授業
隣同士でペアを組むとのことで、本来ならアレン様はわたしと反対側の隣の席のジーク様と組めば良いもののわたしと組むことになった。
実験初授業では自身の得意とする魔法と、ペアの得意とする魔法を合わせて的当てをすると言うレクリエーションのような授業であった。
それぞれペアに分かれてお互いの魔力について話し合いがされていた。
「アレン様の得意な魔法は何ですか?」
「そうだね…わりと全体的に使えるようにしているんだけど、最近は氷かな。」
入学前から複数使いこなしているなんて…さすがだわ。
「そうなのですね!水の応用魔法が得意だなんてすごいですね!ちなみにわたしは…」
「風だよね!」
わたしが言う前にアレン様がそう言う。
なぜ知ってるんだろう?カイトから聞いたのかしら?
「そ、そうです!」
「女の子で風を得意としてるのってかっこいいよね。」
「そうですか?」
「あまり貴族令嬢で魔力を使う人いないから、基本の火とか、聖女様をマネて治癒が少しできるとかそういう人が多い印象あるからさ。」
「へぇ、そうなんですね!」
し、知らなかった…そうか、だからこそ授業で学んで基礎だけでも使えるようにするのか。
そんなで納得しながら2人で的に当てるのは、とても簡単なことであった。
「リアンには簡単すぎちゃったかな?」
と笑いながら話しかけてくれるアレン様。
その時、
「きゃーーーーーーーーー!!!!!!」
声のする方は振り向くと、火が辺り一面に広がっていた。
魔法を発動したとされるペアは火の渦の中で身動きが取れずにいた。
恐らく土魔法と火魔法のバランス崩れによる状況。
助けなきゃ!
「アレン様!地面全体に水を、放出していただけないでしょうか?」
切羽詰まった表情でわたしは彼に伝えると
「仰せのままに」
柔らかな笑顔でわたしにそう言った後、表情を変えて全体に雨を降らせた。
わたしはその水を風で操り、人には触れさせないよう火だけ消した。
「アレン様…!」
彼に向かって走ってきたのは、先ほど魔力が暴走していたアレン様の護衛のユリシスであった。
「申し訳ございません、俺の…せいで…」
悔しそうにそう話す彼に対して
「問題ない。僕はリアン嬢をサポートしたまでだ。」
そう言いながらわたしの方に目線を向ける。
「あ、あの、、、」
可愛らしい声でわたしに声をかけてきた令嬢がいた。
先ほどの土魔法の彼女だった。
「さきほどは助けていただきありがとうございました。わたしの魔力が低いためにこんな…」
涙目になりながら自分を責めているようだった。
「けがはないですか?ロゼリア様。」
わたしがそう言うと驚いた表情をしていた。
「どうして、わたしの名前を…」
「午前の時間全員挨拶があった際に覚えました。わたしはリアン・シャノワールと申します。」
「リアン様…!どうかわたしのことはロゼリアと。」
「では、わたしのことはリアンと呼んでください。わたし、土魔法だいすきなの。もしよろしければ濡れてしまった地面を一緒に乾かしませんか?」
「はい!」
わたしは、ロゼリアの土魔法の力に合わせて地面全体に温風を与えた。
午前前半の授業を終えたところで、ロゼリアという可愛らしい令嬢と仲良くなれたのが嬉しかった。
後半の美術の時間は、前半と同じペアのままお互いを描き合うものだった。
そのため相手はもちろん
「リアン、よろしくね。」
微笑みながらアレン様がわたしを呼んだ。
美術は正直苦手だ。
昔から、こんな魔道具あったらいいな、と思うものを紙に書いて兄に渡しても理解されることは一度もなかったし、動物を描いても虫だと思われるほど画力センスが乏しい。
そのわたしが、王子様を描いてもよろしいのでしょうか…。
変な汗をかきながらアレン様と向き合いながら筆を動かす。
改めて見ても美しいお顔である。
輝くような金色の髪の毛。風が吹くとサラッとなびいている。触ったら柔らかいんだろうな…
ってなにを想像してるのわたしったら!
慌てて描いている紙で顔を隠す。
「リアン、隠してたら書けないよ?」
アレン様にそう言われて紙を元の位置に戻す。
ふとアレン様の目があってしまった。
見つめられるだけで胸が高鳴ってしまう。自分でもおかしいと思いながら、透き通るようなアクアマリンの水色の瞳から目線が逃れられずにいた。
アレン様は優しい表情をしていたが、だんだん男らしい表情に変わっていく。そして口元をみてみると
「リアン」
そう読めた。
途端にまた恥ずかしくなって顔が赤くなるのがわかる。
落ち着いて、わたし。
吸い込まれそうな瞳、すっとした鼻筋、柔らかそうな唇、男らしい首筋……
こんなにも男性と向かい合うことがなかったから初めての体験でドキドキしているのだわ。
そう思っていた時に
「リアン?さっきからどうしたの?」
そう尋ねられ思わず
「こ、こんな初体験にドキドキしてしまいました!」
と言った後で後悔しながらそう口にしていたのだった。
「初体験?よくわからないけどリアンの初めてを僕がもらえて嬉しい、ありがとう。」
と微笑みながらアレン様は答えてくれたのであった。
時間になり終えるとカイトがわたしの絵を見て爆笑している。
「ねぇ、恥ずかしいから見ないでよ、、」
絵を隠そうとすると、アレン様に奪われ
「リアンが描いた絵…嬉しい…部屋に額縁に入れて大切に飾るね」
と、笑顔で言われたが返して欲しいと切に願ったのであった。




