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後輩は可愛いハズ

「マジで眠い……」


「なんだよ……。徹夜でゲームでもしてたのか?」




 教室にて翔は菓子パンを口に咥えながらそう問い掛け、俺はそれに対し首を横に振る。




「いや、昨日の夜に綾乃が来てな。それで寝るのが遅くなった」


「怖っ。幽霊かよ」




 ケラケラと笑っているが、笑い事じゃない。深夜に自分の家に身内とはいえ、他人が押し掛けてくるんだぞ。恐怖で眠れなくもなるわ。


 流石にそろそろ注意したほうが良いだろうと思いながら、純葉が作ってくれた弁当箱を開ける。その中には、栄養バランスがしっかりとしたものや、俺の好きなものまでギッシリと入っていた。


 どこからか「ちゃんと食べないとダメだよ!」とプンスカ怒っている純葉の声が聞こえてきたような気がする……。




「お、今日の弁当も美味しそうだな。ちょっとくれよ」


「……は?」


「そんなガチでキレんなよ……」




 おっといけない。つい殺意が籠もってしまった。日頃の恨み諸々があるからな。じゃあなんでこんな奴と友達やってるのかって?うるせえよ!ボッチなんだよ!気にすんな!(逆ギレ)

 俺は少し乱雑に口の中へ食べ物を放り込む。その時──。


「あー!見つけたー!」


 教室の扉が『バァンッ!』ととんでもない音を立てて開かれた。アレ、大丈夫?壊れてない?

 俺が心配している間にも、扉を開けた張本人はコチラへズカズカと近づいてくる。

 周りは「なんだなんだ?」とザワザワしだすが、彼女はそれには気にも留めていないようだ。




「先輩!なんで昨日部活来なかったんですか!ここ最近はからっきしですよ!」


「ちょ、ちょっと凛ちゃん!そんな急だと先輩も困っちゃうよ!」


「いやいや、蘭花。この先輩にはちゃんと言っておかないと聞かないって!」




 アワアワと挙動不審な黒髪ショートの美少女と、見るからに勝ち気な肩に掛かる程度に長い茶髪の美少女が何やら揉めているが、彼女らは俺の所属している部活の後輩だ。


 短い黒髪に黒色の瞳。少し控えめな身体つきで守ってあげたくなるような小動物系女子の長月ながつき蘭花らんか。


 長い茶髪をポニーテールで纏めており、赤めな綺麗な瞳。こちらも随分控えめなプロポーションながらも、確かに柔らかそうな、健康的な身体つき。キャンキャン吠えてきそうなチワワ系女子の鳥羽とば凛りん。


 ま、しばらく部活に顔出してなかったし、この二人がそろそろ来ることはおおよそ察してた。




「あれ?霰、お前部活に入ってたっけ?」


「ん?あぁ、一応美術部だ」


「ぷっ……。お前が?絵を?」


「お前今笑ったな!?一応俺だってそれなりには描けんだからな!」


「先輩!まだ話は終わってないですよ!」


「あ、はい。すみません」




 何やら後ろから翔の笑い声が聞こえる。後でシバいておこう。




「ちゃんと聞いてるんですか!?」


「はい!聞いてます!スミマセン!」


「ちょ、ちょっと凛ちゃん。怒りすぎだよ?」




 あぁ、蘭花が俺の唯一の癒しだ……。




「……そう言えば、俺は君たちとははじめましてだな」




 と、翔が気付いたようにそう呟き、それを聞いていた二人は彼を見る。




「アナタは?」


「俺は島崎翔。よろしく」




 そう言って爽やかに微笑みながら手を差し出す翔だったが──。




「……あっそ」


「ちょっ、凛ちゃん!」




 まさかの「あっそ」の一言で一蹴されてしまった。


 すげぇ。翔の顔がとんでもなく引き攣ってる……。




「なあ、霰……。この可愛げもない後輩ちゃん、殴ってもいいか?」


「ダメに決まってんだろ」




◇◇◇◇◇◇




 放課後──。


 俺は美術室にて部活に顔を出していた。


 のだが──。




「先輩……。それじゃ滲んじゃうでしょ。もっと優しくなぞらないと」


「うっ……。ハイ……」




 なんか……凛にピッタリとくっつかれながら描き方を教えられてるんですけど……。




「えっと……、凛。なんか近くない?」


「は?これぐらい当たり前でしょう?何言ってるんですか?」


「え、えぇ?」




 なんでこんな……。とりあえず俺は蘭花に助けを求めるべく、チラリと彼女を見るが……。


「ヒッ……」


 蘭花がものすごい形相でこちらを見ており、思わず悲鳴を上げてしまう。


 え、何?なんでそんな怖い顔してるの?え、怖。


「ちょっと先輩。ちゃんと聞いてるんですか?」


 ペシペシと俺の膝を叩いてくる凛。その拍子に彼女の髪がふわりと揺れて、フローラルな匂いが鼻腔ををくすぶった。


「あ、ああ。悪い……」


「全く……。先輩は私がいないと絵も満足に描けないんですから」


 そう言って溜息を吐きながらも、どこか嬉しそうにトントンと俺の肩を優しく叩いた。


 それに関してはぐうの音も言えない。実際、凜は数々の絵のコンクールで金賞を取りまくっている天才。ここ最近ではテレビや雑誌にさえ載るほど有名になっている。そんな彼女に絵を教えてもらえるなんて、もはや奇跡とすら言えるだろう。俺の学校生活が充実している要因の一つを作り出しているのが彼女なのだ。


「あのー、先輩?絵なら私もそれなりには教えられますよ?」


 と、ここで蘭花がニコニコと笑いながら言ってくれるが──。


「ホントか?それは──」


「あー、ダイジョブダイジョブ。私一人で全然問題ないから、蘭花は自分の絵に集中して」


「え……?あ、うん」


 あ!しょぼんってなっちゃったよ!もう少しみんなで部活楽しんでも全然いいと思うんだけどな!


 俺は少し心配げに蘭花を見つめていると、急にグイっと両頬を覆うように顔を掴まれる。


「ちょっと。私が教えてるんですから、別の方見ないでください」


「ひゃ、ひゃい」


 なんとも情けない返答を返すと、凜は俺の顔から手を放し、そのまま再び指導を始めた。まあ、この時間も悪くはないか。


 そう思っていた矢先──。


『ピロン』と俺の携帯が音を鳴らす。誰かからのメッセージだろうか。


「っと、ちょっと失礼」


 俺はべったりくっつく凜をうまく抜け、スマホを手に取る。

 さて……、送り主は……。


「……?」


 送り主は……蘭花?

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