其ノ壱 一、百目の呪い
「キャアアアアアッーーーー!! 」
またやってしまった……。
見られてしまったーー百目の鬼、百目鬼に呪われているこの姿を……。
『いい? この包帯は、外さない事。もし外してしまったり、外れてしまったらーーあぁっ! 待って! 待ちなさいっーー! 貴方が大変になるの。だから、』
ーーそう、学校に行く前に母に散々言われ、念を押されていた。
「周りも大変でした。ーー大っ変でしたよ!! 言ってくれていればーー行っておいてください、症状の事は! 」
担任の先生に連れられて帰って来たオレの背中に先生の声が響いた。その言葉は母に向けられていて、けれど母に激怒している感情は見受けられなかった。 オレは気にせずに自分の部屋に籠もった。
布団に入ってまで籠もるつもりは無かったーー、だけど、百目鬼が『布団に入ったら良い』と唆して来て、何時もはその通りにしないのに、今日だけはそうした……。オレだって、楽しみにしていたんだ……。
今日は長く休んでしまっていたーー休学していた学校にやっと復学出来た日だった。
オレを千年桜として、百目鬼に呪わせたーーあの婆さんがそんな事をしてきた日から、オレは学校に行っていなかった。
どんな呪いを受けたのか、それは周りを巻き込んだり、伝染したりするものなのか、危険はどの様な範囲なのかーー等、母さん達が調べていたからだ。散々調べられて、ずっと家に居させられて、見張られて、オレはうんざりだった。
“伝染させたければ出来るぞ? するか? 殺るか? ”
一度、切れてしまったオレに百目鬼が問い掛けてきた。ーーそれ以来、百目鬼は度々、オレを唆す様に話してくる……。
オレは更にオレを呪って貰う事で、百目鬼が周りに伝染するのを防いだ。
母さんはここらでは有名な呪い師でもあった。『魔女って呼ばれる事もあったわねぇ〜! 』なんて言っている事もある。決まって、強そうな顔をするから、オレはそういう話をする時の母さんは苦手だ。
「ど〜〜〜うして、外してしまったの? って、あら? お布団にーーお布団お化け? そう、お布団お化けになってるのね? ーー私の子はお布団お化けではないから、見逃してあげる……。」
母さんは外から部屋の扉をそっと閉めた。
“ーーーーーー母親は見逃したぞ? どうだ? 作戦は成功したんだ。ーー顔を上げてみろ。”
「作戦ーー? 」
もぞもぞと布団から顔を出した。二回も言う事を聞くのは癪なので上げはしなかった。
“怒られない為の作戦だーー怒られなかっただろう? 俺の御蔭だ。”
百目鬼が得意気に言った。それで初めて、子供っぽい奴なのかもしれないと思った。ゆっくり身体を起こしたーー布団には包まったまま……。
包帯の巻いていない腕がーー身体中が熱かった。こいつが表に出て来ているといつもそうだ。
百目鬼の目ーー百目の呪いの目だ。その目は身体中に浮かび上がり、熱を持ち、呪いを振りまいていた。
これでも、収まった方だ……。
最初の頃はオレが呪いの真っ黒に見えないくらいだった。その真っ黒はオーラみたいに身体から漏れているくらいになっていた。
ギョロギョロしたリアルな瞳が見詰めて来たらオレでも怖いーーけれど、オレには呪いの目が、目の形の紋様にしか見えない。実は人間とかの方が感覚が鋭くて、ギョロギョロしたリアルなーー本物の目、瞳に見えるらしく、オレにも最初はそう見えていた。
それは兄達が百目鬼を呪ってから見えなくなった。代わりに紋様に見える。
『まだ俺たちじゃ、お前分くらいで限度。ーー今後、頑張って周りにも見えない様に……。』
『兄貴にそうさせる前に、お前が何とかしろ。な? 』
兄達は呪いの力が弱っていると言われていた。兄達も呪いを受けたのだ。あの婆さんに。ーーつまり、オレ達兄弟は、全員呪われている。
『厄介。』と、長男の方の兄が言っていた。次男は払う力や加護が強く『そうか? 』ときょとんとした。
2026.1.17




