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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第5章 自由都市アストラ

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第36話 古代術解析師

サニアの依頼を終えた翌日、俺は情報を探してアストラの学術区へ足を運んだ。古い書庫、道具屋、術式研究所のような建物が集まる一角で、街の喧騒とはまた違う空気がある。


「難しそうなにおい」

 ルナがぼそっと言う。

「分かる」

「先輩、完全に場違いですよね」

 玲奈まで言う。

「お前らな……」


そんなやり取りをしていた時だった。


「ちょっと、そこのあなた」

 背後から声が飛んだ。


振り返ると、エルフの女が立っていた。長い銀髪、細い眼鏡、年齢不詳の整った顔。だが何より目が妙に鋭い。


「あなた、変ね」

「初対面でそれはどうなんですか」

「事実よ」


言い切られた。


「普通の職業持ちなら、魂の層に職痕が一つ、あるいはせいぜい二、三重に見える。でもあなた、空白なのに、複数の職痕が薄く重なってる」

「……」

「しかも全部、定着の仕方が変」


背筋が冷えた。


この女、見えている。


俺が黙ったままでいると、彼女は少しだけ口元を上げた。

「自己紹介がまだだったわね。フィリア。古代術解析師よ」


古代術解析師。

 聞いただけで面倒そうな職業だった。


「あなたのそれ、システムの外側にある感じがするの」

「システム?」

「職業という仕組みそのもののことよ」


周囲の人目もある。こんな場所で深く話す内容じゃない。


俺が警戒しているのを見て取ったのか、フィリアは肩をすくめた。

「安心して。大声で言いふらしたりはしないわ。むしろ興味があるの」

「研究対象として?」

「ええ、最高に」


笑顔で言うな。


それでも、彼女がただの変人ではなく、本当に何か知っているのは分かった。王国の召喚術や職業システムに踏み込める相手は貴重だ。


「条件があります」

 俺は言う。

「俺のことを勝手に外へ流さないこと」

「いいわ。その代わり、私の知っている召喚術関連の断片も共有する」

「……乗ります」


フィリアは満足そうに頷いた。

「話が早いのは好きよ。あなた、本当に面白いわね。欠陥じゃない。むしろ、枠がない」


その言葉は妙に残った。


職業なしじゃない。枠がない。

 もしそうなら、王国の鑑定で空白だったことにも意味があるのかもしれない。


アストラに来て初めて、俺たちは“力の正体”に近づけるかもしれない相手と出会った。

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