第31話 逃亡ではなく撤退
ラドスを離れて三日。俺たちは街道を外れ、小村と森の縁をつなぐように進んでいた。目的地は自由都市アストラ。王国の兵が正面から動きにくく、人間も亜人も入り混じる中立地帯だ。
昼過ぎ、木陰で短い休憩を取る。ルナは周囲を警戒し、玲奈は水筒を確かめ、美咲さんは地図を広げた。
「今のところ、王国の本格的な追跡は来ていないわね」
「完全に諦めたわけじゃないだろうけどな」
「検問は増えてました」
玲奈が渋い顔で言う。
「村の入口にも王国の通達、貼ってありましたし」
俺の似顔絵つきの手配書だ。似ているようで微妙に似ていないのが救いだった。
ルナが焚火跡の石をつつきながら言う。
「これ、逃げてるだけじゃない」
「どういう意味だ?」
「下がってる。次に進むために」
その言葉に、少しだけ笑ってしまった。
「……撤退か」
「それ」
「言い方としては悪くないな」
敗走じゃない。立て直すための後退だ。そう考えるだけで、足取りが少し軽くなる気がした。
「だったら、アストラに着いたら終わりじゃないな」
俺は荷を背負い直す。
「そこからが本番だ」
「うん」
ルナが頷く。
「だから、ちゃんと撤退する」
王国に追われているのは事実だ。けれど、ただ追われるだけで終わるつもりはない。そう胸の内で言い聞かせながら、俺たちは再び歩き出した。
新連載始めました。
異世界の賢者が日本のおじさんに転生して色々無双する話です。
https://ncode.syosetu.com/n6915mb/
明るめの話になっているので興味のある方はお読みください




