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スターゲイザー  作者: ミズノハル
第一章 赤い目の悪魔
8/29

8. 影

帝国と革命軍の戦争が続く中、レイドは謎の少女エリナの護衛をすることとなった。レイドは敵として現れた親友に勝利し、彼を捕虜として同行させることにした。

 見張り台から見る風景が好きだった。町の低い外壁の周囲には森が広がり、尾根をまたぐにつれて緑は青白く色を変えていく。秋の景色が一番好きだった。高い空に、さっと絵筆を走らせたような薄い雲が東へと流れていた。山のところどころが黄や赤に染まり、眼下には黄金色の平原があり、その向こう側に青い山々がそびえていた。塀の中からは見えなかった、そんな風景が好きだった。


 あの町に来てからは、そうやって自然を眺めることが多かった。訓練や、死体探しや、面倒な人付き合いの合間に、レイドは一人で自然に触れ、じっとそれを見つめた。土の色、幹の凹凸(おうとつ)、木の葉の筋、枝のうねり、スズメの羽毛の模様、ちぎれる雲、空色の濃淡。すがるように、頭に詰め込むように、それらに目を向け続けた。そうしないことには、胸の痛みに耐えることはできなかっただろうから。




「あれ、みえない」と少女は言った。白い息が夜の闇に溶けて消えた。

「あれって?」とレイドは尋ねた。

「ほし。あかい、ほし」

「ああ、あの星か」レイドは合点がいった。「あれは秋にしか見られないんだ。来年まで待たないと」

「そうなの?」

 少女の目に涙が光るのが見えて、レイドは戸惑った。何をするべきかわからず、あたふたしているうちに、少女は笑い出した。

「な、なんだよ」

 少女は涙を拭いて、満面の笑みで肩を揺らしていた。思えば、彼女がこんなに笑っているのを見るのは初めてだった。

「えっと、たのしい」

「俺の顔、そんなにおかしかった?」

「うん、おかしかった」


 二人は夜空を見上げた。あの星が見えないことは、レイドも悲しく思った。あの星が無くても寂しくないように、どの空でも互いを感じられるように、すべての空を思い出にしよう。長い夜を、二人で過ごそう。レイドは少女の横顔を見つめながら、そう決意した。



  ◇ ◇ ◇



 今日は、あの星が出ていた。雲に隠れては顔を出す赤い星を見つめ、レイドは少女の名をつぶやいた。返事は無かった。

 夜空を見るたびに、彼女のことを思い出した。思い出しては、冷たい刃物でえぐられるように胸が痛んだ。三年前から、ずっとそんな毎日だった。


 不意に、少女の声が聞こえた。レイドははっとして振り向いた。そこにいたのはエリナだった。レイドは顔に落胆を浮かべそうになったが、なんとか踏みとどまった。

「どうしたんですか、こんなところで」とエリナは言った。

 レイドは空を指差した。「ここからだと、星がよく見えるんだ」

「あ、本当だ。ちょっと雲がありますけど、綺麗ですね」


 エリナは目を輝かせて空を見上げた。その横顔を見て、レイドは自分の心がふっと軽くなるのを感じた。しかし、その時間は長くは続かなかった。

「そういえば」とエリナは言った。「アイクさんが、ちょっと怒ってましたよ。リオさんから目を離すなって」

 レイドは額に手を当てた。「まずいな。すぐに戻らないと」

「そうですね」とエリナは言って、笑った。「あと一日ですからね。最後まで、気を抜かずに頑張りましょう」




 日々は問題なく過ぎた。追っ手は来なかったし、道に迷うでも、誰かが怪我をするでもなかった。

 警戒は解かないよう気を付けていたが、目的地を前に、安堵と達成感が皆の表情にはにじみ出ていた。

「なんだか拍子抜けだよ」とレイドは言った。

「二度も死にかけた奴の言うこととは思えないな」とアイクは言った。

 二人の間を歩くエリナはくすくすと笑った。




 山の合間に、大きな壁が現れた。人間の世界と自然とをはっきりと分けるその境界は、遠くからでも見上げるほどに高く、それを造り上げた人間の力には感嘆せざるを得なかった。短いつり橋の向こうに門があり、その前に三人の門番が立っていた。その門戸も相応に大きく、開けるには男が十人は必要だと教えられた。


