第十五話「直視できない」
少々遅れて申し訳ございません
王都東西通りの広場で二つの極大の火柱が上がると一拍置き、その二つの衝撃波と熱風が王城を両側から振るわせる。
当然王城の城壁の上にいた私にも。
「うわっ!?」
王都を包む炎と比較にならない爆風が押し寄せる。
反射的に顔を守ろうと腕で覆うが、予想していた程の衝撃は訪れなかった。
何が起こったのだろうと顔を覆う腕を退かしてみると、目の前にはエイスがいた。
「エイス!?」
「無事か」
「『無事か』じゃないわよ!アンタこそ何やってんのよ!?」
いつもの様に抑揚無く彼は言う。
しかし、その身体はたった数時間前ようやく意識不明の重体から目を覚ましたばかり。
その上これから彼にやってもらうことを考えれば余計な負担はかけられなかった。
「このくらい、どうと言うことはない。それよりもーー」
「え、きゃ!?」
エイス何か言おうとしたが、それを言い終わる前には私に覆い被さる様に身を乗り出してきた。
一拍置き、城壁に爆殺された魔物の肉塊や体液の雨が降り注ぐ。
その光景はつい先日魔王城から逃げた時の事を彷彿とさせる。
雨が止むと辺り一面が体液まみれになっていた。
エイスに庇われた私を除いて。
「良かった。無事のようだな」
「あ、ありがとう……」
その言葉にまた少し顔が赤くなりかける。
それに、いつもの様に変わらぬ表情だが、その言葉には確かに安堵のようなものが感じられた。少しずつ彼も変わってきているのだろう。
だが、それよりも先に確認すべき事がある。
エイスが離れると私の視界に飛び込んできたのは、以前として燃えさかる城下と爆発により吹き飛ばされただの巨大な穴と化した東通りの広場。
そして、その数を大幅に減らした魔物軍だった。
「上手くいったようね」
隣のエイスに言うと彼も無言で頷く。
そう、これが私達の策だった。
~数時間前~
私は教えて貰った策を父様達に伝えるため、エイスを助けながら王城の廊下を進んでいた。
意識を取り戻したばかりでまだ歩くのもの覚束ない彼を連れ出すのは心苦しかったが、彼の策を実行するにはどうしても彼自身の力が必要だった。
せめて肩だけでも貸そうとしたがエイスは「これ以上見苦しい所は見せられない」と言い許してはくれず、それ故私に出来ることは彼に随伴して手助けをすることだけだった。
そして、父様達がいる会議室の前で立ち止まり、その扉を開く。
部屋の中央には大きな長机が置かれ、その上には王都とその周辺が描かれた地図が広げられていた。
机の周りには父様や騎士団長、宮廷魔導師達、王国の大臣達が机を囲んでいるが誰もが難しそうな顔をしていた。
どうやら会議の進みは芳しくないようだ。
「ソニア!何故ここに!?それにエイス殿も!本当に意識を取り戻されたのだな!」
父様が会議を中断し部屋に入ってきた私達に駆け寄る。
この様子だと先ほど盗み見していた侍女達と母様は彼が回復したことだけを父様に伝えたようだ。
(良かった……)
少しホッとする。
もしあの事ーー目を覚ましたばかりの彼の行動まで知られていたらこれから話す事を聞いて貰う前にその場で乱闘騒ぎとなっていたに違いない。そうなればもう会議どころではなくなる。
もしかしたら彼女達は父様が怒り狂うのを見越して、敢えて伝えなかったのかも。
「良かった。それならばソニア、先ほど言った通りに母さんとエイス殿と一緒に抜け道で王都を離れるんだ」
父様の言葉に少々脱線した思考を元に戻す。
私は彼の回復を伝えるためにここに来たのではない。
「エイス殿も意識を取り戻して早々にすまないが二人を王都の外まで……」
「父様、話があるの。聞いて」
「何を言っている。そんなこと言っていないで早く逃げなさい!いつ魔物達が攻めてくるか分からないんだぞ」
「俺からも頼む。王よ、話を聞いてくれ」
「エイス殿……」
これまでとりつく島もなかった父様の勢いが少し弱まるが、それも一瞬だった。
「いいや、其方達は逃げるのだ、一刻も早く!特にエイス殿、其方には……もう戦う為の武器も、
