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二人目の刺客

「あああぁぁ〜……、疲れた……」




 純葉の家から帰った後、俺はベッドの上で横になって、途轍もない疲労が込み上げてくる。


 なんというか、掃除で全部体力が持ってかれた感じ。


 すぐにでも眠ってしまいたいが、なんか隣の家から和一さんの悲鳴が聞こえてきて、気になって眠れない……。


 どうしようか悩んでいると、急に「ピンポーン」と軽快なインターホンのチャイムが家に響き渡る。


 おっと、嫌な予感がするぞ……?


 我が家は2階建ての一軒家。そして俺はただ今絶賛一人暮らし中。この時間帯に宅急便が来るとは思えないし、一体誰なんだ?


 俺は足音を立てないように恐る恐る一階へと降り、インターホンの画面を確認する。そして、そこには誰も居らず──。




『うわああああ!』


「うおっ!ビックリした……!」




 急に画面外から飛び出してきた女性は、ニマニマと見透かすような笑みをこちらに向けて手をヒラヒラ振っている。




『やっほー、霰ちゃん!様子を見に来たよ〜!』


「前回は昨日だろ……。毎日チェックするのは勘弁してくれ……」




 彼女の名前は高森綾乃さん。年齢は22歳で、身寄りの無い俺を引き取ってくれた、俺の母親の妹の娘。簡単に言ってしまえば従姉弟だな。


 俺はため息を吐いて、玄関の方へと向かっていって、そのまま扉を開ける。




「おっ!サンキュー!」


「全く……。そんな易々と男の家に上がらないでくれよ……」




 こんな警戒心ゼロなヤツだが、これでもかなりの美人さんだ。艶のかかった黒髪に、透き通るように青みがかった黒色の瞳。小柄ながらも目を惹くプロポーション。触れてしまえば溶けてしまいそうな白い肌。流石はモデルをしているだけあるな……。見た目に関しては本当に何もいうことが無い。




「えぇ~?なになに〜?もしかしてぇ、私に欲情しちゃうの〜?変態だね〜?」




 ……性格は形容し難いほどに悪いが。


 昔っから狡賢いからな、綾乃は。




「で、綾乃。何の用だ、こんな時間に」


「ん〜?用が無ければ来ちゃダメなのぉ〜?」


「そういう訳では無いが、こんな時間に俺の家に訪ねてくるのは、何かあると思っちゃうだろ?」


「あ〜。まぁ、それもそっかぁ〜」




 綾乃はクスクス笑い、玄関から辺りを見渡す。


 すると綾乃は「あれぇ〜?」と、相変わらずうっとりとした話し方で首を傾げる。




「昨日までゴミ屋敷だったよねぇ?なんで片付いてるのぉ?」


「え?あぁ〜、えっと……そう!たまたま家を片付けたい気分だったからな!」


「えぇ~?それ怪しいなぁ?」


「な、なんで?」




 そう尋ねると、綾乃は笑顔で俺の瞳をジッと見つめ、何かを見据えるように言い放った。




「だって、霰ちゃんは私がいないとダメなんだからね〜」


「ま、まぁ。それは否定しない」


「そうでしょ〜?普段掃除どころか家事全般をやらない霰ちゃんが、掃除するなんて、とても信じられないよ〜」


「お、仰る通りです……」




 くそ!何にも言い返せない!事実だからこそ余計に悔しい!


 ……いや、まあ自分が悪いんだけど。




「まあ、いっか。今日は帰ろ〜」


「えっ?帰るのか?」




 急にクルッと向き直り、そのまま帰路につこうとする綾乃にそう聞くと、「ん〜?うん〜」とのんびりした口調で答えられる。




「私の出番は無さそうだし、明日また来た方が良いかもなって」


「頼むから明日は来ないでくれ……。毎日は俺のプレッシャーがエグい……」


「え〜?」




 困り顔でありながらも、綾乃はそのまま、自身の家へと向かい出し──。




「あ、そうそう〜。霰ちゃんがダラシない生活をしてたら、私か、お母さんが飛んでくるからね〜」


「怖いことを言い残すなよ……」




 割とマジでそうなりそうだし、見られてなくてもバレてしまいそうなのがホントに怖い。何なのコイツ!


 綾乃はニマニマと俺の反応を楽しむように笑った後、そのまま家へと帰っていったのだった。


 今日だけで二人の女性が家に来るとは……。疲れるな……。

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