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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第5章 自由都市アストラ

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第32話 それぞれの本音

その夜は、森を抜けた先の古い野営地跡に泊まった。石で囲った焚火跡が残っており、風を避ける岩場もある。こういう場所を自然に選べるようになった自分に、少しだけ苦笑する。


簡単な食事を終えたあと、しばらくは火の音だけが響いていた。沈黙を破ったのは、美咲さんだった。


「……ちゃんと、言っておきたいことがあるの」


火の向こうで、その表情はひどく静かだった。


「前にも少し言ったけど、あの日のことだけじゃなくて、その前から。会社にいた頃から、あなたのことが気になっていたの」

「美咲さん……」

「気づいてないと思うけど、相沢さんって昔から、人の間に立つことが多かったでしょう。損な役回りも多かった。でも、誰かが困ってると放っておけなかった」


俺は返事をしなかった。否定したところで、たぶん見透かされる。


「だから、あの日、何もできなかった自分が許せなかった。私は、あなたを守れなかった」

 美咲さんは目を伏せる。

「それでも今、今度こそ隣に立ちたいと思ってる。後悔だけじゃない。たぶん、ずっと前からそうだった」


告白だった。真っ直ぐで、逃げ道のない言葉だった。


その空気を引き継ぐように、玲奈が膝を抱えて口を開く。


「ずるいです」

「玲奈?」

「私だって言おうと思ってたのに」


玲奈は赤くなりながら、でも俺から目を逸らさなかった。


「私も先輩のこと好きでした。最初は頼れる先輩だなってだけだったけど、気づいたら、それじゃ済まなくなってた」

「……おい」

「最後まで聞いてください」


勢いのまま言っているようで、その声は震えていた。


「異世界に来て、先輩だけ追い出されて、何もできなかった自分が本当に嫌でした。今もまだ、自分が許せてません。でも、それでも私は先輩の隣にいたいです。今度は、自分で選んで」


重い。正直、かなり重い。


横からルナが俺の顔を覗き込んだ。

「コーイチ、困ってる」

「そりゃ困るだろ」

「うん。ちょっと面白い」

「お前な……」


少しだけ空気が緩む。それでも、誤魔化したくはなかった。


「……ありがとう」

 まずそれだけは言う。

「二人とも、ちゃんと伝えてくれてありがとう。でも、今すぐ答えを返せる状態じゃない。あの日のことも、今の状況も、まだ整理できてない」


「うん。それでいい」

 美咲さんは穏やかに頷いた。

「そういうの、ずるいですよね」

 玲奈が苦笑する。

「大人だなあ」


すると今度はルナが小さく言った。

「ルナは、コーイチといる」

「知ってる」

「好きとか、まだよくわからない。でも、一緒にいたい」

「……」

「だから、他の二人がいても、ルナはここにいる」


飾らない言葉だった。だからこそ強かった。


火が揺れる。追われる立場で、明日もどうなるか分からない。それでも今、こうして本音を言い合えているのは不思議だった。


答えはまだ出ない。けれど少なくとも、俺はもう一人じゃなかった。

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