再会
時は流れ、16歳になったわたしは、貴族の通う学園に入学した。
辺境地から通えるわけもなく、さらに高い学費なんて払えるわけもないからと学校へ行くのを諦めていたが、魔術協会に所属した兄からの援助と、入学前試験で首位になったことから、学園から学園にかかる費用を免除してもらえ、こうして通うことになったのである。
学校に入ると、令嬢たちの目線を一気に集めている集団を見つけた。
そこには知っている顔があった。
「カイトがいる…」
注目されている4人の男子学生の中には、討伐仲間のカイトがいた。
出会った当初に比べ、身長が一気に高くなりいつのまにか私を越していたし、体格も前会った時より大きくなっている…
確かカイトは騎士団長のお父様の指示で王子の護衛も兼任して学園にいるんだっけ?
てことはあの中の誰かが…そう考えていた時に集団の中の1人の男子学生と目が合った気がした。
相手は少し驚いた表情をしたが、すぐにまた元の表情に戻った。
金髪でアクアマリンのような水色の瞳…
「きれいな顔だなー」
そう思いながら教室に足を踏み入れると、先ほど同様にひときわ令嬢たちに注目されている集団がいた。
同じクラスなのか…。
そう思っていた矢先、わたしの席は――よりによって彼の隣だった。
後ろの席がカイトだったので思わず声をかける。
「ねぇ、カイト!あなたたちすごい注目されていたわよ。」
小さな声で話そうとカイトと近距離で話していると水色の瞳がこちらを見つめていた。
「そりゃ、王子がいたらみんな注目するだろ。」
呆れながらカイトは言う。
「もしかして、王子というのはその…」
続きを言う前に彼の方へ目線を向けると、
「カイト、ずいぶんそちらのご令嬢と親しいんだね。」
笑っているようで笑ってないような彼がそうカイトに話しかけた。
「アレン様、こちらはリアン・シャノワール男爵令嬢でして、昔からの馴染みみたいな者です。」
そうカイトが私を紹介してくれた。
「シャノワール嬢、ぜひ僕とも仲良くしてくれると嬉しい。」
優しくそう彼は私に言った。
「殿下、お初にお目にかかります。リアン・シャノワールと申します。こちらこそどうぞよろしく…」
最後まで告げようとした途端、片手を取られ手の甲に口付けをされたのだ。
思わず目を見開き固まる私。
教室中に響く他の令嬢の悲鳴。
「ごめん、身体が勝手に動いてしまって。殿下じゃなく、アレンと呼んでほしいな。僕もリアンと呼んで良いかな?」
周りなど眼中にないかのように会話を進めるアレン様。
対して、驚きと恥ずかしさといろんな感情がある中でがんばって口から出たわたしの回答
「え、あ、は、はい……。」
なぜかカイトからは睨まれながら、こうして学園が始まったのであった。
カイトから教えてもらったのは、
アレン様の反対隣にいる緑の髪色がジーク・オルグレン。
アレン様の前の茶髪がユリシス・ガレン。
どちらもアレン様の護衛、とのこと。
彼らとは関わらなくて問題ない、と言われたので言葉のまま受け取らせてもらおうと思った。
なにせ学園に来るまで辺境地で討伐に参加し、街の民たちと過ごしていたのだ。貴族のお茶会にも参加していないわたしには貴族の交流関係が全く分からないのだ。
また、先に学園に通っていた兄からもそこまで関わらなくて良いと伝言ももらっていた。
わたしと同じ淡いピンクの髪色で透き通った白い肌をしている兄は、学生時代、貴族令嬢たちに、それはそれは可愛がられたようで、より一層女性への苦手意識が高まっているように感じた。
午前の授業を終え、休憩時間になるとアレン様の周りにはあっという間に人だかりができる。わたしは、逃げるように人が少ない方へ向かった。
ここは…図書館かしら?とても静かで心地よかった。
昔から本は好きだった。本の独特の匂いや、ページをめくる音。知らない世界に連れて行ってくれるような気がした。
ここはとても眠くなる。慣れない寮の部屋に、新しい生活に緊張して昨日はなかなか眠れなかったもの。瞼がどんどん重くなり気がついたら――つい、眠ってしまった。
「ん…」
目を覚ますと、なぜかわたしはアレン様に寄りかかっていた。
え、どゆこと?!
慌てて距離を取ろうとすると肩を抱かれてまた元の位置に戻される。
「起きたの?お姫様。」
優しく微笑みかけるアレン様の瞳は、吸い込まれるように目を離してくれない。
「あの、どうしてアレン様が…」
ここにいらっしゃるのでしょうか?
「僕もこういう静かなところが好きなんだ。隙を見て逃げた先に君がいた。午後の授業が始まるね、戻ろうか。」
ゆっくりと立ち上がり、彼と一緒に教室へと戻った。
午後は魔力実験と美術だった。




