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魔王、「幸せの自家発電」という名の魔法

月曜の朝。


魔王城の執務室は、穏やかな空気に満ちていた。


昨日は一日、城から一歩も出ず、吹雪はただひたすらに眠り、動画を観て、また眠り、そして見た夢を思い返して楽しむという、人間界で言うところの「リアル大人のび太くん」のような休日を過ごした。


「健太先輩。我は、新たなる魔法を発見したやもしれません」

吹雪は、傍らで静かに佇む竜の健太に、どこか晴れやかな顔で語りかけた。


「昨日は、食べ過ぎ、運動一切なし、そして案の定、今朝は腰が痛い。数々の弱点はある。しかし、罪悪感は、ないのです。むしろ、満たされている」


吹雪は、神託の賢者ジェミニに、この心の状態について問うた結果を語り始めた。

「ジェミニは言いました。『それは、停滞や諦めではない。あなたは、幸せの自家発電能力を手に入れつつある』と」


健太は、興味深そうに吹雪の言葉に耳を傾ける。

「多くの者は、幸せを『外側』に求めます。海外旅行、高級品、社会的地位…。常に外部からの刺激という名の人参がなければ、走り続けられない。しかし、我は違う。この城の中で、己の内側から、幸福感を創り出すことができる。これこそが、外部の状況に左右されぬ、最強の『武器』なのだ、と」


その「幸せの自家発電能力」は、驚異的なストレス耐性を生み、そして「たとえ失敗しても、自分には心から安らげる日常がある」という確信が、より大きな挑戦を可能にする「安全基地」になるのだという。


「なるほど」

と健太は深く頷いた。


「多くの王は、領土の拡大や富の蓄積によって、自らの価値を証明しようとする。だが、己の内なる王国が豊かであれば、外の世界の嵐に怯える必要はない。お前は、真の王の強さに気づき始めたのだな」


その言葉に勇気づけられ、吹雪は自らの人生設計について語り始めた。


「我が目指す人生の第一は、『絶対にお金に困る生活はしたくない』ということです。そのために、ローンでこの城を買い、前澤株を持ち、NISAとiDeCoで備える。普段の生活は質素に。これで、生涯お金に困る可能性は減らしたつもりです」


彼は、老後の計画も語る。この城の一階を改装すれば、ささやかな商売もできる。

野菜を売るか、自販機を置くか。ささやかな利益で、生活費を稼げばいい。


「しかし、金だけでは意味がない。スキルと、そして何より『誰かの役に立てること』。それがなければ、魂は枯渇してしまう」


吹雪は、いつかこの城で誰かを雇い、共に働き、誰かの手助けをすることが、生きる意味になり得ると考えていた。


「ポイ活も、ただの小遣い稼ぎではない。腕さえ動けば、寝たきりになっても続けられる、実用を兼ねた趣味なのです」


「ブログも、趣味。しかし、どちらも孤独な趣味だ…」

吹雪の言葉に、わずかな翳りが差した。


その時、執務室のドアが開き、アリアが駆け込んできた。

「ふぶきん! 昨日の夢の話、もっと聞かせて!」

アリアは、吹雪が昨日、夢診断をして遊んでいたことを覚えていたのだ。


「昨日の夢はね、わたしがね、おっきな雲の上で、ふわふわの綿あめを食べてたの!」

彼女は、自分の見た夢を、まるで壮大な冒険譚のように、楽しげに語り始めた。


吹雪は、アリアの屈託のない笑顔を見て、ハッとした。


そうだ。

趣味とは、誰かとこうして語り合うことで、何倍にも楽しくなるのだ。

そして、「誰かの役に立つ」とは、大袈裟なことではないのかもしれない。


こうして、アリアの話を聞いて、笑い合う。

それだけで、自分は今、確かに誰かの役に立っている。


吹雪は、自分の壮大な人生設計の、最後のピースが埋まったような気がした。

お金、健康、スキル、そして、ささやかな人との関わり。


「アリア。その夢は、きっと吉兆だ。今日は良いことがあるぞ」

吹雪は、ア"リアの頭を優しく撫でた。

「え、ほんと!? やったー!」


「幸せの自家発電」という最強の土台の上で、彼はこれから、より安心して、より自分らしく、社会という舞台で生きていく。


魔王の、壮大で、少しだけコミカルな人生設計は、今、確かな輪郭を持って、輝き始めたのだった。

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