十分だった。


下では玲奈とルナが何か言い合っていた。たぶん食事のことで揉めている。そんな小さな音が、妙に遠く感じる。


「次に会ったら」

 俺は静かに言う。

「もう、先輩後輩じゃ済まないですね」

「ええ」


神崎との間に残っていた会社員時代の情は、さっきのでかなり削れた。向こうがそういうつもりなら、こちらも覚悟を決めるしかない。


切り捨てた側と、切り捨てられた側。


その関係は、もう取り返しがつかないところまで来ていた。

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