 四人はその脇にある小さな扉から中に通された。扉を抜けると、家屋がところ狭しと並んでいた。遠くに要塞と黒い旗が見えたが、その姿は建ち並ぶ家屋に隠されていた。妙な圧迫感がそこにはあった。


 案内してくれる門番の一人は迷いなく歩を進めていたが、その道は方向感覚が失われそうなほどに入り組んでいた。みっちりと並ぶ家屋の隙間には柵が設けられている。町全体が迷路になっているのだ。

「敵に簡単に攻めこまれないためだ」と門番は言った。「この町は、外国の技術をもらって造ったんだ。もっとも、住むには少し不便な町だけどな」


 唐突に、視界が開けた。小さな広場だった。その中心には、処刑台がたたずんでいた。その周囲だけ、時間がゆっくりと流れているような、重々しい空気がただよっていた。レイドは息をのんだ。

「ここで半分くらいだ」と門番は言った。誰かが小さくため息をついた。


 踏み固められた道を歩き、ときどき近道だという狭い場所を通り、どこかの土間を抜け、また道を歩いた。同じ道を帰ることを考え、レイドが暗い気分になった直後に、迷路の終わりが来た。


 狭苦しい町並みとは対照的に、要塞の全貌は壮大なものだった。目の前には深い谷が侵入者を拒むようにぱっくりと口を開け、一本の大きな橋がそれを真っ直ぐに横切っていた。谷の向こうには、山のようにそびえる要塞があった。とげとげしい風貌は、町の住人の内面が映し出されているようだった。空高く掲げられた黒い旗が、要塞のものものしさを増長させていた。


 門番と別れると、四人は橋を渡った。谷底からは水の音が聞こえた。断崖に反響した音は奇妙なうねりとなって谷間に響き渡った。横を歩くリオが顔をしかめるのが見えた。

「嫌な風が吹いてる」とリオは言った。「早く渡ろう。ここは、なんか不気味だ」

「余計な口を利くな」とアイクは一蹴した。

 ここにただよう不気味な空気を、レイドも感じ取っていた。広場の処刑台と同じような空気だ。それはレイドがたびたび感じる、死の空気だった。仕方のないことだった。今は戦時中で、ここは革命軍の基地なのだから。


 橋を渡り終えると、二人の男が待っていた。アイクはその二人に事情を説明した。捕虜となったリオのことも含めて。話が終わると、リオはどこかに連れて行かれ、レイドたちは要塞の中を案内された。

 中に入ると、地図を一枚渡された。アイクは中を知っていると言って、レイドに押し付けた。その図面を見て、レイドは軽いめまいを覚えた。

「とんでもなく広いな、ここは」とレイドは言った。「こんな場所を、結成してほんの数年の革命軍が造ったのか?」

「いや、元々ここは国の研究施設だった。それを乗っ取ったんだ」とアイクは言った。

「研究施設? それにしてはずいぶん大きいな。人を収容してたようにも思えるけど」

「ああ、人を入れてたよ」とアイクは言った。「ここは、人体実験場だったんだ」

「まさか……」とレイドは言った。激しい胸騒ぎがした。

「ここは赤い目の悪魔を作っていた場所だよ。国内で最初の、最大の実験施設だ。俺は革命軍ができるまで、ずっとここで育ったんだ」

 アイクは窓の外を見て、まぶしそうに目を細めた。




「荷物はここに置いていいらしい」とアイクは言った。「ここが俺たちの部屋だ。しばらくはここに滞在することになる。俺はマルクス兵長にエリナを引き渡してくるよ。お前はゆっくり休んでいろ。とりあえず、今日は自由だ」

