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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第4章 再会、そして抹殺命令

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第26話 抹殺命令

ラドスへ戻ったのは翌日の昼だった。

ギルドへ入るなり、空気がおかしいと分かった。


ざわつきがある。視線が集まる。その質が、以前までの“無職を面白がる目”とは違う。


「来たか」

 カウンター奥からマリナさんが低く言う。

「奥へ」


促されて報告室へ入る。

中にはガレスもいた。顔がいつも以上に険しい。


「何があったんですか」

 俺が問うと、ガレスは机の上の紙束を顎で示した。


「王国から通達が回った」

「……」

「相沢恒一を、反逆と敵性国家接触の疑いありとして拘束対象に指定。抵抗した場合は、排除を許可する、だとよ」


一瞬、言葉の意味が遅れて入ってくる。


「排除って……」

 玲奈が青ざめる。

「殺してもいいってことじゃない……」


マリナさんが重く頷く。


「公式文書の言い回しを柔らかくしてるだけ。実質、指名手配に近いわ」

「早いな」

 俺は自嘲気味に笑った。

「手回しがいいことで」


でも驚きはしなかった。

宿場町での動き、神崎の目。あれを見れば、次に来るのがこれだと分からないほど甘くはなれない。


「しかも厄介なのは」

 マリナさんが続ける。

「あなたが“聖女候補二名を扇動し、敵性勢力と通じた危険人物”として触れ回られていること」

「は?」

 玲奈が声を裏返らせる。

「私たちが脅されてることにされてるの!?」


「王国にとってはその方が都合がいいのよ」

 美咲さんが低く言う。

「自発的に離反したと認めれば、自分たちの管理失敗になるもの」


なるほど。

俺一人を危険人物に仕立て上げれば、二人は“被害者”として回収しやすい。


「性格悪いな」

 ルナがぼそっと言う。

「ほんとに」

 俺も同意した。


ガレスは腕を組み、俺を見た。


「これで、お前はもうラドスにいても面倒の種だ」

「分かってます」

「だが、今すぐ追い出す気はねえ」


意外だった。

マリナさんも頷く。


「ギルドは国家の下請けじゃない。少なくとも、正式な引き渡し要請もないうちは庇護を切らない」

「ありがたいです」

「ただし無制限じゃないわ」


当然だ。


「討伐隊が来る可能性が高い」

 ガレスが言う。

「しかも次は宿場町みたいな様子見じゃねえ。本気で取りに来る」

「神崎先輩が動く?」

「十分ある」

 美咲さんが答える。

「彼は一度“危険”と判断したら、引かないタイプだから」


会社員時代を思い出す。

 不要と見なした案件、人員、やり方を、きっぱり切り捨てて前へ進む人だった。効率はいい。だが、その切られる側に回った時の冷たさは骨身に染みる。


「なら、ラドスも危ない」

 俺は言う。

「俺たちがここにいると町ごと巻き込む」

「そうね」

 マリナさんは頷いた。

「だから本当は、早めに移動してほしい」


玲奈が不安そうに俺を見る。


「どこへ」

「まだ決めてない。でも王国の影響が薄い場所だ」

「自由都市か」

 ガレスが言う。

「アストラ辺りなら、少なくとも王国の兵が好き勝手はしづらい」


自由都市アストラ。


 名前だけは聞いたことがある。人間も亜人も商人も入り混じる中立地帯だと。


「そこまでの道は」

「楽じゃねえ」

 ガレスは即答した。

「だが、ここで討伐隊に囲まれるよりはマシだ」


その時、ギルドの外で馬のいななきが聞こえた。

続いて、怒鳴り声。


「王国騎士団だ! 相沢恒一を引き渡せ!」


部屋の空気が一気に張り詰める。


「……来るの早すぎるだろ」

「言ったそばからね」

 マリナさんが舌打ちする。


ガレスが立ち上がった。


「裏口から出ろ」

「でも」

「ギルドが稼ぐ時間くらいは作る。ありがたく使え」


その声に迷いはなかった。

俺もすぐに立つ。


玲奈と美咲さん、ルナも続く。

部屋を出る直前、マリナさんが俺を呼び止めた。


「相沢」

「はい」

「生き延びなさい。王国の言い分だけが正しいって、証明させないために」


その言葉に、俺は短く頷いた。


「はい」


ギルドの裏口から飛び出す。

外気が熱い。


王国は、もう迷っていない。

ならこっちも、迷っている暇はなかった。

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