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スターゲイザー  作者: ミズノハル
第一章 赤い目の悪魔
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4. 強さ

帝国と革命軍の戦争が続く中、レイドは謎の少女エリナの護衛をすることとなった。レイドは帝国の刺客から少女を引き離すも、敵の使う異能に倒れる。

 少女は白い壁に身を寄せ、体を守るように細い両腕を胸の前で揃えて、おびえた目でこちらを見上げていた。その表情を見て、さらに苛立(いらだ)ちが増すのを感じた。


「おい、俺たちの目の前を横切るなんて、何を考えてんだ? 前に言っただろうが。視界に入るんじゃねえってよ」

 左に立つ太った少年はそう言って、粗末な手製のナイフで少女をつつく真似をした。右の痩せた背の高い少年はそれを見て笑っていた。二人はいつも自分にくっついて歩く、まさに虎の威を借る狐だった。イノシシとゴボウのようだと彼らを見るたびに思った。

 少女はナイフが近づくたびに体をこわばらせ、イノシシは面白いのか何度もそれを繰り返した。何も愉快には思えなかった。そのうち見ているのも嫌になった。


「おい、バケモノ」苛立ちながらそう言った。

 それを聞いたイノシシの顔がわずかにこわばるのが見えた。彼を押しのけて少女の前に立つと、彼女はさらに小さく縮こまった。それにもまた怒りを覚えた。

「なあ」と背後のイノシシは言った。「バケモノは少し言いすぎじゃないか」

 振り向いた勢いのまま、イノシシの胸ぐらをつかんだ。彼の表情が凍りつくさまは吹き出しそうなほど滑稽(こっけい)だった。

「お前、いつから俺に口答えできるほど偉くなった?」

 イノシシが血相を変えて謝る姿に笑いそうになるのをこらえ、彼を解放して少女に向き直った。

「なあ、知ってるか? 外の世界では、黒猫が目の前を横切るのは不吉なことらしいんだ」

 少女はおびえた目を向け続けていた。そうじゃねえよ、と心の中で毒づいた。

「お前はそれと同じだ。いや、それよりもたちが悪いな。なんせお前はバケモノなんだからな。どうしてくれるんだ。俺たち不幸になっちまう」


 少女はうつむいて、口をもごもごと動かした。じれったくなり、怒鳴りつけてやろうかと思ったとき、彼女は言った。

「……ごめんなさい」

 衣擦(きぬず)れにもかき消されそうな声だった。抑揚を欠いた、平坦な声。

 彼女の謝る姿に、腹の底から笑いがこみ上げた。こらえきれずに大声で笑うと、ゴボウもそれに続いた。彼の気味悪い笑い声で、風船がしぼむように気分が冷めた。ゴボウの下品な笑い声だけが長く続いた。


「そうじゃねえよ」と今度は声に出した。「お前が謝ったら俺たちは幸せになんのか? 他にできること、あるだろうが」

 少女は途方に暮れた表情でうつむいた。彼女の全身をひと通り眺めて、思いついた。

「そうだ。服、脱げよ」

 背後の二人が息をのむ気配を感じた。こんなことでビビるなよ、と心の中で二人を罵った。

「あれも歳をとらないのか見てやる」

 少女は必死に首を振った。その目から涙がこぼれた。それを見ていると、さっきまでの苛立ちがまた湧き上がってきた。少女の頬を平手で殴ると、彼女は地面に倒れこんだ。擦りむいた肘から赤い血が垂れた。