異世界人が持つ無双の力も無いのだから!!」
父様の言葉に思わず苦い顔をしてしまう。
エイスが倒れた後、私は父様を問い詰めた。
『彼は私達以上に強靱な肉体を持つ異世界人のはず。なのに何故こんなことになっているのか』と。
それに対し父様は渋面を浮かべながら、こう答えた。
『彼にはそのような力は備わっていない。元から無いのだ』
異世界から召喚された人間は強靱な肉体、強力な魔法、特殊な能力と言ったこの世界の人間とは文字通り次元の違う無双の力を持つとされている。
だが、エイスには無双の力が無い。
確かに、これまで彼は単身でグランドスコーピオンやドラゴンと言った強大な魔物を倒してきたが、思い返せばそれらの魔物達を倒せたのは彼の持つ武器が強力だったからであり、彼自身の力ではなかった。
勿論それらの武器の性能を十二分に発揮し、魔物達を倒してきたのは紛れもない彼自身の能力だろう。
ならば、武器を抜いた彼自身の力はどうだろうか。
エイス自身、この世界に来る以前は生きるか死ぬかの環境に長年身を置いてきたこともあって身体能力も非常に高く、観察眼、洞察眼も鋭い。狭い路地裏で囲まれた時も易々囲いを突破していた。
日々の過酷な訓練で鍛え上げられたこの国の騎士でも彼に勝つのは難しいだろう。
武器がなくてもエイスは確かに強い。
だが、それはあくまで人間という種族の中での話。
昔、王城の書庫で読んだこの国の伝承では、異世界からやってきた人間はその身一つで強力無比な魔法を駆使し、常人の数十倍の膂力を振るい、時には万の軍勢を退ける文字通りの『超人』と書かれていた。
もし、エイスにそのような力があったならば、わざわざ武器に頼らずこれまでのトラブルを自分自身の力で何とかしていただろし、あれだけの重傷を負うこともなかった。
しかし、これまでそんな生物として疑いたくなるような力を見せたことはこれまで一度も無かった。
つまり、エイスには無双の力は無い。
要するに、彼は異世界人であるが『超人』ではなく、優れた肉体と頭脳をもった『ただの人間』なのだ。
では、なぜエイスは無双の力を持たなかったのか。理由は定かではないが、父様は、『いきなり見知らぬ世界に飛ばされた者ーー特に戦の経験無い者が、そのままその世界で生き抜いていくためにこの世界が与えるモノなのではないか』と言っている。
伝承等の記録に残っている異世界人達は、一貫してこれまでの人生で戦いの経験が無い者達だったそうだ。
そんな者達が常識、環境、おまけに凶暴な魔物が存在するこの世界で生き抜いていくのは困難を極める。
それ故、異世界人の無双の力は、彼らがこの何もかも知らない世界で生きてゆくために与えられた所謂『ハンディキャップ』のような物だと父様は仮説を立てた。
そして、その仮説を裏付ける出来事もあった。
父様は異世界召喚を実行する前、召喚に『ある条件』を付けたという。私を一刻も早く助け出したかった父様は、召喚した異世界人が戦いの経験が無い者では困る為『召還後、即この世界で戦える者』という条件を付けて召喚を行った。
その結果、最初から戦う力や武器を持っていた者、傭兵エイスが召喚された。
彼は元から十分すぎる戦闘技能、見知らぬこの世界にも動じない柔軟性を持っていた。
その為、彼には無双の力が宿らなかったのだろう。
この仮説はまだ推測の域を出ないがそれでも、私は強ち外れてはいないのでは感じている。
脱線したが現状、武器をほぼ全て使い果たし、重傷のの身であるエイスに出来る事とは無く、せいぜい護衛という体で私達と共にこの王都を脱するぐらいだ。
父様はとりつく島もなく私達を部屋から追い出そうとする。
このままでは話を聞いてもらえない。
斯くなる上は……。
「じゃあ話を聞いてくれるまで私達逃げないから!」
「な!?」
「ね、エイス?」
隣のエイスに視線を向ける。
いきなりのことで一瞬動揺したのか少し目線をを泳がせた後無言で頷いた。
「まったく……しょうがない」
父様は溜息をつきながら渋々了承してくれた。
