出会い
エルディア王国の貧乏男爵家に生まれたわたし――リアンは、風魔法を得意とする令嬢だ。もっとも「令嬢」と呼べるほど優雅な生活とは程遠く、10歳の頃から家計を支えるために討伐会に参加していた。
とはいえ、自分のことは可哀想だなんて思ってない。
わたしの両親は優しい。本来ならもう少し優雅な生活を送ってもおかしくないのに、領民ファーストだからこそ自分たちの生活を切り詰めてまで領民たちに優しいのだ。
おかげで、お金はなくても物資や人脈ばかりが増えていく。そのため経営が悪いわけでもない。魔法薬や魔道具の原料が多く揃う我が領土は辺境地ながら国には必要不可欠であり、そんな生まれ育った街を私はとっても誇りに思っている。
部屋で出かける準備を整えていたところ、扉がノックされた。
「リアン、カイトが迎えに来ているよ。今日も討伐?無理するなよ。」
「ゼノン兄!え、もう来てるの!?ありがとう、ゼノン兄も研究没頭しすぎて倒れないでね。」
5つ年の離れた兄ゼノンは、病弱な体質。部屋にいる時間が多かった彼は、小さい時から魔法薬や魔道具の研究に熱心で、魔法学校に入る前から魔術協会からも期待されている。
魔物を剣術で戦えるほどの体力がないからこそ、彼らしい形でこの家を守ろうとしているのだろう。
ゼノンと挨拶を交わした後玄関に向かうと、幼馴染のカイトが既に待っていた。
「おはよう、カイト!今日もがんばろうね!」
笑顔で私は彼にそう告げると、
「がんばろうね!じゃねぇよ…大体令嬢が討伐に参加するなんてどうかしてるぜ…」
呆れた様子でカイトは話す。
カイトはわたしと同じ10歳。
騎士団長の息子である彼は、父に指示され討伐に参加している。
わたしの母の兄、つまりおじさんが騎士団隊員であり、カイトの父と仲が良い。
初めはおじさんから好奇心もあり剣術を学んでいた。カイトが討伐に行くのを知ってから、姪のわたしに声をかけ今に至る。
子供が大人のギルドに加わるのも異例で、令嬢が討伐するのも異例であることから最初はすごく腫れ物のように見られていたが、少しずつ力を上げ、今では大人顔負けに成果を出している。
いつものように受付を済ませ、担当の場所へと案内される。
「今日こそは、お前に負けねえ!」
謎に対抗心を燃やしてくるカイトを無視して会場へと足を進める。
さて、今日も稼ぎますか。
――多くの魔物を倒し終え、周辺を確認しながら受付の方へ戻る中、風の便りで苦しんでいる人の声が聞こえた。
声がする方は近づくと、瓦礫の下敷きになっていた。
「え、だ、大丈夫ですか?!」
うずくまっていて顔はよく見えないが、足が抜け出せなくなっていた。
苦しそうにしている声から痛いのが読み取れる。
急いで風魔法を使って瓦礫を取り除いた。
ゆっくりと身体を動かして立ちあがろうとしていたが、ふらついたので風魔法で転ばないよう持ち上げた。
そこには、わたしと同い年くらいの男の子が立っていた。
アクアマリンのような淡い水色の瞳がこちらを見ていた。
あまりに綺麗な容姿に思わず声が出なかったが、顔や服が土や埃まみれなのに気がつき、慌てて風を使って綺麗にした。
「あ、えと、足、痛いですよね!わたし、治癒魔法使えないので、代わりに!風を使って受付のところまで送り届けますね!」
「助けてくれてありがとう、きみ、すごいね。」
彼を私の背中に乗せて戻る最中に耳元でそう言われる。金髪の柔らかい彼の髪が少しくすぐったかった。
受付に戻り、状況を伝えると受付の人は真っ青になりながら多くの大人たちが集まってきたのでわたしはその場を立ち去り、カイトやおじさんたちのいるところへ向かった。
「きれいな顔してたなあ……」
家に帰る途中、カイトが隣でわたしに負けたことが悔しくて何か言っていたようだったけど、先ほど助けた男の子の心配で何も頭に入ってこなかった。
整いすぎた顔立ちのその子が、まさか王子様だったなんて――そのときのわたしは、知る由もなかった。




