其ノ弐 一、千年桜と学生
裏庭に、大きな櫻の樹が一本植わっていた。
その樹は何代も其処に在り、家の人々を見守り、又、見守られてきた。
家の表は垣根が覆って、その櫻の樹を隠す様になっていた。
垣根はコンクリートと木々で出来ていた。
「千年桜はーー俺です。」
「櫻! 」
「言って良いの? 」
「大丈夫なのか? 記憶もーー……。」
「ーー大丈夫なんだね? 櫻。」
「この界隈じゃ有名だし。」
「……。」
「なぁんだ! 有名なんじゃん! 」
「心配しなくて良かったんだな。まぁ、それでも心配はする……。」
「確かに、心配はおれもするし……。」
「有名でーー隠してない事なら大丈夫なのかな……。心配は必要無い? 」
「……。」
「それ、狡くないか? 」
「櫻は心配して欲しいに決まってる! ーーだろ? 」
「二人の言う通りーー心配はして欲しいけど、大丈夫、今回は」
「櫻、今回も、だよ。何度目だと思う? オレたちが出会ってからーーもう何度も、こんな事があって……。」
「ごめん……。」
「ーー櫻はそれが狡い……。良い所でもあるけど、さ。」
俺は現代ではない、ーー昔の千年桜だ。今の世代の千年桜の先輩と言えるか……。
力は衰え、時空を越えるなんて、殆ど使えなくなっているらしい。いわゆる能力よりも妖力が底を尽きている感じだと言われた。
そういえばーー……。
「百目に呪われると身体中に目が浮かび上がるんだけど、それが無いからーー呪ってない? 」
「実は呪おうとしたんだけどさ……。」
少しだけ申し訳無さそうに百々目木が言った。
「櫻には効かないんだよねーー弾かれてるのか、そもそも呪いの効果が出ないのか……。そんな感じで。」
「ーー効かないって感じじゃない? 」
「俺もそう感じる……。」
学生たちが百々目木の言葉に続けた。
ーー俺たちの出逢いは百々目木と俺が出逢うところから始まった……。
2026.1.24




