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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第5章 自由都市アストラ

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第34話 居場所の値段

アストラで一晩過ごして、最初に思い知ったのは金の減り方だった。


「……やばいな」

 朝、宿代と食費を計算して思わず呟く。


ラドスでは何とか持っていた銀貨も、アストラでは驚くほど減る。物価が高い。安全にも、情報にも、まともな部屋にも金がかかる。


「なくなる?」

 ルナが覗き込む。

「このままだとすぐだな」

「じゃあ稼ぐ」

「そのために来たんだ」


俺たちはアストラの冒険者ギルドへ向かった。建物はラドス支部よりずっと大きく、依頼の種類も幅広い。討伐だけでなく、護衛、輸送、調査、仲介、商談の警護まである。


受付で確認すると、ラドスの登録はそのまま有効だった。ただし、低ランク扱いなのは変わらない。


「実績がなければ高報酬依頼は回せません」

 受付嬢は事務的に言う。

「王国絡みの問題を持ち込む場合、保証金が必要です」

「王国絡みって分かるものなんですか」

「最近、増えてますので」


嫌な話だった。


掲示板を見ても、低ランク向けは報酬が低すぎる。高報酬依頼は信用が足りない。


「中間がないわね」

 美咲さんが言う。

「信用を金に換える街なんだろうな」

 俺は答える。

「実績がない奴には安い仕事しか来ない」


その時、少し離れた場所で怒鳴り声がした。


「だから護衛が足りないって言ってるだろう!」

「条件が悪すぎるんだよ、旦那」

「報酬は追加する!」

「王国筋の襲撃があり得る荷なんて、割に合わねえ」


思わずそちらを見る。揉めていたのは、恰幅のいい女商人と受付係、それに数人の冒険者だった。派手な装いだが、目つきが鋭い。場数を踏んだ人間の顔だ。


その女が、こちらと目を合わせた。


「……あんたら、外から来た口だね」

「そうですけど」

「腕は?」

「そこそこ」

「信用は?」

「ない」

「正直でいい」


女商人はにやりと笑った。


「なら、ちょうどいい。私はサニア。荷運び兼護衛を探してる。王国絡みの横槍が入るかもしれないから、嫌がる連中ばかりでね」

「報酬次第では」

 俺が答えると、サニアは指を三本立てた。

「銀貨三十。成功なら追加で十」

「……破格ですね」

「その代わり、面倒も破格だよ」


王国製の装備をつけた連中が最近、交易路で襲撃を繰り返しているという。表向きは盗賊だが、動きが妙に統制されているらしい。


俺たちは顔を見合わせる。


金が必要だ。

 実績も必要だ。

 そして何より、王国の影を探るには悪くない依頼だった。


「受けます」

 俺が言うと、サニアは満足そうに頷いた。

「話が早い。じゃあ、あんたらがこの街で生きるための最初の値段を払ってもらおうか」


居場所の値段は安くない。だが、払うしかなかった。

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