32
〈シーラ視点〉
私達はクレア先生、リオンと別れ、園庭に向かった。カイルが私に手を繋ごうとするので、丁重にお断りした。隣には鼻の下が伸びてるカイルが歩いている。
ーーはあ、リオンだったら良かったのに。
学園訓練場には既に全学園生徒が集まっている。カイルとは属性が違うので集合場所が違うため途中で別れる、私は光魔法科の場所に向かった。1年生が整列している場所を探していると私に気づいて手を振るお兄様の姿があった。
「シーラ!!遅かったけど何かあったのか?リオンくんの姿はなかったみたいだが。」
「お兄様実は、、、。」
「そうかクレア先生がね、、、、シーラ1年はあそこの列だ。頑張れよ。」
「はい、お兄様。」
お兄様はそう言って3年生の列に戻っていった。私の家族ラインハルト家はリオンの事が大好きなのだ。勿論お兄様も応援してくれている。頑張るぞと握り拳を胸に当てた。
ただシーラには不安もある。最近シャロンが料理を始めた事だ、それをリオンに食べさせたいと張りきっている。私に料理は無理だ。何か手を打たないと。それにアイリス、やたらとリオンに抱きついている。正直羨ましい。レーナ先輩とクレア先生はよく分からない。
ーーはあ。問題だらけね。
ーーんっ、あの人は蒼揮騎士団長のジェバル・アークス様だわ。
蒼揮騎士団長のジェバル様が全生徒の前で挨拶すると、そのまま騎士団の指示に従い私達はゴブの森に向かった。
ゴブの森まで徒歩で数時間の距離しかない、王都から出るとゴブの森のある方角の先に砂煙が薄く立ち昇っている。
既に兵士はゴブリンと戦闘になっているみたいだ。
学生を率いての行軍となったが、蒼揮騎士団は手際よく指示を出し誰一人遅れる事なくゴブの森から数百メートル離れに構えた簡易の駐屯所に到着した。
ーーもうリオンは合流したのかしら。
ふと、無魔法科を見てシャロンをみつけたが、リオンはいない。シャロンもリオンを探して辺りをキョロキョロ見回している。ふと、目が合ったので手を振った。
ーーリオンがまだ来てない?
近くに行くと負傷した兵士が数百人程、駐屯所で横に寝かされている。ゴブリンは倒されると粒子となって消えていく為、倒れているのは王国兵士しかいない。今もどんどん負傷兵が担ぎ込まれて行く。
直ぐにクレア先生率いる神聖魔法科が駆けつけ事にあたっている。神聖魔法科だけでは手数が足りず光魔法科も半分の生徒は負傷兵の治療にあたるみたいだ。
私も治療の方になり、クレア先生を見かけたのでリオンの事を尋ねようかとも思ったが、負傷兵を見るととても話せる雰囲気はなかった。
辺りを見てるとゴブリン集団の数に押され、まだゴブの森すら近づけてない様子だ。だが、上手く囲い込み近隣への被害は抑えられている。
後方に厄介なゴブリンメイジの集団がいて、前線が押し込まれていたが、アーサー王子とジェバル様の率いる騎士団が後方に回り込みゴブリンメイジを叩くと王国兵士が前線を押し上げだした。
生徒達は先生の指示で魔法攻撃を繰り返し、王国兵士が少しずつゴブリン集団を森へと押し返した。
アーサー王子の指揮の元、少しずつ戦局が好転していった。
〈王国サイド〉
王国作戦会議室
「陛下、冒険者ギルドに要請は良かったのですか!?」
「ああ、今回はよかろう中立で他国にも展開している冒険者ギルドへの要請は我国の威信に関わる。他国から軽く見られてしまうわ、もしもの時はあの少女ユイ殿に頼むとする。」
「そうで御座いますか、ではユーナ様の件は良かったのですか?あれほどお止めになったのに、、、ユーナ様はまだあのスキルを完全には使いこなせないのでは?」
宰相ハウスタが国王の横で頭を抱えている、国王は黙りこめかみを押さえ首を振った。
「うっ、うむ、しかたないじゃろ、まさか王立学園の生徒を連れていくとは思わなんだ、連れ出した生徒は誰か調べはついておるか?よもやリオン・ガーディンじゃあるまいな。」
