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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第4章 再会、そして抹殺命令

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第27話 追放者狩り

ラドスの裏路地を駆け抜けながら、俺たちは町の外れを目指した。


だが今回は、宿場町の時より明らかに厳しい。王国騎士団が最初から複数方向に配置されている。索敵役までいるらしく、迂回しても気配を捕まえられる。


「右から来る! 三人!」

 玲奈が叫ぶ。


矢が飛ぶ。

ただし今回は、相手も盾と結界で対策していた。


「面倒だな……!」

「前も!」

 ルナが低く唸る。


包囲の質が違う。

これは完全に“狩り”だ。

町外れの倉庫街へ入ったところで、正面に一団が現れた。


騎士、宮廷魔術師風のローブ、そしてその先頭に立つ男。


桐生大雅。


青を基調とした王国式の戦装束。腰には見覚えのない立派な剣。

以前よりずっと堂々として見える。だが、その顔には完全な余裕はなかった。


「……やっぱりお前か」

 俺が言う。


大雅はほんの一瞬だけ言葉を詰まらせ、それから剣の柄に手を置いた。


「相沢」

「討伐隊の先頭とか、えらくなったな」

「茶化すな」


その声には苛立ちが混じっている。

後ろの騎士たちが武器を構える中、大雅だけは俺を真っ直ぐ見ていた。


「大人しく来い」

「嫌だって言ったら?」

「無理やり連れていく」

「前より分かりやすいな」

「状況が変わったんだよ!」


声が少し大きくなる。

それだけ、本人の中でも余裕がないのだろう。


「王国はお前を危険視してる。敵国と接触して、二人まで連れ出して、このまま放っておけるか!」

「連れ出した?」

 玲奈が怒鳴る。

「勝手に決めつけないでよ! 私たちは自分で――」

「玲奈、下がってろ!」

「嫌です!」


空気が一気に険悪になる。

大雅は苛立たしげに舌打ちし、剣を抜いた。


「相沢、お前が来れば済む話だ」

「信用できると思うか?」

「……」


一瞬、沈黙。

その間がすべてだった。

大雅自身、王国の“事情聴取”がどこまで信用できるか分かっている。だから言い切れない。


「ほらな」

 俺は短く言う。

「来る理由がない」


後ろの騎士の一人が前へ出る。


「桐生殿、時間をかけすぎです」

「黙ってろ」

「しかし――」

「俺がやる!」


ぴしゃりと切り捨てる。

騎士は不満げに下がった。

そのやり取りだけで、大雅の立場も完全には自由じゃないと分かる。


「最後に言う」

 大雅が構える。

「来い、相沢。それで全部済む」

「済まない」

 俺も短剣を抜いた。

「もう従う気はない」


その瞬間、空気が変わった。


大雅が踏み込む。

速い。


剣聖。


王国で持ち上げられるだけのことはある。正面からの圧が違う。


初撃を受ければ終わる。

だからまともに受けない。


半歩斜めに滑る。

それでも刃圧だけで腕が痺れた。


「っ……!」

「逃げるな!」


逃げる。正面からやれば負けるからだ。

ルナが横から入ろうとするが、後方の騎士二人が牽制に出てきた。


玲奈の矢と美咲さんの結界がそれを食い止める。


俺と大雅、一対一に近い形になる。

昔、会社の飲み会帰りにふざけて腕相撲したことがあった。


大雅は当時から運動神経が良くて、俺は勝てなかった。そんな記憶が、どうでもいいのに頭をよぎる。


「なんでお前が……!」

 大雅が振り下ろす。

「こんなに戦えるんだよ!」


「こっちが聞きたいくらいだ!」


踏み込み、体捌き、拾ってきた技術の断片。全部使ってもなお、大雅の剣は重い。

剣の才そのものが違う。


だけど。

正面から勝てないなら、崩せばいい。


俺はわざと大きく引いて、大雅に追わせる。倉庫の角、荷箱、石畳の段差。地形を使えば、剣聖でも踏み込みを制限できる。


さらに、すれ違いざまに腕へ触れる。

流れ込む。


剣。


正統で、無駄のない型。

圧倒的な完成度。


「ぐ……!」

「何だ、今の……!」


大雅も何かを感じたのか、眉をひそめた。

全部は無理だ。

剣聖の断片は重すぎる。だが一瞬だけでも“型”をなぞれれば十分。


次の打ち合い。

俺はさっきまでなら出せなかった角度で短剣を差し込み、大雅の刃筋をずらした。


「なっ!?」


一瞬、目が見開かれる。


今だ。


俺はそのまま足払い気味に踏み込み、体勢を崩しにいく。

勝つためじゃない。討伐隊全体の流れを止めるためだ。

大雅が後ろへ飛んで距離を取る。


表情には、初めてはっきりと動揺が浮かんでいた。


「お前……ほんとに、何なんだ」


その問いに、答えはまだない。

でも少なくとも、“無能”じゃないことだけは、ようやく目の前で分からせられた気がした。

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