第38話 襲撃者たちの正体
王国の手紙が届いた翌晩、宿の周辺に妙な気配が増えた。
「外、四人……いや、もっと」
ルナが低く言う。
「武器あり」
「やっぱり来たか」
俺は短剣に手をかけた。
窓の隙間から見ると、裏路地に紛れるように男たちが散っている。冒険者風の格好だが、動きが整いすぎていた。さらに、屋根の上にも気配。
「賞金稼ぎじゃないですね」
玲奈が囁く。
「ええ。処理班ね」
美咲さんの表情が冷える。
宿を巻き込みたくない。俺たちは最低限の荷だけ持ち、裏窓から脱出した。だが相手はそれも読んでいたらしい。
「いたぞ!」
叫びと共に、屋根上から投網が落ちる。
咄嗟に横へ転がって避ける。ルナが一番早く動き、着地した男の膝を蹴り砕くように崩した。
玲奈の矢が飛ぶ。灯りを消すための一射。路地が暗くなり、相手の視界が鈍る。
「いいぞ!」
俺は気配を薄くしながら死角へ回る。潜伏系の断片がここで生きる。相手の連携役へ近づき、腕に触れる。流れ込んだのは追跡術と簡易暗号の感覚。やはりただの賞金稼ぎじゃない。
「王国だな」
そう吐き捨てながら、腹へ一撃入れる。
美咲さんは結界で一時的に路地を塞ぎ、ルナは白兵戦で前線を崩す。玲奈は高所から援護。かなり連携が仕上がってきていた。
最後に一人だけ取り押さえ、俺たちは顔を覆っていた布を剥いだ。すると首筋に小さな印が見えた。王国軍、それも参謀部付きの特殊隊の印だ。
「神崎先輩……」
玲奈が息を呑む。
捕らえた男は最初こそ黙っていたが、ルナに無言で睨まれたのと、俺が王国印を見せつけたことで観念したらしい。
「命令主は……賢王参謀、神崎殿だ」
やっぱり、か。
俺は静かに息を吐いた。
神崎はもう、俺を元同僚ではなく“処分すべき対象”として完全に見ている。