「わかった」とレイドは言った。


 エリナは手を差し出した。「短い間でしたが、ありがとうございました。ここまで無事に来られたのも、レイドさんのおかげです」

「むしろ俺が無事だったのがエリナのおかげなんだけど」とレイドは笑った。そして彼女の手を握った。「どういたしまして。こちらこそ、今までありがとう」

 小さな背中を見送り、レイドはベッドに横たわった。久しぶりのまともな寝床に、体中の力が一気に抜けた。


 終わったのか、とレイドはつぶやいた。終わったんだ。彼女を守りきった。エリナと別れることは寂しくもあった。しかし、彼女にはもう会わないほうがいい気もしていた。彼女の姿を見ていることは、きっと自分にとって良くはないだろう。


 レイドは柔らかいベッドに体を沈め、うとうとと眠りはじめた。夢を見た。現実と夢の境を行き来しているような気分だった。


 枕元に、少女が座っていた。彼女はゆっくりと振り向き、レイドの顔を見て微笑んだ。

「お疲れさま」と彼女は言った。

「ああ、ちょっと疲れたな」

「ちゃんと、守れたね」

 レイドは少女の頬に手を伸ばした。届きそうなのに、どうしても触れられなかった。

「でも、君は……」

 少女は静かに首を振った。いいんだよ、と言うように。

「おやすみ」と少女は言い、部屋を去っていった。

 彼女はほとんど痕跡を残さなかった。彼女が座った場所は綺麗で冷たいままで、彼女が何を言ったのかも、もう覚えていなかった。レイドは大きく息を吐き、深い眠りに落ちた。少女がそこにいたのだという実感と、彼女のいない空白を吹き抜ける切なさだけが残っていた。




 長い階段を下りると、今度は長い廊下が伸びていた。二人の足音と、男が手に持っている鍵束の揺れる音が、薄暗い廊下にいやに大きく響いていた。

「捕虜はここで拘束している」と男は言った。「昔は被験者の居住区域だったらしい。捕虜のくせに、そこらへんの宿よりよっぽどいい部屋に入れられてるんだ。まったく、うらやましい限りだよ」

「それで、俺たちが連れてきた男の部屋は?」とレイドは尋ねた。

「あそこだよ」そう言って男は、二つ先の部屋を指差した。「黒い札がかかってるだろう。あれが人が入ってる印だ。空きは白い札だ」

「なるほど」とレイドは言い、規則正しく並ぶ扉を見わたした。ほとんどが空室のようだった。

「まあ、ここに入れられるのは、そんなに多くねえよ」と男は鍵を探しながら言った。「ほとんどが殺されちまうんだから」


 がちゃん、と重い音がして、錠が開いた。扉が音も無く開き、中から黄色い光がもれてきた。中をのぞくと、ベッドの上に黒いものが横たわっていた。リオ、と名を呼ぶと、背中がぴくりと反応し、毛布を跳ね飛ばす勢いで彼は振り向いた。

「元気か?」とレイドは言った。

「レイド、来てくれたのか」とリオは言った。「元気だよ。何も食べてないから、腹は減ってるけど」

 男は咳払いした。「じゃあ、俺は外で待ってるから、終わったら声かけてくれ」


 扉が閉まると同時に、二人は再び向かい合った。

「とりあえず座ってくれ。ゆっくり話がしたかったんだ」とリオは言った。

 二人はベッドに並んで腰かけた。レイドがなんとなしに体を倒すと、リオも真似して横になった。手錠の重い衝撃が伝わってきた。二人はしばらく天井の木目を眺めていた。

「こうやってると、昔を思い出すな」とリオは言った。

「そうだな」とレイドは言った。昔と変わらない雰囲気を楽しみたかった。しかし、ここは革命軍の基地で、レイドはその兵士で、リオは捕虜だった。二人を取り巻くものは一変してしまったのだと、レイドは痛感していた。


「俺、どうなるんだろう」とリオは言った。「捕虜はみんな処刑だって、さっき聞こえたからさ」

 レイドはぎょっとしたが、木目を目でたどり、できる限り平静を装った。

「どうだろう。でも――」気休めでも希望のあることを言わなければならないとレイドは思った。「お前は異能を持ってる。利用価値があると思って、生かされるんじゃないかな。ここに来る途中にも、二つくらい捕虜がいる部屋があった」

