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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第5章 自由都市アストラ

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第35話 見えない戦争

サニアの護衛依頼は、表向きは単純だった。アストラで仕入れた薬品と金属素材を、中継商館まで運ぶだけ。距離もそう長くない。


だが実際には、道中で二度も不自然な気配を感じた。


「左、二人」

 ルナが囁く。

「前方にもいます」

 玲奈が矢を番える。


街道脇の林から飛び出してきたのは、見るからに盗賊風の男たちだった。だが動きが雑すぎない。装備も揃っている。王国の正規兵が、盗賊のふりをしているようにしか見えなかった。


「荷を置いていけ!」

 叫びは安っぽいが、包囲の形はきれいだった。


「やっぱり来たね」

 サニアが馬車の陰で吐き捨てる。

「商売敵ってより、国の臭いがする」


戦闘は短かった。玲奈が先制で二人の足を止め、ルナが近接で崩す。俺は前へ出た男の腕を掴んだ瞬間、潜伏系の妙な感覚を写し取った。隠れる、待つ、奇襲するための職能だ。


戦いが終わった後、捕らえた男の装備を調べると、案の定、裏地に王国系の工房刻印があった。


「見えない戦争、ってやつだよ」

 サニアが吐き出すように言う。

「兵を動かせば問題になる。だから盗賊、難民、魔物を使う。表じゃ平和ぶって、裏じゃ商路を噛み切る。最近の王国はそういうやり方が増えた」


俺は無言でその刻印を見つめた。王国はもう、国境だけじゃなく、交易そのものを戦場にしている。


サニアは俺たちをじっと見た。

「あんたら、ただの流れ者じゃないだろ」

「……どうしてそう思うんです」

「王国の臭いに、真っ先に顔をしかめたからさ」


答えは濁した。だが、サニアもそれ以上は追及しなかった。


「まあいい。仕事をこなせるなら、過去は問わない。この街はそういう場所だ」

 彼女は笑った。

「ただし、役に立つ限りはね」


アストラらしい言い分だった。冷たくて、でも公平だ。


依頼を終えた帰り道、俺は写し取った潜伏技能の感覚を確かめる。視線の切り方、物陰の使い方、気配を薄くする意識。戦い方の幅がまた少し広がった。


だが同時に、王国のやり方の汚さも嫌というほど見えた。


見えない戦争。

 その言葉は思った以上に、今の世界を正確に表している気がした。

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