「はい、まだ学園から報告は上がっていませんね。さすがにないと思われますが、私からも再三関わらないようにお伝えしておりますので。」
「うむ、そうじゃのう天地族に通達した手前、何を言われるか分からんからな。特にラインハルト天上爵家がな、、ただ。」
「ただ何か?」
「ハウスタよ、ユーナだけじゃなくエリーナやキュロット、アーサーまで出てしもうたわ。」
何故ワシの言うことを聞かないんだと呟くと国王が頭を抱えてうな垂れている。
「出たというと、討伐隊に参加されたのですか?エリーナ様やキュロット様、アーサー様までもですか?」
「そうなんじゃ。残っておるのはレオンだけじゃが、アーサーはゴブリン討伐じゃからまあいいが、エリーナやキュロットはよりにもよってオーク討伐に参加しよったわ。全く、、ワシも若いときはじっとしておれんかったからのぉ、やはりこれはワシの血か?、、、血は争えないものよ。」
「エリーナ様やキュロット様は、、この国の騎士団長よりも強いですし、自分の部隊もありますから、、まず大丈夫でしょう。」
宰相が遠くを見ながら国王に答えた。
「うむ、それもそうじゃのう。」
「アーサー様は蒼揮騎士団長がついています。それに学園の生徒が後方で支援しています。それに学園の先生方も。そして権力のある天地族の介入もあり、結果兵力も一番ある部隊ですので心配ないでしょう。ただ一番血の気が多いレオン様だけが残っているのが不思議ですな。いや、流石王太子ですな。」
「いや、そうでもないんじゃ、あやつ1年前に突然現れた異世界人の少女ユイ殿に入れ込んでおる、、、だが言いにくいがレオンには無理じゃろ、全く相手にされておらんわ。」
「そうでしたか、確かにユイ殿を鑑定眼鏡で確認した時には腰を抜かしたもんですな。世界を救った勇者として言い伝えられきた異世界人が本当に存在したのですからな。そしてその戦闘能力の高さは勿論その美しさにも、、。」
「そう言えば王宮神聖魔法師クレアが連れて来たのも異世界人じゃったのう、男性みたいだったが。ショウヤ殿と言ったな。」
「はい、鑑定眼鏡で確かめましたので、間違いないかと、、ユイ殿と合わせて見れば何か分かったのでは?」
「うむ、ワシもそう考えたのじゃがな、レオンが猛反対したのじゃよ。」
「はあ、レオン様がですか、、、まあクレアが上手くやってくれて王立学園に留まってくれたみたいですけど。」
「うむ、異世界人の戦闘能力の高さは貴重だ、それをわざわざ他所の国に手放すのは惜しい。逆に脅威にもなるからな。」
「はいそうです。今回のオーク討伐隊に加わってくれたと、先程クレアが伝令を寄越して来ました。ショウヤ殿との信頼関係も順調かと。これでエリーナ様やキュロット様も更に安心出来ましたね。」
「うむ、あわよくば、、、。」
コンコンと会議室の扉を叩く音に返事をすると、1人の騎士が一礼し入室してきた。
「申し上げます、アーサー様と蒼揮騎士団長ジェバル・アークス様率いる討伐隊が見事キングゴブリンの討伐に成功いました。」
「おお、流石じゃのう、して被害の方は?生徒達は?」
「はっ、王国兵士死者840名、王国騎士死者125名です、学生達に死傷者はありません。魔物の軍勢は総数5000にものぼりました。キングゴブリンを筆頭に、ジェネラルゴブリン、ゴブリンナイト、ゴブリンメイジ等上級クラスの魔物まで出現していたしました。」
「うむ」
「アーサー殿下の迅速な対応の結果。近隣への被害はありませんでした。また学園生徒達の魔法支援の活躍も目覚ましいもので全ての負傷兵は既に治療済みです。アーサー殿下も軽い負傷はしましたが既に完治しております、皆に休養を与え明日一番で戻るとの事です。」
「相、分かった、ご苦労だったな下がっていいぞ。」
「はっ!」
騎士が敬礼をして退室していった。
「思ったより死者が多いな、、いや、それだけすんでよかったと思うべきか。」