「そうか」とだけ、リオは言った。


 重い沈黙が続いた。レイドが横目で様子をうかがうと、リオは難しい顔で天井を見つめていた。彼を元気づける言葉を探していると、リオは再び口を開いた。

「あのエリナって子、何者なんだ?」

 レイドは予想外の質問にどきりとした。自分の心臓が胸を突き破って出てきそうに思えた。レイドは体を起こし、胸を押さえた。

「わからない。俺も」とレイドは言った。

「あいつじゃないのか。お前がいつも一緒に――」

「違う」とレイドはさえぎった。「あの子とエリナは別の人間だ」

「どうしてそう言い切れるんだ。あの子、顔も声もそっくりじゃないか。他人のそら似なんてものじゃない」

「違うんだ」

 レイドは思わず大声を上げた。驚くリオの顔を見て、我に返った。

「ごめん」とレイドは言った。激しい動悸がしていた。

「いいよ。俺も悪かった」リオは起き上がって頭を下げた。


「あの子は死んだ」レイドはゆっくりとそう言った。背後で息をのむ気配がした。呼吸を落ち着け、言い聞かせるように繰り返した。「あの子は死んだんだ。自殺した。俺はそれをはっきりと見たんだよ」


「死んだ?」とリオは言った。「本当なのか、それ」

「俺がこの目で見たんだ。間違いない」とレイドは言った。

 リオは黙ったまませわしなく目を動かしていた。驚いているようではあったが、その目は決して悲しんではいなかった。


 そのとき、小さなノックの音が二人の沈黙の中に転がってきた。二人は開く扉を見つめた。

 細く開いた扉の隙間から、エリナが顔をのぞかせた。隣のリオの緊張が伝わってきた。レイドは逆に安堵している自分に気付いた。彼女とは、なんとなくもう会えないかもしれないと思っていたからだ。

「お邪魔します」とエリナは言った。

「どうぞ。入りなよ」とレイドは言った。

「いえ、レイドさんを呼びに来たんです」と彼女は言った。「ええと、マルクス兵長が呼んでますよ。私が案内するので、ついて来てください」

「……今日は自由って聞いたけど」

 エリナは肩をすくめた。「兵長、けっこう勝手な人ですから」

「わかった、行くよ」

 レイドが腰を上げると、エリナはリオに小さく手招きをした。

「リオさんも、来てください」

「俺も?」

 きょとんとするリオに、エリナは微笑みかけた。

「大丈夫ですよ。取って食べたりはしませんから」




「レオン、連れて来たよ」とエリナは言った。レイドはそれを聞いて驚いた。彼女がくだけた口調で話すことはほとんど無かったからだ。

 すぐに、扉が開いた。黒い軍服の男が目の前に現れた。彼もまた赤い目だった。

「ここでは兵長と呼べよ、エリナ」と彼は言った。「さあ、みんな入ってくれ」

 三人は促されるがままに部屋に入った。兵長という肩書きではあったが、他の部屋と同じ間取りだった。布のソファが二つ、小さな机をはさんで向かい合っていた。

「そこに座ってくれ。座り心地はあまり良くないが」


 レイドとリオは男の向かいに座り、エリナは当然のように男の隣に座った。ソファの大きさを考えると不自然ではなかったが、レイドはなぜか胸がぐっと圧迫されたような感じがした。