「ありがとう、父様」
「それで、その話とは一体何だ?」
「策があるの」
「策……だと?」
「そう魔物達に勝てるかもしれない策をエイスが考えてくれたの」
「何!?」
一気に周囲がざわつき始める。
しかし、その反応は半信半疑と言ったところだ。
無理もない。今私達が置かれているこの敗色濃厚な状況から逆転しようなど、どう考えても無理なのだから。
だが、それでも自分達とは違う知識を持つ彼の策ならばと期待する者も少なくなかった。
「エイス殿、その策とは一体どういったものなのだ?」
「ああ」
彼はまだ少し覚束ない足取りで地図が広げられた机に向かい、私もそれに続いて机につく。 周囲の視線は自然とエイスに集まっていた。
姫を救い出し、魔物軍のドラゴンを倒した異世界人の策に皆が期待を込めた視線を送る。
そして、エイスは説明を始めた。
「簡潔に言うと、
魔物軍ごとこの王都を燃やしてくれ」
「「「は!?」」」
その場にいた私とエイス以外全員の声が重なる。
「バカ!それじゃ簡潔にしずぎでしょうが」
「……それもそうだな」
エイスは思案するように、顎に手を当て少し間を開けてから頷く。
当然だ。
私の言葉に元々会議室にいた全員が安堵する。
父様が咳払いをし、気を取り直すとエイスが説明を始める。
「先ず、市壁にある東西南北四つ門から外の魔物達を全ての城下町に引き込む。その後、各門に設置してある緊急用の落とし扉を起動させ魔物達を市内に閉じ込める」
落とし扉は、王都を囲む市壁の東西南北四つの門に設置された特殊な扉のことだ。
王都の市壁には東西南北に壁内外を繋ぐ大きな門がある。それらは普段、両開きの扉で開け閉めされているが、外から敵が攻めてきた際、侵入を防ぐ為の扉がもう一つ門の内側にある。
それが落とし扉だ。
落とし扉は普段門の開け閉めに使っている扉とは違い、特殊な岩石で出来ており、並大抵の魔物ではびくともしない堅牢さだ。
緊急時には王城から魔法による遠隔操作で市壁内部にあるソレを起動。落下させ門を閉じるといったものなっている。
「閉じ込めた後、王都全体に火を放つ。予め油等の引火性の強い液体を撒いておけばすぐに火を回すことが出来るだろう。だが、一カ所か二カ所火が回らない場所を敢えて作っておく」
「何故だ?そんなことをすれば火を避けるために魔物達がそこに集まってしまいますぞ」
エイスの発言に父様が疑問を投げかける。
その疑問にエイスは頷き答える。
「その通り、奴とて焼かれることを好む者はそういない。恐らくその二カ所には魔物軍の
大半が集まるはずだ。
そこを、コレでまとめて爆破する」
そう言うとエイスは一つの手のひら大の円盤を取り出した。
その場全ての視線がエイスの持つ円盤に注がれる。
「それは……?」
「地雷だ」
「じらい?」
恐らく初めて聞くであろう単語に皆の頭上に疑問符が浮かぶ。
「これは地面に埋め、その上を通過した者を爆破する俺の世界で使われていた兵器だ」
「とんでもない威力よ。魔王城から逃げ時に使ったんだけど、その時には7000体くらいいた魔物を一瞬で倒しちゃったんだから。あの威力なら敵の戦力をかなり削ることが出来る
し、もし、生き残ることが出来たとしても無傷では済まないわ」
私の証言で場の空気が沸き立つ。
「だが、今ある地雷はここにある一つだけだ。奴らを倒すには一カ所に付き15~20は必要になる」
「な、それではまるで足りないではありませんか!」
確かに、このままでは威力不足な上一カ所しか爆破できない。
「それ故に、皆にやってもらいたいことがある」
「それは一体何だ?」
エイスの言葉を私が継いだ私に視線が集中する。
そう。ここがこの策において一番の要となるところ。
これが解決できなければ、この策は実行に移すことさえ出来ないまま水泡に帰すことになる。
「皆にやってもらいたいこと。それは、
ーー異世界召喚だ」
エイスの発言に一瞬の静寂の後、会議室に来て一番の響めきが起こる。
「い、異世界召喚だと!?」