「早くしろ。それとも無理矢理脱がせてやろうか」

 イノシシが引きつった笑い声を上げた。その声の不快さに、思わず舌打ちをした。


 少女はしゃくりあげながら、震える手を胸のボタンに添えた。肘の傷から垂れた血が、白いスカートに落ちようとしていた。

 そのとき、背後のゴボウが小さく声を上げた。振り返ると、背の小さな少年が、肩で息をしながらこちらに歩み寄っていた。

「お前ら、何してる」と少年は鋭く言った。初めて聞く声色だった。

「よう、レイド。邪魔するなよ。俺たちは仲良く遊んでただけだ」

「ふざけんな。その子から離れろ」


 今日は厄日だ、と思い肩をすくめた。バケモノとは会うし、面倒な奴も現れた。

 少年を顎で指すと、イノシシが彼に殴りかかった。しかし、二人が体を重ねたかと思うと、イノシシは地面に転がっていた。イノシシの間の抜けた顔を見て舌打ちをし、ゴボウとともに年下の少年に飛びかかった。

「早く逃げろ」

 少年はゴボウの手をかわしながら叫んだ。


 彼は思っていたよりも激しく抵抗した。正直に言うと、ここまでやれるのかと感心したほどだった。しかしこちらは三人だった。小柄な少年は抵抗できなくなるまで痛めつけられた。少女はいつの間にかいなくなっていた。

「散々暴れやがって。このクソガキ」

 地面に落ちたナイフを拾い上げ、ゴボウに羽交い絞めにされた少年に歩み寄った。彼はまだ反抗的な目を向けていた。膝で腹を蹴り上げると、変な声を上げてぐったりとした。

「聞いたぜ。お前、異能が無いそうじゃねえか。ああ、目が良いんだっけ? 笑わせるよなあ。そんな能無しが俺たちと同等に扱われてるんだからよ」

 小さな爆発とともに、左手から赤い火が立ち上った。それを見たイノシシは顔色を変えた。

「お、おい。異能で人を傷つけたら厳罰だって――」

「わかってるよ」とさえぎり、イノシシをにらみつけた。

 ゆらめく火の中に、不格好なナイフの刃を入れた。この施設内では、異能で人を傷つけてはいけない。それは絶対のルールだった。厳罰、というのも、きっとその言葉よりも重いものが科せられるだろうと薄々感じていた。だから手を出さないだけだ。火にあぶられた刃が赤くなるのを、じっと見つめた。その気になれば、こんなガキ一人くらい、いつでも殺せるんだ。この炎で、骨も残らないくらいに焼き尽くせる。


 熱したナイフを、イノシシに投げ渡した。彼はあわてて少し焦げた木の柄をつかんだ。

「それでこいつの目を刺せ」

 イノシシは目を見開いた。ナイフと少年を交互に見て、へっ、と間抜けな声を出した。

「そ、そんなこと――」

「できないのか?」

「やる。やるよ」

 イノシシは無理矢理立たされた少年の前に立ち、その左目に、赤い刃を向けた。そのとき、虚ろだった少年の目が大きく見開かれた。さすがにビビったか、と思ったが、様子がおかしかった。彼の目はイノシシをじっと見つめていた。驚きでも、恐怖でも、怒りでもない強い感情が、その目にうず巻いていた。

 なんてイラつく目をしやがる。そうじゃねえだろ、お前がするべき顔は。何だよ、その目は。違うだろ。ふざけるなよ。激情と理性が握りしめた手の中でせめぎ合っていた。この怒りを炎にしてぶつければ、間違いなくお前を殺せる。今、この瞬間でも、簡単に殺せるんだ。それなのに、どうしてお前はそんな目をするんだ。

 動かないイノシシの背中を、思い切り蹴りつけた。いくつかの悲鳴があったが、どうでもよかった。ただ手の中でくすぶる怒りを抑えるのに精いっぱいだった。



  ◇ ◇ ◇



 空気が悪かった。深く息を吸っても、どこか息苦しさを感じるほどだ。かすかにすすの匂いがする。レイドは数回咳をした。目を開けると、ランプの光が目に入った。その光が目の奥に刺さるようにまぶしく感じ、思わず手でさえぎった。

