表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第4章 再会、そして抹殺命令

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/100

第28話 剣聖との距離

大雅との戦いは、正面から見ると圧倒的に不利だった。

向こうは剣聖。王国の訓練を受け、純粋な剣技では今の俺より遥かに上。


対して俺は、借り物の断片を寄せ集めた継ぎ接ぎだ。

それでも、継ぎ接ぎだからこそ読めない動きになる。


「くそっ……!」


大雅の斬撃を倉庫の角で逸らし、そのまま路地へ滑り込む。

追う形で大雅が踏み込む。


その瞬間、俺は低くしゃがみ込んで石を蹴り上げた。


「っ!?」


視界を外させる。

姑息? 上等だ。勝てる土俵で戦うつもりなんて最初からない。

石が弾かれる音と同時に、俺は死角へ回る。


ルナから得た身体運用が、狭所での急な方向転換を助けてくれる。


「相沢っ!」

「うるさい!」


短剣を振るう。

浅い。だが狙いは当てることじゃない。剣の軌道を変えさせることだ。

大雅は反射的に受ける。


その手首に触れる。

また流れ込む。


剣聖の“型”が頭の中へ焼きつく。眩暈がするほど鮮明で、同時に重すぎる。

正面から同じことはできない。


でも一部分なら使える。

俺はすぐ距離を取り、大雅の次の踏み込みに合わせて同じ“入り”を真似た。完璧じゃない。だが軸の置き方だけは近い。


「……!?」

 大雅の顔色が変わる。

「今の……」


そりゃ驚くよな。

自分の技術の断片を、触れた直後の相手が使ってきたら。

だが驚いているのはこっちも同じだ。剣聖の基礎は、盗賊崩れや下級騎士の型とは比較にならないほど洗練されている。そこへ月牙闘士の踏み込みを合わせると、半端な俺でも一瞬だけ鋭さが増す。


これが俺の戦い方だ。


正面から最強じゃない。けれど、その場で拾って繋いで崩すことはできる。


「桐生殿!」

 後方の騎士が叫ぶ。

「長引いています!」


大雅が苛立ちを隠さず叫び返す。


「見りゃ分かる!」


その瞬間、玲奈の矢が飛んだ。

大雅ではなく、後方の魔術師へ。


「ぐっ!?」

「術者が!」

「玲奈! ナイス!」

「当然です!」


美咲さんの結界がさらにその動きを分断する。

ルナは騎士二人を相手にしながらも、一撃入れるたびに位置を変えていた。完全に連携戦だ。


大雅も気づいている。

自分と俺の勝負だけじゃ、全体は決まらない。


「相沢……!」

 彼が歯を食いしばる。

「なんでそこまでやるんだ! 大人しく戻れば――」

「戻って、また切られるために?」

「違う!」

「違わないだろ!」


言葉がぶつかる。

剣もぶつかる。


「お前は最初から使えないって捨てられた!」

 大雅が吐き捨てるように言う。

「でも今は違う! 今なら王国だって――」

「今さら都合よく扱い変えるだけだろうが!」


心の奥に沈めていた怒りが、そこで少し噴き出した。


「職業がないから追い出した。なのに強いかもしれないって分かったら回収する。そんなの、信用できるわけないだろ!」


大雅が一瞬だけ言葉を失う。

その隙に、俺は踏み込んだ。

剣聖の型を借りた一閃ではなく、盗賊崩れの荒っぽい体当たりに近い動き。読まれにくい方を選ぶ。


「っ!」


大雅は受け止めたが、完全には止めきれず半歩下がる。

十分だ。


「ルナ! 右抜ける!」

「うん!」


ルナが即応する。

美咲さんと玲奈も動く。


俺は大雅の剣を短剣で受け止めながら、低く告げた。


「俺は、お前らを殺したいわけじゃない」

「……」

「でも、もう従う気はない」


大雅の目が揺れた。

その一瞬で、討伐隊全体の呼吸が乱れる。

そこを逃さない。


「今だ!」

 俺たちは一気に包囲の薄い側へ走り抜けた。


後ろで騎士たちの怒号が上がる。

でも大雅は、すぐには追ってこなかった。

その足を止めたのが迷いなのか、怒りなのか、俺には分からない。


ただ一つ分かったのは、完全に噛ませ犬みたいに退けたわけじゃないということだ。

大雅はまだ、王国側の剣だ。


でも、その剣に初めてひびが入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