表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/33

クッキーの行く末。

 

 階段では玲花と天馬がまだしゃべっていたが、本鈴が鳴り、二人は慌てて教室に戻ってきた。

「あれ! すず、いつの間に終わってたん!?」

「あ、エレベーターの方から帰ってきちゃってた。ご、ごめんね」

「すれ違いかー。まあいいや、単位大丈夫やった?」

「う、うん」


 すずはまともに玲花の顔を見れなかった。


 あれ、なんだ、この気持ち。

 二人がお付き合いしてることだって、普通にありえるでしょ……?

 まだ、ちくちくする胸を、すずはコントロールできなかった。

 放課後、すずは帰る準備を始めた。

 玲花は天馬を少し見て、ウィンクを送る。

 天馬が頷く。


(二人だけの、何かの合図なのかな……)


 そう思うと、すずは胸が痛んだ。


(仲良くなったつもりでいたのに、私には、内緒なんやね。二人が……)



 鞄の中で、こつりと爪が当たる。

 クッキーの瓶だ。

 玲花と、陸の分。


(あ、忘れてたこれ……でも、私今日は玲花ちゃんの顔が見れないよ)


 すずは、しばらく鞄を見つめて、そして考えた。


(天馬くんは誰にでも優しいから。だから玲花ちゃんとの時間を削ってまで、一緒にいてくれるのかもしれない。私、何か勘違いしてた……かも)


「バンビ、どした? さっきから固まって」


 机に突っ伏していた陸があくびをしながら起き上がった。

 すずは思い切りびくりと体を震わせた。

 そして俯いた。


「え? なになに? どないしたん?」


 陸がゆっくりと近づく。

 天馬はその時になってようやく、すずの様子がおかしいことに気づいた。

 陸は、なんだ? という顔をして、立っている。

 陸の席はすずの斜め前。

 そして玲花は、すずの真前だ。


「あ、ああああの、今日は、あの、私、少し残って、あの、先に、帰っててくだ、さい」


 最後の方は声が出なかった。


「は? なに急に。昨日は一緒に帰ろうって約束したやん」


 天馬の声が低くなる。

 すずは鞄の中で、クッキーの瓶を握りしめた。


(なんでクッキーあげるだけやのに、こんなに緊張するんやろう! さらっと渡すはずやったのに! 私、三人の友達になれたつもりでおったから、だから……)


 その時だった。


「おー、お前ら何してんねん。もう部屋閉めるど〜」


 佐伯が入ってきた。

 気づけば教室には、四人しか残っていなかった。


「鈴木?」


 佐伯が様子がおかしいことに気づいて、訝しげに三人を見つめると、陸は両手を上げて、わかりません、と合図した。

 佐伯はすずの前に立ち、膝に両手をついてかがんだ。


「どないしたぁ? しんどいんか? あれ、それなんや、その瓶は。握りしめて」


 その瞬間だった。

 すずはバッと佐伯の胸にクッキーの瓶を押しつけた。


「お?」

「こ! これはいつもの御礼の品物でございますので、よかったら食べてくださいー!! 帰ります!!!」


 すずの顔は耳から首まで真っ赤に染まった。


「ええええっ! なんや! え!? クッキー!?」

「か、かかか、帰ります!!!」


 すずは、鞄を胸に抱いて、走り出した。

 教室を飛び出ると、エレベーターまで猛ダッシュし、閉じかけたエレベーターにシュッと入り込んだ。

 天馬は呆然として、佐伯の手に握られているクッキーの瓶を見た。

 陸と玲花は、天馬と佐伯を交互に見て、そして、あちゃーと顔を顰めた。


「うわ。うまそうやな。そうか、あいつパン屋でバイトしてるから、こんなんもお手のものやな。お前らも貰ったか?」


 陸と玲花は、ふりふりと顔を振った。


「えー! 俺だけ!? だから緊張してたんかいや。ま、これは恩師の特権やな! ありがたく頂くわ! お前らはよ帰れよ!」


「先生、さすがバツイチなだけあるっすわー」

「あーね」


 陸と玲花が空気の読めない男に向かって、引いた目で佐伯を見たが佐伯はそれに気づかず、瓶を眺めて嬉しそうにしていた。


 佐伯は三人を教室から出すと、鍵を閉め、意気揚々と消えていった。

 天馬は、廊下の大きな窓から見える瀬戸内海を見つめた。

 エレベーターは、一階に向かってどんどん降りていっている。


「俺だけにくれたんやと思ってた」

 ぽつりと呟く。

「ドンマイ」

 陸が肩を叩いた。

 玲花が感心したように言った。


「わー、すず。真っ赤やったなぁ。わざわざ残って先生に渡すとか、まるで告h……むぐっ!?」


 陸が慌てて玲花の口を塞いだが、遅かった。

 天馬は口に手を当てて、固まっている。


「……先生か。完全に、対象外か思ってたわ」


 ちーん。

 一階に到着したすずは、走り出した。


(あーもう意味わからん私! 教室飛び出しちゃった! 気まずいよー!!!)





リアクションや、☆☆☆☆☆を★★★★★に変えていただけると、執筆の励みになります^^

感想、ご指摘、ブクマも大歓迎です!

毎日更新予定です。完結約束、ハッピーエンドです(^ ^)

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