「二人は知り合いなんですか?」レイドは気付くと尋ねていた。

男はどきりとしたように顔を上げた。「え? ああ、一応な。昔からの知り合いだ」

「レオン……じゃなくて、兵長。お話は?」とエリナが言った。

「ああ、そうだな」

 水筒の水を一口飲んで、男は膝の上に肘をついて、息を一つ吐いた。


「さて、俺がレオン・マルクスだ。いつの間にか兵長になっていた。変な勲章までもらってしまって。面倒な仕事は増えたし、威張るのはあまり好きじゃないんだが――」

「兵長」エリナはレオンをにらんだ。

「ああ、すまん」とレオンは言った。「それで、お前がレイドか。いろいろと話は聞いてるよ。ここまでエリナを連れて来てくれてありがとう」

「いえ、俺の不注意で何度も危険な目に遭わせてしまいました」

「無事にここにいるんですから、それでいいんですよ」とエリナは言った。

「そういうことだ。命懸けで守ったことも、誇っていい」

 レオンは背もたれに寄りかかった。リオが居心地悪そうにしているのが横目で見えた。


「さて、ここからが本題だ」とレオンは言った。「お前に新しい指令を出そうと思ってる。とても重要な指令だ。それを伝える前に、お前についてもっと知っておきたい。これは信用の問題だ。まるっきり信用してないわけじゃない。エリナを守ってくれたし、アイクもお前を買っているようだしな。ただ、俺は俺で根拠が欲しいんだ」

 レイドはレオンの顔を見た。胸騒ぎがした。レオンの目元がかすかに険しくなった。

「俺に何をさせたいんですか?」とレイドは尋ねた。

「何も難しいことじゃない」


 レオンがそう言い終わると同時に、水筒が倒れ、彼の姿が目の前から消えた。レイドの目は彼の姿をとらえていた。レオンはソファから立ち上がり、ズボンのポケットに両手を突っ込み、歩いてレイドのうしろに回りこんで、レイドの首筋に指を当てた。レイドが気付いて反応するまでの間に、それらがすべて行われた。驚いて飛びのくレイドを見て、レオンは笑った。

「いい反応だ。なかなかやるな」とレオンは言った。

「そりゃどうも」とレイドは言った。「今のが、確かめたかったことですか?」

「いいや、これは挨拶だよ。まあ楽にしてくれ」とレオンは言い、ソファに戻った。今度はちゃんと、ゆっくりとした動作だった。

「驚かせてごめんなさい、レイドさん。口より体で伝えるほうが得意な人なんです」とエリナは言った。

「要するに馬鹿ってことだ、俺は」とレオンは言った。


 レイドが腰を下ろすのを待って、レオンは話を続けた。

「他人の秘密を探りたいなら、自分から開くべきだと思ってな。今やったのが、俺の異能だ。速く動くことができる。詳しいことは弱点がばれるから言えないが、どれくらいの速さかは、見ての通りだ。どうだ、見えたか?」

「一応、見えました」とレイドは言った。

「ああ、そうか。お前は目が良いんだったな」レオンは笑った。


「秘密がどうとか言ってましたね。俺に何か言わせたいんですか?」

「ん、まあ、そんなに警戒するようなことじゃない」レオンは倒れた水筒を元に戻した。「お前の過去を、ここで話してほしい。過去は血や肉をつくり、現在の姿を作っていくものだ。過去を知れば、お前について理解することが易しくなる」

「過去、ですか……」

「帝国の施設を脱走してからのことは、だいたい聞いてる。だが、その前のことを知ってる人間は少ない。そこを中心に話してほしいな。できれば、お前の異能のことも含めて」


 レイドは上目づかいでレオンの顔を見た。断る権利は無さそうだった。そのために彼は自らの異能を見せたのだから。

「それ、俺も聞きたいよ」とリオは言った。「俺があそこを出た後に何があったのか、俺も気になる。どうしてお前、脱走なんてしたんだ?」

「それに関しては、リオ、お前の話も聞きたい」とレオンは言った。「友人のお前から見てどうだったか、教えてほしいんだ。そのためにお前も呼んだ」

「……わかりました」一拍の間をおいて、リオは言った。


 全員の視線がレイドに集まった。隠し事も嘘も許されそうになかった。それは信用を失うことで、レオンが最も嫌いそうなことだ。レイドはため息をついた。昔の事はあまり話したくなかった。

「わかりました。話しましょう。そうするしか無さそうだ」

 レオンは満足そうに笑い、ソファに身を預けた。レイドは深く息を吐き、それから大きく息を吸った。アイクと似たような癖がついた気がする、と頭の隅で考えていた。

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