「そうだ。俺が元の世界から召喚された時、俺がいた場所、向いていた方向から斜め左後方に2M程のところにある『物』を召喚して欲しい」
「物……?いや、何を言っているのだエイス殿は!?」
「そんなこと今出来ると思っているのか?」
室内にはエイスの説明に様々な言葉が飛ぶが殆どが非難、否定めいているものだった。
「エイス殿、異世界召喚とはどういうモノなのかーー」
「わかっている。複数の高度な魔導師が、限界まで溜め込んだ魔素を専用の魔方陣に詠唱と共に流し込むことで初めて発動できる極めて難易度の高い魔法のことだろう」
苦言を呈そうとする宮廷魔導師の言葉をエイスが遮る。
「ならば分かりますでしょう、それほどの魔法を発動させる為、必要な魔素を収集するのに一体どれだけの時間が必要なのか。貴方を召喚するの為の魔素を収集するのに10日間もかかったのですぞ!」
魔法を使うには空気中に漂う魔素をその身に吸収しなければなら無い。
そして、発動させる魔法の威力、規模、難易度に比例して魔素の量も増える。
異世界召喚は大昔の伝承に残るほどの大魔法。発動させるとなれば膨大な量の魔素が必要になり、その収集にはまた膨大な時間が必要になる。
いつ魔物軍が攻め込んでくるか分からない今、私達には魔素を集めている時間は無かった。
だが、
「お前達の頭の中は空か。魔素ならば市壁の外に大量に転がっているだろう」
「へ?」
エイスは地図上の市壁外を指でトントンと叩く。
「魔物からは魔素が詰まった魔力石がとれる。市壁の外に先の戦闘で倒した魔物達の死骸が幾つも転がっているから、その中から使用可能な魔力石を幾つか回収できればーー」
「一度くらいならば召喚はできる可能性が……」
今度は宮廷魔導師がエイスの言葉を遮る。
だが、その顔は先ほどまでの否定、非難のこもった苦い表情から徐々に変わっていく。
そして、その空気は少しずつ周囲に広まっていった。
「それで、俺の言った『物』の召喚は可能か」
「はい、恐らくは可能かと。エイス殿を召喚した際の魔法の痕跡を辿れば、こちらの世界と貴方の世界ーー貴方を召喚された場所からある程度離れた場所の物を召喚することは出来ると思います。そこには何があるのでしょうか?」
「俺の武器庫だ」
「武器庫ですか!?」
「ああ。俺は次の依頼を受け、そのまま任務に行けるように武器庫から装備を調達していたところ、この世界に召喚された。だから、俺がいた場所の近くには俺が備蓄した武装が多数ある」
「じゃあ、その中に……」
「当然地雷もある」
その一言に一気に室内は響めきが広がる。
その中心で私とエイスは父様と向き合う。
「父様、策を提案しておいてこんな事言うのは気後れするけど……この策には穴が幾つも
あるわ」
「ああ、そうだな。魔物が壁内に入って来なければ失敗。誘い込んだとしても市内の様子がおかしいと思われ市内から出ていかれても失敗。地雷で数を減らせなければ失敗。仮に上手くいったとしても焼け落ちた城下は当分の間は使い物にならなくなる」
魔物達を倒すために領民が住まう城下を燃やすこの策戦は成功する確率は低い上に、多くの損害が発生する。
この策はあまりにも危険が多すぎる。
その為か、会議室内にはまだこの策に納得のいっていない表情の者達も一定数いる。
「他に良い策があるならそっちを優先させたほうがーー」
「いや、やろう!!」
「「「な!?」」」
父様に反対派の者達が詰め寄る。
「国王様本気ですか!?」
「考え直してください!」
「もっと他に手があるはずです!」
だが、反対派を押しのけると父様が私に問いかける。
「一つ聞かせてくれ、ソニア」
「なに、父様?」
「お前は王都を燃やすことについてどう考えている?」
王都を、故郷を燃やすことをどう考えているか。
「正直なことを言うと、そんなの嫌だけど……。でも、このまま城下の皆が殺されるのはもっと嫌!」
「よく言った!さすが我が娘!!」
父様は満面の笑みを浮かべる。
そのまま抱きついてこようとしたためヒラリと躱すと数歩つんのめった。
