004 大豊作の高校生召喚とおっさんの失望レベルの鑑定結果
「ミツル・ミナイ…。創薬の勇者…、ポ様々な薬を生み出す…」
鑑定士から渡された紙をリブリスが読み上げだ。
「おおっ、薬袋氏は薬を生み出す能力でござるか!」
「デュフフ…。我ら四人、望んだ能力!しかも勇者」
陰キャっぽい四人組が喜び合っている。
「なんと…。これで三十人全て勇者…!」
「めでたい!まことにめでたい!」
「いやあ、これも陛下の御威光でしょう!」
やんややんやと国王を持ち上げる貴族達、その顔はやけに楽観的なお祭り騒ぎ。まるで年末の忘年会で豪華景品が連発しているような盛り上がりだ。とても魔王の脅威に怯えている国には見えない、太平の世に慣れ平和ボケしているようにすら見える。
まあ、それも分からなくはない。剣道部の生徒は撃剣の勇者、化学部で何なら爆発事故を起こしそうになった生徒は爆炎の勇者…などと様々な素質のある勇者が揃っているのだ。有名なキャラクターの言葉を借りれば勇者のバーゲンセールかと言いたくなるくらいだ。
「残るは…」
国王がこちらを見た。
「随分と歳が離れているようだが誰ぞの親か?」
「いや、見た事ねえ」
青いTシャツのたしか岬羽異という男子生徒が応じた。
「ふむ、まあよい。リブリス」
王がリブリスに声をかけた。
「はっ、陛下。これ、鑑定を」
リブリスがそう声をかけると襟元に二本線の入る服を着た男がこちらに向けて呪文を唱え手をかざした。俺の体にボワァ…と淡い光が満ち始める。その俺を見て襟に一本線の入った文官が手元の紙に羽ペンでサラサラと書き始める。
どうやら二本線の文官が一人前の鑑定士、そして一本線の文官は見習いとかあるいはアシスタントのような位置付けなんだろう。その一本線の文官が書き取りを終え相変わらず恭しい動作でリブリスに紙を渡した。
「カツジ・ワタライ…商人…」
ザワッ…。
戸惑っているようなざわめきが生まれた、今まで俺を見ていた国王が慌てたようにリブリスの顔を覗き込む。
「なんじゃと!商人!?ま、まことかッ!?まことに商人なのか?勇者ではなくッ!?」
「はい」
短く返事をしてリブリスはさらに続けた。
「カツジ・ワタライ…、商人。宿屋を営み…」
「も、もうよいッ!!その方ッ!?まことに宿屋なのか?」
こちらを指差し唾を飛ばして国王が叫んだ。
「あ、ああ。確かにそれを仕事にしてるが…」
「くそ、ハズレではないか!身ひとつで来た宿屋なぞ何の役に立つか!建物を持たぬ宿屋など何の意味もないではないか!」
「おお、確かに!」
「泊まる部屋を持たぬ宿屋など何の役にも立たぬ」
貴族達が王に追従する。
「ええい、なぜあんな歳のいった者を召喚されたのじゃ!」
「ああ、それは俺がその子達がのるバスの横にいたからだろ」
「なに?バスだと?バスとはなんじゃ?」
「何人も乗れる馬車みたいな物か?俺がいたすぐ横を通り過ぎていこうとしたんだよ。そしたら吸い込まれるようにして…」
「ぬううう…、せっかくの召喚の儀でありながらこんなハズレを引き当てるとは…」
国王は歯噛みして悔しがっている。
「なぁーんだ、あのおっさんハズレだったの?勇者でもなんでもなく?俺達と違って?」
青いTシャツの岬という男子生徒が馬鹿にしたような目でこちらを見ながら言った、わざわざデカい声を張り上げながらだ。
「つーかさ、俺ら退屈なんだけど?ずっとこんなトコで立ちっぱなしだしよォ…。それに週末には練習試合があるから戻んなきゃなんねーしよ」
「おお!それならその魔法陣から出てワシについて参れ。魔王を倒せば元の世界に帰還出来るからの。それに酒や料理の用意もある、夜は美男美女を呼ぶ事も出来るぞ。そなたらをアクイアーリ王国の正式な勇者として迎えようぞ!」
「なにっ?そういう事は早く言えよ!さっさと行こうぜ」
「マジかよ、ギャッハッハッ!!ハナシ、分かってんじゃーん!!」
青Tシャツの男子生徒、岬羽異が王の方に歩いていこうとする。腕を絡めているリコという女子生徒もついていく形になる、続いてお調子者のヤマモトシゲルという男子生徒が笑いながらついて行こうとしている。俺は慌ててそれを止めようと声を張り上げた。
「待て、行くなッ!!行ったら君達は…」
「ハッ!!役立たずのハズレおっさんが何言ってんだよ。歓迎されてる俺らが羨ましいってかァ?おい、みんな!あんなの無視だ。行こうぜ!」
その言葉に応じてかスタスタとこちらを見向きもせずに言ってしまう者、こちらを少しは気にする素振りは見せたけどやはりついていく者、既に魔法陣から出てしまっている者もいる。俺はさらに声を張り上げた。
「召喚魔法ってのはあくまでただ呼び出す魔法だ!そこから召喚した者に力を貸すかどうか、あるいは力を貸さずに物別れに終わるかは契約条件次第だろ!嫌なら日本に帰る事だって…」
「はあ?何言ってんだ、オッサン?そんなの出来る訳が…」
「出来るに決まっている!もし自分が召喚した相手が手に負えないような魔物だったら?呼び出した次の瞬間、食い殺されるかも知れないじゃないか!檻も何も無い所でライオンが出てきたらどうなるッ!?そのまま飛びかかられたら…、お前ら助かるのか?だからこの魔法陣は相手と自分を完全に分ける結界なんだ、相手に手出し出来ない代わりに自分も手出し出来ない…!そういうもんなんだ!」
「お、おいっ!俺達、出ちまったぞ!?」
「あっ…」
見渡せば高校生達は全員魔法陣から出てしまっていた、もう魔法陣内に残っているのは俺だけになっていた。