「レイドさん、わかりますか? レイドさん」

 エリナの姿が、指の隙間から見えた。手をどけると、彼女はほっとした表情を浮かべた。

「よかった。アイクさんを呼んできますね」

 レイドの返事を待たずに、エリナは部屋を出た。レイドはぼんやりした頭のまま、ランプの光を見て、自分の手を見た。何もおかしなところは見当たらなかった。しかし、レイドはすぐに飛び起きた。知らない服を着ていた。腕や顔を触ったが、どこにも異常は無かった。それが異常だった。レイドは赤黒く焼けた自分の腕を思い出した。あれが夢のはずがないのだ。


 木の扉が開き、アイクが音も無く入ってきた。彼はベッドの前に椅子を二つ並べ、その片方に腰かけ、何を言うでもなく自分の組んだ指を見ていた。それは重要な話をする前の彼の癖だった。彼はあまり余計なことを言わない。彼の口から出てくる言葉は、綺麗に形を整えられていることが多かった。この沈黙はそのための時間だった。


「気分はどうだ?」とアイクは言った。彼らしくない言葉だった。「ずっと眠ってたんだ。運ぶのが大変だった」

 エリナは水を持ってきた。レイドは促されるままに一口飲んだ。自分で思っていたよりずっと体が渇いていたことに気付き、レイドはそれを一気に飲み干した。

「よかった。ずっと心配してたんですよ。特にアイクさんが」

「おい」とアイクは鋭い声を出した。

「まあ、とにかく、レイドさんが目を覚ましてよかったです」

 エリナはそう言うと微笑んだ。レイドもつられて笑った。


「なあ」とレイドは言った。「状況を教えてくれないか。俺には、何が起こったのかよくわからなくて」

「ああ、そうだな」とアイクは言った。彼はまた少し沈黙し、顔を上げた。「まず、今いるこの場所は、エリナと落ち合った村とは違う無人村だ。帝国の追手が現れたなら、エリナの居場所は敵に知られていたわけだ。だから、急いでお前を背負ってここまで逃げてきた」

「背負って?」

「ああ。小柄で助かった」

 レイドは少しむっとしながら言った。「起きるまで待ってくれれば、自分で歩いたのに」

「それがな」とアイクは言った。「お前はずっと寝てたんだ。一日待って、とうとう起きなかったから、急いでここまで移動した。結局、お前は丸三日も寝ていた」

「三日も?」

「ああ。無理もないかもしれないな」

 レイドはアイクの言葉も気になったが、それよりも大きな謎がまだ残っていた。レイドは自分の手を見て、そしてアイクに目を戻した。


「それで」と彼は言った。「どうして俺は生きてるんだ?」

 アイクは隣に座る少女を親指で指した。

「エリナが?」とレイドは言った。

「はい」とエリナが言った。彼女は自分の目元を指でとんとんと指した。「私の異能です」

 彼女の少し得意げな赤い目を見て、レイドは心の底に抱いていた期待が崩れていくのを感じた。その目を見たときから、あるいはそれ以前から予感していたことではあるが、エリナは異能と関係の無い人間であってほしいという思いがあった。


「どうやって助けた?」とレイドは言った。「火傷だらけだったはずだし、かなり暴行も受けた。もう助からないと思ってたのに、たった三日で治るなんて」

「治るのに三日もかかっていませんよ」とエリナは言った。そして彼女はランプの横にあった果物ナイフを手に取り、レイドが止める間も無く、自分の手を切りつけた。彼女はわずかに眉を寄せた。

「何してる」とレイドは驚いて言った。刃物を取り上げようと手を伸ばしたが、アイクがそれを手で制した。

「百聞は一見に如かず、だ」とアイクは言った。

 レイドはその手を払いのけたいのを抑え、エリナの手を見た。しかし、その手には傷一つついていなかった。

「もう一度やりましょうか」とエリナは言った。レイドは口を開け黙ったまま、彼女が今度は腕に傷をつけるのを見ていた。白い腕に引かれた鋭い傷は、時を巻き戻したかのように、すっと消えた。レイドの目にも痕が確認できなかった。再生、と彼女は言った。