「そのとおり、『民あってこその国』それこそ我が国訓!王都など生きてさえいればいくらでも立て直せる!」
会議室にいる全員に聞こえる程の声量で父様の声が響く。その声に次第に反対派の声も小さくなる。
「ここまで攻められておきながら代償無しに勝てるわけはない。城下の市民には後に十分な補償を取らせる。
策は決まった!時間が無い、皆の者早急に準備に動け!」
「「「ハッ!!」」」
父様の声に会議室にいた全員が弾かれたように動き出す。
「父様……本当に良かったの?」
「ああ、実は我々ではどんな手を打てばこの状況を脱することが出来るか考え倦ねていた。だが、お前達のおかげでようやく光明が見えはじめた。
ソニア、エイス殿、ありがとう」
周囲が慌ただしく動き回る中再び頭を下げた父様にまたもや皆が困惑するのだった。
その後、市壁外の魔物の死骸やエイスの倒したドラゴンから採取された魔力石により二度目の異世界召喚が行われ、地雷を初めとする大量の異世界の武器を手にすることが出来た。
それと同時に住民の王城への避難も完了。
騎士団とエイスの作戦中の行動について再度確認、修正を行う。東西の広場に地雷を設置し準備を終えた。
~現在~
依然として燃えさかる城下を私達は王城を囲む城壁の上から見渡す。
ふと、横に目をやるとエイスが俯くように視線を下げていた。
「どうしたのよ?」
「いや、なんでも……」
「もしかして、まだあの事気にしてんの?」
実は二度目の召喚を終えた直後、エイスがある推測を語ったことからまた一悶着あった。
状況証拠からもそれ自体は的外れではないだろうと私も父様達も思っている。
だが、エイス自身は以前ーー魔王城から脱出した直後、魔王や魔王軍の動きを読み違えた事があり、それが原因なのかどうにも自分の推測に懐疑的になっているようだ。
「大丈夫よ、色々あったけどなんだかんだでみんな納得してくれたし」
「だか……」
もう済んだことなのに。どうやら彼は過去の失敗を引き摺るタイプのようだ。
「確かに、アンタは推測を外してるけど、たった一回じゃない。
私は信じてるよ。エイスの考えも、エイスのことも」
そう言うと彼は俯いたままそっぽを向いてしまった。
城下では地雷の爆発に耐えた魔物、火炎の耐性があった為広場に集まらず爆発に巻き込まれなかった魔物等、生存している魔物は数十ほど残っていた。
「そろそろね」
その時城門から騎士団が現れた。
この作戦において騎士団の役割は2つ。市壁外の魔物を城下へおびき寄せるための囮役と、爆発から生き残った魔物の殲滅。
囮役はその名演技によって魔物達を城下へと誘い込むことが出来た。
今飛び出してきたのは殲滅部隊だ。
数は合流した囮部隊と合わせて1200程。残りは王城の防衛だ。
対する魔物達の数は数十。周囲の火炎で動きを抑制されている。
だが、それは騎士達も同じだ。彼らも炎から身を守りながらの戦いになる。
苦しいだろうが何とか頑張って欲しい。
心の中で祈っていると、正面ーー東の市壁から轟音が響く。
何事かと持っていた双眼鏡を除くと、そこには砕かれた東の市壁と、
巨人がいた。
ギョロリとした一つ目。肌は鉄色。手には巨大な棘の付いた金棒。腰には何かの毛皮のような物を巻いている。
そして、城下をすっぽり覆う市壁が胸ほどにしか届かない程の巨体。
間違いない。以前読んだ魔物の種類について記した本にも載っていた。
「鋼鉄巨人」
その名の通り鋼鉄の皮膚を持つ巨人の魔物。
ドラゴンのように多彩な魔法や、飛行する力は無いが、その膂力によって生み出される破壊力はドラゴンを凌駕すると言われている。
そして、事前に騎士達から聞いていた話からあの巨人が私達の『相手』だと自覚する。
「いくぞ」
「ええ」
私達は頷き合うと城壁から降り、城門近くに停めてあったバイクに乗ると巨人のいる四壁を目指す。
この策戦において私達は幾つかの役目を持っていた。
これから行うのはその一つ。
それは、指揮官級魔物の討伐だ。




