これがサンド……あれ、俺ヤバくね?
俺は目が点、文字どおり点だ。思考も止まりかけたが深呼吸して現実へもどってきた。
「カエデの作るメシはうまい」
「たいしたもの作ってないし、なんか照れるな」
「カエデは家事ができるのに偉そうじゃない、俺にやさしい」
「うん、ありがとう。比較対象がユウマだからかな」
「好きだ、カエデ!」
「ちょ、ちょっといったん落ち着こうか」
デカくてもソウマは中学生、身近な人へむける親愛と恋愛を履き違えてる可能性もある。彼が子どもあつかいを嫌がるのは承知のうえで説得をこころみる。
「なら俺が大人になったら、付き合ってくれるのか?」
「ええっと……」
「カエデと付き合うなんて100年早いんだよ! ソウマ」
「ユウマ!?」
「出たなストーカー! カエデ、気をつけろ。コイツはとなりの部屋で聞き耳立ててるヘンタイだ」
押しの強いソウマに気圧されていたら、ユウマが駆けこんできた。部屋の会話は筒ぬけ、兄弟の争いがふたたび勃発する。
嵐のなか小舟で放りだされた俺は海獣たちの大波に揉まれる。ユウマも弟相手に大人げない、ケンカというよりプロレスがはじまった。大型海獣を止められるわけもなく眺めていると重大なことを思いだした。
ミズキに借りた本がまくらの下に。
時すでに遅し、倒れたソウマの体重でベッドが波うち、枕と本が床へ投げだされた。落ちた本はタイミングの悪いことにページがめくれて彼らの目にとまる。俺は本を取るべく飛びこんだけれど、ユウマがさきに拾った。
「シャツのボタンを外したタケシの手は敏感なぶぶんを……なにこれ? まさか……」
「ぐぬあぁ――――!!」
人生で出したことのない叫び声を発した俺は、スライディングをきめて本をとり返した。あまりの血相に兄弟も争いの手をとめる。
「カエデ、エロ本か!?」
「いや、ちょっとしか見なかったからよく分からん。カエデ、その本かせ」
「ちがう、なにかの見まちがいだ! たまたまそういうシーンがあるだけの本で!!」
ソウマの質問に瀕死になりつつ、ユウマの手をなぎ払う。こういう時なぜか兄弟は意気投合する。伸びるヤツらの手を引っ掻き、猫みたいに丸まってミズキの本を死守した。
「カエデ、おはよう~。昨日の本、読んだ?」
「奪いあい、守りきった……」
「僕そんなハードな内容の本貸したっけ!? どういうこと!?」
翌日、燃えつきた俺の感想にミズキが困惑した。
◆◆◆
マミさんと坂木兄弟が家へきて、1カ月が経とうとしている。
弟ソウマの衝撃的な告白に答えを返さなかったものの兄弟はあいかわらず。ソウマには定期的に告白され、そのつど兄が邪魔しにくるのが日常となった。筋肉質な肉体で訴えろとでも友人に助言されたのか、最近は半裸でアピールするようになってこっちも困る。きのうも風呂上がりのソウマがせまってきたので胸筋をぺちぺち叩いて追いはらった。
ユウマは――――。
兄のユウマは弟や親のいないときにキスしてくる。彼はひみつの行為を楽しんでいる節もあり、俺がほかの人に言わないのを知ってるから性格の悪さは健在。うやむやにしてるけど、ひとつ屋根の下でのイケナイ関係はつづいてる。