「こうやって傷を治すことができます。もちろん痛みは感じますし、それなりに疲れますが」

「驚いたな」とレイドは言った。「じゃあ一瞬で治したのか、あんな状態の俺を。ありがとう。これは感謝してもしきれないな」

 エリナは微笑んだ。「ただ、もう死んでしまった人を生き返らせることはできません。だから無茶しないでくださいね」それから、思い出したように付け加えた。「それと、古い傷を治すこともできません」

 レイドは自分の左目に手をやった。眉の上から頬骨まで、縦にまっすぐ、傷痕が残っていた。「これは治さなくてもいいよ」とレイドはつぶやいた。


「さて」とアイクは待ち構えていたように言った。「状況はわかったな。これからの話をしようか」

 レイドはうなずいた。アイクはゆっくり息を吸った。

「お前が寝ていた分の遅れは、取り戻すことはできそうだ。二週間後までにエリナを送り届ける指令だが、最初から時間に余裕を持たせてある。まあ悪く言えば、もう余計な時間をかけられない、ということだな。そのため、ルートを変えることになった」

「ルートを?」とレイドは言った。「それ、大丈夫なのか?」

「ああ。あらかじめ四つはルートが決めてあった。最初に計画していたのは、その中でも一番楽で時間のかかるルートだった。無人村を経由しながら、山を避けて平地を通る」

 そう言ってアイクは広げた地図の上で指を滑らせた。山地を大きく迂回する赤い線が、そこに引かれていた。

「これから行くのは、こっちだ」彼は山地を突っ切る青い線を指した。「山を歩くが、そこまで険しい道ではない。最短の距離と時間で、目的地までたどり着ける。ただ、やはり問題がある」


 レイドは地図を眺めながらアイクの言葉を待った。エリナは洗ってきた果物ナイフでリンゴを切っていた。

「この道には人が住んでいる場所が少ない。だから寝泊まりは野宿が基本になる。それと、革命軍の管理も行き届いていない。補給も少なくなるし、安全も確保できていない。少し厳しい道のりになる」

「すまない。俺があんなことになったから……」

「気にするな。死なれたほうが面倒なことになっていたし、まだ任務も失敗したわけじゃないんだ」


 レイドは地図に目を落とし、にじんだ青い線を見つめた。


「もうすぐ夜が明ける」とアイクは言った。「日が昇ったら、出発しよう。それまでに準備をしておけ」


 アイクは短い沈黙をはさみ、地図を畳んで部屋から出ていった。扉の閉まる音が合図になったかのように、エリナはリンゴを載せた皿をレイドに差し出した。

「元気出ませんか?」と彼女は言った。

「ああ、ちょっとね」

「とりあえず、それ食べてください。少しは良くなりますよ」

「うん、ありがとう」

 酸味が目立つリンゴだったが、かえってそれが丁度いいように感じた。皿が空になったときには、確かに頭がすっきりしたような気がした。改めて礼を言うと、エリナは微笑んだ。

「ねえ、レイドさん」とエリナは皿を拭きながら言った。「何か言いたいことがあるんじゃないですか?」

 レイドはエリナの顔を見た。彼女は微笑みながら首をかしげた。その表情に一瞬心が揺らいだ。しかし、レイドは小さく頭を振って、膝にかけられた毛布を脇にどけた。

「ちょっと外の空気でも吸ってくるよ」とレイドは言った。立ち上がると少しふらついたが、手を貸そうとするエリナに「遠くまでは行かない」とだけ言って、まだ暗い外へ出た。


 外はカシの森だった。木の葉の隙間から、月の光が斜めに射していた。薄い霧でそれはいくつもの光の柱に見えた。深く息を吸うと、湿った冷たい空気が胸を満たした。頭の中に残っていた霞が晴れていくのを感じた。

