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1-9.肉、肉、肉!お肉を食べたい

 翌日からは常設依頼の食肉採集を狙う。

 食堂へ肉持参なら自分も肉が食えると聞いたのだ。


 ここには俺の知っているような家畜はいない。魔物がいる牧場に放すなんてできないためだ。

 今飼われている動物も最初は軍用。騎士の騎獣として飼われ始め、それから輸送用になった。この辺で飼育が民間に移行されている。なので食肉用に飼育するのはまだ一般的じゃない。


 一番多く飼われているのが某ゲームの黄色い走る鳥と爬虫類を混ぜたようなヤツ。黄色くはないが。

 二足馬(チョーレィ)は昔から人を乗せて運ぶため飼われていた。

 繁殖機会も多く条件さえ揃えば一年中卵を産む。

 そのおかげでチョーレィだけは例外的に食用として飼われていた。


 チョーレィの積載量に問題がある場合は四足馬(ココ)を使用する。

 俺の知っている四足の馬じゃない。サラブレットみたいに細くもないしとにかくデカい。そして皮膚が硬い。

 シマ馬とサイを合わせ1.5倍したような生き物。


 家畜としてはこの2種類が最も多い。

 他には地域毎に運搬用に飼われているのがいる。ここだと大きな亀、おとなしいので飼いやすい。


 なので街に運ばれる肉の供給ルートは2つ。

 1つは食用に飼われたチョーレィ。

 生産量が決まっていて卸先は高級レストラン。庶民が口にすることはほとんどない。


 2つ目は冒険者が狩る魔物の肉。

 この世界の住人は俺も含め魔力を'旨い'と感じる。

 魔物の肉は癖は強いが肉には魔力が残っているので意外と食べられている。魔力量の大きさは魔物の強さに比例するので、強さによって扱いが変わる。

 もっとも肉の癖の不味さを魔力で補えないと見向きもされない。ゴブリンがそれに当たる。


 魔石を持つ魔物と持たない獣と分けられていて、食用に向いている魔物や獣は冒険者の常設依頼になっている。肉確保のためだ。


 以上が酒場で何も知らない少年に酔っ払いが気持ちよく話していた内容。


 生息地は前に確認していたのでギルドによらず直接向かった。

 獲物は角飛び(グッカーラ)。角飛びのサイズは色々いるが今回は兎サイズ。

 街の近くにいるのはこのサイズ。


 この世界にのんびりした草食動物などいない。それぞれ大きい、早い、強いという生き残り戦略を持っている。

 角飛びは1本の鋭い角と逃げ足という武器で生き延びていた。


 シュリーゲンに空から探してもらい見つけたら狩る。

 ボトリスは服の中で空間把握能力で監視、空からの見落としと奇襲に備えた。

 無論、身体強化魔法も発動させている。


 角飛びはジャンプしてその角で刺してくる。

 直線的に飛ぶので避けるのは難しくない。ただし1匹ならの話だ。

 彼らは集団で行動する、連携して攻撃するらしい。


 目の前の囮がジャンプ。こいつは俺の攻撃が届く距離には入ってこない。

 こいつに反応すると死角から数匹が急所に飛び込んでくる仕組みだ。

 ボトリスがいるので俺に死角や奇襲はきかないが捌ききれない。何体かに体当たりされる。

 身体強化のおかげで怪我はしないが、仕留められない。


 ん!

 もしかしてこの攻撃は当たってもダメージを受けない?

