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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第4章 再会、そして抹殺命令

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第22話 許せない、でも

「裏から出る」

 俺は即座に言った。


だが美咲さんが首を振る。


「待って。まだ決めつけるには早い」

「見張りが増えたってルナが言ってる」

「それでも、こちらから不自然に動けば逆に確定される」


その冷静さはさすがだった。


 けれど俺も引けない。


「じゃあどうする」

「少しだけ自然に時間を稼ぐ。会話を続けながら様子を見る」


確かに、それも一理ある。

玲奈は落ち着かない様子で窓の外を気にしていたが、なんとか頷いた。

ルナは不満げに耳を動かしつつも、俺の判断を待っている。


「……分かりました」

 俺は小さく息を吐く。

「でも怪しかったらすぐ動く」

「ええ」


ひとまず座り直す。

だがもう、さっきまでの気まずい再会の空気ではない。全員が外を意識していた。


「続きを聞かせてください」

 俺は声を落として言う。

「王国は、具体的に俺をどうするつもりなんですか」

「正確には分からない」

 美咲さんが答える。

「でも少なくとも、“もう一度保護する”なんて綺麗な話じゃない。危険性を調べる、力の有無を確認する、場合によっては利用する……そんな感じだった」

「利用」

「うん」

 玲奈が苦い顔で言う。

「無職だと思って捨てたくせに、国境で先輩が動いてるって分かったら、今度は気になりだしたんですよ」


手のひら返しもいいところだ。


「宰相か?」

「たぶん、それだけじゃない」

 美咲さんが言う。

「神崎さんがかなり強く進言してると思う」


やっぱりそうか。


「彼、昔からそうだったものね」

「……会社でも?」

 俺が思わず聞くと、美咲さんは少し苦く笑った。


「ええ。正しい判断をする人ではあった。でも、“切るべきものは切る”ことに迷いがない人でもあった」

「すごくしっくり来ます」


玲奈が小さく頷く。


「神崎先輩って、たぶん悪人じゃないんですよ」

「でも、優しくもない」

「そう、それです」


言葉にすると、妙に腑に落ちた。

神崎はきっと、自分なりの合理で動いている。

だからこそ厄介だ。悪意だけならまだ分かりやすい。


「先輩」

 玲奈がまっすぐこちらを見る。

「王国は本当に危ないです。だから、今日ここに来たことも、すぐ忘れてくださいって言いたいくらいです」

「じゃあ何で呼んだ」

「それは……」


言葉に詰まる。

だが次に口を開いたのは美咲さんだった。


「会いたかったから」

「……」

「ごめんなさい。これは完全に私情。でも、それだけじゃない。あなたが王国の中でどう扱われたのか、ちゃんと知った上で、私たちがどこに立つのか決めたかった」


その視線は真っ直ぐだった。


強い人だ。

昔からそう思っていた。普段は穏やかなのに、腹を決めた時だけ妙に芯がある。


「決まったんですか」

「まだ全部じゃない。でも、少なくとも王国の言いなりにはならない」


玲奈も頷く。


「私もです」


そこまで聞いて、ようやく少しだけ胸の奥の固さが緩んだ。


 許したわけじゃない。信じ切ったわけでもない。けれど、完全に向こう側へ行ったわけでもないと分かっただけでも大きい。


「……でも俺、まだ怒ってますよ」

 改めて言う。

「正直、二人を見たら安心するより先に、あの日のことを思い出した」

「当然よ」

「玲奈、お前が泣いてても、じゃあ何であの時ってなる」

「……はい」


玲奈は俯いた。


でも否定しない。


「美咲さんにも同じです。謝られても、すぐ元通りなんて無理だ」

「分かってる」


静かな返事だった。

少しだけ沈黙が落ちる。

店の中では別の客たちが普通に話しているのに、この席だけ重い。


その空気を破ったのはルナだった。


「コーイチ、怒ってる。でもここ来た」

「そうだな」

「だから、ちょっとは会いたかった」

「……」

「ちがう?」


真顔で言われると弱い。


「……否定はしない」

 そう答えると、玲奈がほんの少しだけ顔を上げた。

「先輩」

「でも、それとこれとは別だからな」

「はい……」


その時、店の外で金属の擦れるような音がした。

誰かが武装して動いた音だ。


ルナの目が鋭くなる。


「増えた」

「やっぱり」

 俺は低く言う。


美咲さんも外へ目を向け、唇を噛んだ。


「追跡じゃなく、包囲ね」

「最初からか?」

「……その可能性が高い」


玲奈の顔色が一気に悪くなる。


「じゃあ、私たちを利用して先輩を……」

「あり得る」

 俺は立ち上がった。

「やっぱり、ここまでだ」


美咲さんもすぐ立つ。


「裏口へ。店主には私が話をつける」

「そんな余裕あるのか」

「あるように見せるしかないでしょう」


言いながらも、その表情には焦りがあった。

やはり王国は俺を“話し合い”で済ませる気はなかったらしい。


しかも美咲さんたちとの再会そのものが、餌だった可能性もある。

怒りより先に、妙に冷めた気持ちが湧いた。


――ああ、やっぱりこう来るか。


でも今は感傷に浸っている場合じゃない。


動かなければ捕まる。

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