「はい、それだけ活性化が進んでおりました。致し方ありません。」
「うむ、、、後はオークとコボルトか、距離が離れているからのお、まだ、戦闘にすら入っておらぬだろうよ。」
「国王様、大変です」
ドカ、ドカッ!!っと一人の騎士が息荒く駆け込んできた。
「何事か!!」
「数十人の魔族が北部上空からこちらに攻めこんで来ているのが確認できました。このままでは、ものの数十分程で戦闘になります。」
「何!?まことか!!」
「伝令ご苦労、そのまま直ぐにユイ殿を呼んで来てくれ。」
「はい、畏まりました!!」
「まさか、兵が出払って戦力が落ちている今に魔族が攻めて来るとは!?」
「それを狙っての襲撃かと、以前クレアときた異世界人のショウヤ殿の言った事もあながち間違いではなかったな、方角からしたらザンクロス王国の位置になりますな。」
「うむ、何を狙っておるだ、ザンクロス王国は。」
◇
「おい、そこのお前どうしたんだ、そうなに慌てて、それにこの先はユイ殿の部屋だぞ。」
「今は大事な、、はっ!!これはレオン王太子殿下」
「いいから何故、急いでユイ殿の部屋に向かってる。」
「はっ!!国王様の命令でユイ殿を作戦会議室まで呼んで来るようにと、、、その、、魔族が攻めてくるのです。」
「くそ、、親父のやつ、、そうか分かった、足を止めて済まなかったな、行っていいぞ。」
「はっ!!失礼します。」
急ぎ作戦会議室に向かうレオンと、入れ違いに一人の騎士がユイの部屋の扉を叩く。
◇
「ユイ様の髪は凄く綺麗ですね。」
「そう、ありがとう。ソニ」
私は鮎川唯クイール帝国にクラスみんなと召還されてしまった。
そしてその日私の大好きな光一君が居なくなり愕然とした。私は直ぐに追いかけようと思った。でも周りからの反対もあり、まずは生きて行く術を先に身につけないと追いかけることも出来ない事に気がついた。そして私が光一君を守るってやると。
必死に力をつけ、いよいよ明日には追いかけようと決意したその日に天魔族との戦う事になった、でも私達は天魔族の数の多さに成す術もなく負けた。
そしてクイール皇帝に強く促され魔法結晶に入った。何でも、異世界人なら少しの時間、結晶に入れば魔力が増幅されて更に強くなれると言われた。私は光一君を追いかける力が欲しかった。
でも結晶に入ると逆に力が抜けていったわ。だんだんと瞼も重くなり開けていることが出来なくなった、これで本当に強くなれるの?とだんだんと意識が遠退いて行く中、思っていると、私の危険察知スキルが発動していることに気づいた。
このままでは行けないと思ったが、気がつくのが遅かった。私は成す術がなく途方にくれて私は泣いた、意識がどんどん遠退いていく。、このまま終わりならせめて最後に光一君に会いたいと思い祈った、、、そう、何度も何度も。
そして気がつくと数百年後のママール王国郊外で倒れていた、訳もわからず不審者と牢屋に入り、急に勇者と呼ばれたり、とそして今は紆余曲折したが手厚くこの部屋に匿われている。
レオンと言うこの国の王子がやたらと私にまとわりついて正直抜け出そうかと何度となく思っているけど、行く宛のない私は何も出来ずにいた。
私はただ光一君の写真を見つめるだけ光一君の写真は収納スキルで大事にしまっている、、これだけが今の私の宝物だ。
昔の事を思い出していると、手に持っていた光一君の写真をパラッと落としてしまった。
「あっ、。」
床に落ちた写真をソニが手に取り、マジマジと見てにこりと微笑み私に戻してくれた。
「あら、ユイ様もリオン・ガーディン様をお慕いしているのね、、でもこれ凄くよく描けた絵ですね、どこ絵師が描いたものですか?何処で手には入るのですか?」
怒涛の如くソニが尋ねてくる。
ーーえっ、リオン・ガーディン、、様?って誰?この写真は光一君なんだけど、そっくりっなの?
