表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第3章 王国に残された同僚たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/100

第16話 仕組まれた魔物暴走

 村の東側は、見た目にはただの荒れ地だった。


 低い草が広がり、その先に小さな林がある。夜になれば視界が悪くなり、魔物が潜むにはちょうどいい地形だろう。


 だが、歩き回ってみると妙な点がいくつも見つかった。


「足跡、多い」

 ルナがしゃがみ込む。

「魔物だけじゃない。人も」

「分かるのか?」

「うん。重い靴」


 俺も地面を見る。

 慣れていない目でも、土の沈み方が不自然なのは分かった。しかも村へ向かうというより、林の奥と行き来しているような跡だ。


 さらに少し進むと、焦げ跡を見つけた。

 焚火の跡。それも最近のものだ。


「こんな場所で野営?」

「狩人じゃない」

「だろうな……」


 村人が使うにしては位置が悪すぎる。

 魔物の出没地のすぐそばで、わざわざ火を起こす意味がない。


 俺は周囲を警戒しながら林へ入った。

 ガレス由来の気配察知に、ルナの感覚を合わせる。以前よりも少しだけ、世界の輪郭が細かく見える気がした。


 そして見つけた。


 木の根元に落ちていた、獣の肉片。

 ただの残飯じゃない。血抜きも不十分で、意図的に撒いたように散らばっている。


「餌、だな」

「魔物寄せるための?」

「たぶん」


 つまり、誰かがこの辺に意図的に魔物を集めている。


 村を襲わせるために。


 背筋が冷えた。


「コーイチ」

 ルナが低く呼ぶ。

「向こう、またある」


 少し離れた場所には、今度は鎖の切れ端と、檻の一部らしき金具が落ちていた。

 運んできた魔物をここで解放したのかもしれない。


「自然発生じゃないな」

「うん」


 俺たちは顔を見合わせる。


 ただの調査依頼のはずだった。

 でもこれは、明らかに人為的だ。


 その時、遠くで低い唸り声が聞こえた。


「来る」

「数は?」

「二匹……いや、三匹」


 林の奥から現れたのは、牙犬に似た魔物が二匹と、もう一匹は少し大きい狼型だった。毛並みが黒く、目が妙に濁っている。


「村の近くで出るには変だな……」

「飢えてる」


 確かに、動きが荒い。自然な縄張り争いというより、無理やり追い立てられてきた獣みたいだった。


「やるぞ」

「うん」


 二匹の牙犬はもう慣れた。

 問題は奥の狼型だ。


 先に仕掛けてきた牙犬をかわし、横からルナが蹴り飛ばす。もう一匹は俺が短槍で牽制。前より足運びが安定しているのを自分でも感じた。


 だが狼型は違った。

 距離を測っている。牙犬より賢い。


「ルナ! そっちは任せる!」

「こっちも来る!」


 狼型が俺を狙って跳ぶ。


 速い。

 だが、触れられれば。


 半歩遅れて避け、前足が腕を掠める。痛みと同時に、毛皮越しの接触。


 瞬間、流れ込む。


 獣の身体運用。

 四肢の連動。

 狩るための本能じみた間合い。


「――っ!」


 人の職業だけじゃない。

 魔物からも何かを“写せる”のか。


 混乱しながらも、得たばかりの感覚で横へ回る。狼型の着地が少しだけ読めた。そこへ短槍を叩き込む。


「ギャゥッ!」


 怯んだところへ、ルナが牙犬を片付けて駆け寄ってくる。

 二人で挟めば終わる。


「今!」

「うん!」


 ルナの踏み込み。俺の牽制。狼型がルナへ意識を向けた一瞬、首筋へ槍を滑り込ませた。


 悲鳴。沈黙。


 戦闘が終わる。


 息を整えながら、俺は自分の腕を押さえた。浅い傷だが、じくじくする。


「だいじょうぶ?」

「なんとか。でも今、変なのが来た」

「また?」

「ああ。魔物からも、身体の感覚みたいなのを拾えた」


 ルナが目を丸くする。


「ほんとに何でもあり」

「俺もそう思う」


 村へ戻ると、村人たちは魔物討伐に安堵したが、それ以上に俺たちの報告で顔を青くした。


「誰かが、わざと魔物を……?」

 村長が震える声で言う。

「断定はまだできません。でも可能性は高いです」

「なんのために」

「分かりません」


 本当は、少し予想があった。

 国境を荒らし、村を不安定にし、周辺情勢を悪化させる。戦争や挑発の種としては、あり得なくない。


 だが証拠が足りない。


「明日、もう少し奥を見ます」

 俺が言うと、村長は深く頭を下げた。

「頼みます……」


 その夜、村の納屋を借りて休ませてもらう。

 ルナは干し草の上に座ったまま、静かに呟いた。


「コーイチ」

「ん?」

「これ、ただの魔物退治じゃない」

「ああ」

「人のにおい、悪い」


 俺も同じ気持ちだった。


 魔物が襲う方が、まだ分かりやすい。

 人が意図して仕掛けているなら、その方がずっと厄介だ。


 枕代わりの袋に頭を乗せ、天井を見上げる。


 王国に追い出され、ラドスで冒険者になって、何とか生きているだけのはずだった。

 それなのに、こんなにも早く国家とか陰謀とか、そういう匂いのする場所へ足を踏み入れてしまっている。


「……面倒なことになったな」

「うん」


 ルナは短く頷いた。


 そして次の日、その予感はさらに確信へ変わることになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