 体当たりを無視して、確実に1匹ずつ仕留める作戦に切り替えたら成果が出た。


 数匹倒すと自分たちの戦法が使えないと察したのか一斉にバラバラに逃げる。

 こんなことが繰り返され4グループ11匹を仕留めた。思ったより時間がかかった。


 街に入ったのが夕方、思ったとおり冒険者ギルドは混んでいた。

 日があるギリギリまで冒険者は働く、夕方が一番混む。


 俺は待とうかと考えていると

「角飛びか。直接肉屋に行けばいいだろう」と近くの冒険者に言われた。

 そうか角飛びは常時依頼、討伐報酬が無いし報告で得られるのは進級時用の貢献度くらい。しかも角飛びではたかが知れる。


 ここで言う肉屋はギルド奥の解体所だ。

「ありがとう」と教えてくれた冒険者に片手を上げて肉屋に向かう。


 解体所に向かうと「そいつの解体か。今なら大物来てないからいいぞ」

 声をかけてきた男に近づき、獲物を見せる。

「大収穫じゃないか。素材は全部買い取りでいいのか」

 角、肉、革が売り物になる。

 魔物ではないので魔石はない。逆かも魔石がないから魔物じゃない。


「角は2本欲しい。槍の予備にしたい」今の槍の刃も角飛びのものだ。

「わかった。解体代は買い取りから引いていいな」

「お願いします」

「名前は」

「オリ」

「ほらよ。割り込みが来なきゃ今日中に終わるが、確実なのは明日だ」と引換券を出す。


 冒険者ギルドには、魔物図鑑が破いて貼ってある。明日の獲物の分を確認して帰る。

 宿に戻って今日の反省。もっとスピードが必要だと考えながら眠りに入る。


 翌日も肉狩り。

 昨日は角飛びを狩りすぎた。続けると買い取り価格に影響がでてしまう。

 あれで食べてる冒険者もいると思うので迷惑はかけたくない。


 獲物を変える、蝶にならないイモムシ(ゲテランプロプ)


 さほど苦労せず見つけた。大きな音を立てて植物を食べている軽トラックほどの芋虫。

 草も木も関係なく食べまくっている。

 こいつ大き過ぎないか。


 この前と同じ戦法で仕留める。

 糸が広がる範囲も丸まって突進してくる速度も段違いでやばかったが何とかなった。

 困った、借りてきた荷台に乗らない。

 一番いいところだけを切り出して諦める。


 他に4匹仕留めたが、4匹目が荷台に乗らず諦めてギルドに帰る。

 今日も肉屋直行。

「ゲテランプロプをこんなに」

「多過ぎました、問題あります」

「無いが。この切り出した肉、首の後ろだよな」

「一番美味しいとこですね。全部持ってこれなかったんで」

「残りは」

「捨ててきてしまいました。問題あります」


「大問題だ。お前の担当だれだ」大声で怒鳴られた。

「プルト」言ってよかったか。

「おい、呼んでこい」後ろにいた若いのを怒鳴りつけた。


「どうしたんです、お や か た。そんな怖い顔をして」

「こいつが、ゲテランプロプのメスを捨ててきた」

「え~~~~~」プルトさん悲鳴のような声。

「説明して無いのか」

「だって、ゲテランプロプに行くだなんて知らなかったんですよ」

「ゲテランプロプって9級の常設依頼ですよね」

「メスは8級4人が推奨の魔物です。当然、討伐依頼になります」


「なんで説明受けずに行っちゃうんですか」

「常設だったから」

「いいですか私たち受付は飾りじゃないんです。冒険者のレベルを見て依頼内容の助言をします」その後もぶつぶつと説教が続く。


 彼女の後ろから副マスターのダロンが。

「安全に狩る方法があるから4人推奨なんだが、1人でどうやった」と聞いてきた。


「前と同じように糸にかかったふりをして。すこし硬かったですが何とか」

「何とか、か」


「それに残りのお肉どうしたんです。まさかそのままじゃないですよね」受付嬢はまだ俺に言い足りない。

「持ってこれないし」どうしようもないでしょう。


 ドンと解体用の台の上に何かを置いた。平べったい蝋燭。

「これは赤のマーカー。知っていますか」と詰め寄る。

 横を向いた。

「新人冒険者が初めに狩りに行く場合、受付で”か・な・ら・ず”説明するものです」


 両耳を捕まれ正面を向かされた。

「火を付けると魔物避けの赤い煙が高く上ります。煙は3日ほど出続けます。

 その煙の下に獲物があるので輸送手段を持っている者が街まで運んで来ます。

 肉の4割が報酬に運搬者のものになるからです。これを専属で行っている冒険者もいるんです。

 ゲテランプロプのメスの肉ならこの街から回収に行っても採算が合います」

 一気に捲し立てられた。


 その場で赤のマーカーを買わせていただいた。


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