「リオン様?」
「凄く素敵よね、私の知り合いが怪我をして、その付き添いで学園に行ったの。王立学園の学生が無償で治療している治療院だったわ、、その時に炊き出しをしていたのよ。」
「炊き出し、、ですか?」
「そう、その炊き出しも美味しかったし、みんなに料理を配ってくれてどんな人にも嫌な顔1つせずに、私にも笑顔で手渡してくれて素敵だったわ、、ああ、その絵、本当そっくりだわ、、ユイ様、、。」
ソニがチラリと私の手に持っている光一君の写真に視線を落とした。
「ソニ、ダメよこれはあげないわよ。」
ーーこれは、絶対にダメ私の宝物何だから。
「はあ、そうよね。」
ソニが、がくりと肩を落とした。そんなにそっくりだったのだろうか、ユイは写真に視線を落とし、ふと考えそしてリオン・ガーディンに会ってみたくなった。
「ねぇ、ソニ!!そのリオン様は学園に行けば会えるの?」
「へっ、ユイ様は変なこと聞きますね、そうですよ今は王立学園の生徒ですもの、ご存じだったのでしょ?」
ーーそ、そうよね。上手く言わないと変に思われるわね。
「も、勿論知っていたわよ。」
「はあ、いいなあ、ユイ様。その絵師紹介して、、」
ソニの話を遮るようにコンコンと扉をノックする音がした。
「はい、どちら様でしょう?」
「私は王国騎士です、陛下より伝令を預かって参りました。」
ソニが扉を開けると、騎士は直ぐに陛下からの言葉を伝え、退室していった。
「じゃ、ソニちょっと行って来るよ。」
「ユイ様、、、お気をつけて。」
「うん、大丈夫よ。」
私、リオン様に会って見たくなったわ、もしかしたら私の〈思いスキル〉で光一君のいる所に来たんじゃないかとずっと思っていたのよ、待っててね光一君!!逢いにいきます。
◆レオン・ママール【戦闘能力280】
剣術:上 盾術:上 二刀流 剛力 光魔法:中
〈王族固有スキル〉 魔手(魔力の腕が2本発現する)
ーーーーーーーー学生証ーーーーーーーーーーー
異世界:重の勇者
名前 鮎川 唯 年齢 17歳 女性
戦闘能力 350
重力魔装+800《1150》
《スキル・魔法》
・重力魔法:極 ・光魔法:上 ・思い
・剣術:極 ・収納 ・気配察知 ・危険察知
・魔力回復:中
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ーーーーーーーギルドプレートーーーーーーー
ギルドランク E 王立学園1年生
名前 リオン・ガーディン
年齢 15歳 男性
戦闘能力 672
身体魔強化時【1344】
身体魔強化+無属性身体強化時《2016》
暗黒魔装+1000《3016》
《スキル・魔法》
隠蔽・暗黒魔法:極
隠蔽・魔神:上
隠蔽・同属魔法発動
隠蔽・合成魔法
隠蔽・並行魔法
隠蔽・武神:中
隠蔽・二刀流
隠蔽・忍
隠蔽・超人
隠蔽・身体魔強化
隠蔽・毒耐性:上
隠蔽・大地の加護
・神聖魔法(魔神)
・料理
・収納
・鑑定:下
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