 レイドは空を見上げた。黄金色の月や瞬く星々が浮かぶ藍色の空は、引き裂かれて散り散りになっていた。


 いつもと変わらない左手を握りしめながら、ルークと戦ったときのことを思い出していた。肺が焼けつきそうな熱気と、火傷の鋭い痛み、吐き気を催す臭い、焼けた赤黒い皮膚。最後の瞬間の、致死的な刃の輝き。レイドは左手を強くつかんで、震えを抑えた。

 ルークが最後の一撃を放とうとしたとき、彼の胸をアイクの剣が貫いた。エリナがアイクを連れて来なければ、自分は今どうなっていただろう。エリナについていたのが自分でなくてアイクだったら、彼女は危険にはさらされなかった。ちゃんと警戒して彼女を連れ出さなければ。この任務に選ばれたのが自分でなければ。


 涙が頬を伝った。レイドはその場に座りこんだ。震える左手を抱きかかえるようにしながら、自分の膝に涙のしみが広がるのをじっと見つめていた。ルークに負けたことが、ただ悔しかった。声は上げなかった。胸が詰まり、ただ涙があふれてきた。涙でぬれた場所が風で冷たくなった。レイドはしばらくそうやって泣いていた。涙がおさまったとき、頭上には淡い空色が広がっていて、隣にはアイクが座っていた。彼が来ていたことには気付いていた。彼は後ろから静かにやってきて、レイドが落ち着くまで黙って待っていた。


「悔しいよ」とレイドは言った。「すごく悔しいんだ。能無しって馬鹿にされて、異能なんか無くてもやってやるって、負けてたまるかって、ずっと思ってた。でも、だめだった。異能を前にしたら、何もできなかった。あんたやエリナが来なかったら、俺は生きてなかった。俺は自分で思ってるよりもずっと弱かったんだ」

 アイクは何も言わなかった。片膝を立て、背筋を伸ばして、どこか遠くを見つめていた。彼の視線の先にはただ暗い森が続くばかりだった。

「もし俺が二人の足を引っ張ったら」とレイドは言った。「そのときは、迷わず先に行ってほしい。俺を助けることが少しでも二人を危険にさらすなら、迷わず見捨ててほしい」

 アイクは深く息を吸って、そして吐いた。

「この任務のパートナーがお前だと聞いたとき、俺はほっとしたんだよ」と彼は言った。「他の誰かだったら、ひょっとしたら一度は断ったかもしれない」

 レイドは驚いてアイクを見た。彼はレイドと同じように、小屋の壁に背中を預けていた。

「嘘だろ」とレイドは言った。

「嘘じゃないさ」とアイクは言った。「訓練でまともに俺についてくるのは何人いると思う? その中で音も上げなかったのは、お前くらいだ」

「だけど俺はルークに負けた」

「任務はエリナの護衛だ。お前はちゃんとエリナを守っただろう」

 レイドは何も言えなくなった。どうしてこの男はこんなに自分を買うのだろう。


「お前を見てると、昔の自分を思い出すよ」とアイクは言った。「俺も異能が無いことで馬鹿にされたよ。悔しくて、自分も異能に目覚めたくて、いろいろやった。結局、戦うことしかうまくいかないって気付いた。炎を操ることも、傷を治すことも、無理なものは無理なんだって気付いたんだ。だから、できることだけをやることにした。俺はただの兵士になったよ。その施設で一番強い、ただの兵士に」

 レイドは言葉を失った。こんな話を聞くのは初めてだった。それを語るアイクの横顔も、初めて見る表情をしていた。

「確かに、お前はルークに負けた。お前が思うように、弱いところもあるだろう。だが、何か強いものも同時に持ち合わせている。少なくとも俺はそう思ったよ」

 アイクはレイドを見て、照れくさそうに笑った。レイドはまた泣き出しそうになった。さっきとは違う涙だ。

「ありがとう」とレイドは言った。「この任務、成功させよう。みんな無事で帰ろう」

 二人は拳を突き合わせた。


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