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1-10.襲撃

「よおオリ調子はどうだ。話せなくて困ってんだろう、俺ケタラクが今よりいい暮らしさせてやるぞ」

 なんてセリフだ、勧誘としては0点だ。

 駆け出しの俺が調子よく稼いでいるので、こんな手合いが増えた。


 そもそも俺を小馬鹿にしているのが言葉に載っている。

「構わないでくれ」

「そうか、仲間になってくれるってか」俺の話を無視して大声を出す。

 肩を組んで俺を止める。

 初めからそうするつもりだったのか。


 ケタラクを一瞥し「関わるな」

 今度はシュリーゲンの威嚇付き。飛びかかる姿勢をとった。

「おっ。わりいわりい」と離れた。


「人の話を聞く気がないやつとは組まない」と離れた。

「ただいい仕事紹介してやろうとしたんだろうが、そんなんじゃ誰とも組めないぞ。先輩からありがたい忠告だ、ソロじゃ限界が有るって覚えておけ」

 見事なほどの負け犬の遠吠え。


 俺は自由にしていたから冒険者ランクを上げようとしている。

 ただしランクを上げるのが自由でいる唯一の方法でもないので、ランクにはこだわっていない。


 灰大トカゲ(カリナス・ガヤ)の討伐依頼書を持ってプルトのところへ行くと

「オリ、それって従魔契約ってしてる」と俺の首元を指差す。

「従魔契約という単語を初めて聞いたんですけど」とヘラヘラしてしまった。

 従魔契約が何かは知らないが、やってないと怒られるやつだ。


「へぇ~。オリ無契約の魔物を街に入れてるんだ。しかもそいつ人を襲おうとしてたよね」

 ケタラクを威嚇したのを見ていた。俺の引きつった笑顔にプルトさんもニコリ。

「今日、ギルドの外へ出るのは禁止。本来ならさっさと契約をしろと言うんだけど、オリやり方知らないんだよね~」

「はい」


「カールゼン」プルトさんが突然冒険者を呼んだ。「オリに従魔契約のしかた教えて」

 今度は俺を向き「オリ受験料は自腹ね、今回ギルドは中に入らないから鉄貨10枚」

 払えるけど。


 いつもの鍛錬所。

 魔物使いのカールゼンさんが教えてくれるらしい。ギルドで見たことがある人だ。

 彼は魔物ではなく大鷹(デ・ローク)を使い魔にしている。


「普通は従魔契約を覚えてから使い魔を選ぶんだけどね、まして魔物だろ弱らせて言葉で縛る必要があるのに」ブツブツ言いながら俺とシュリーゲンを見る。

「それだけ懐いているなら契約もすぐだろう。従魔契約そのものは簡単だ」

 そう言って何かが書かれている黒いリボンを取り出す。そのリボンで俺の左手とシュリーゲンを結ぶ。


「あとこれを」メモを渡された。

 それっぽい文章が書いてある。

「こいつを読んで」


「汝はしもべとなり、我を主人となすか。

 我が言葉は汝の意志、我が望みは汝の使命。

 汝は我の剣となり、盾となる」

 何にも起きない。

「あれ?」とカールゼン。

 その後何度も試したが従魔契約は成立しない。


 結果「オリそのヘビ、街に入れるの禁止。捨ててきて」と言われるはめになった。

「そのヘビがオリに懐いているのは私達は知ってるけどこれは街の規則。街に住むならルールは守らなくちゃ」

 プルトさん真っ当な理由で言ってくる、言い返せるはずもない。

 街の西口、わざと衛兵が見ている前でシュリーゲンを解き放った。

 翌日に街の外に出る時には飛んできて俺の首に巻きつくんだが。


「オリ」衛兵が俺に何か言いたげ。

「街の規則には反して無いでしょ」

 正論には正論で返すのが有効。


 予想外だったのは飛ぶヘビという魔物は珍しいので金になると考えた連中がいた事だ。街の近くで俺を待っているなら探せばいるだろうと頑張っていた。

 その中にケタラクがいたのは、俺への嫌がらせのつもりなのだろう。


 彼らに飛んで逃げるシュリーゲンを捕まえられるのは無理だと甘く見ていた。捕まえられないならいるのが確実な時を狙う、俺が街を出た時を狙ってきたのだ。


 いつものように街の外でシュリーゲンと合流し狩場へ急いでいると、後を追う者がいるのに気づいた。

 嫌な感じなので止まって「誰だ。俺を追ってきたのか、それとも偶然か」と声を上げた。

 同じ狩場に向かっている可能性もなくはない。

 そこへ出ていたのがケタラクと他2名。


「別に大した用じゃねぇよ」とケタラクが笑いながら出てきた。他の2人もニヤニヤしている。

「そいつを渡してほしくてよ」

「俺のだ」

「従魔じゃないんだろ」

 話にならない。


「嫌だと言ったら」

「ごめんなさいって言わせるさ」なるほど、力に訴えると。わかりやすい。

「冒険者同士の争いは禁じられてるはずだが」

 冒険者ギルドの規則だ。多少の喧嘩は見逃されるがこれはダメだろう。


「バレなきゃいいのさ」

「嘘を見破る方法があるのに」あの球の事だ。

 3人が大きく笑う。

「あんなもん、どうにでもなる。坊やにゃわからんだろうがな」

 抜け道があるのか。そんな気はしていたが。


 お互い身体強化をかけた。

 一気に間合いを詰めて1人目に一撃。入らない防がれてしまった。

 その後2、3回追撃をしたが全部避けられた。

「お前の攻撃に当たるかよ」


「訓練所での試合の勝率知ってるぜ。5割だってな」

「だが、ベテランにはほぼ全敗。何故かな」


「俺がどこを狙っているのかわかり易いんだろう」

 そう俺がどこを狙っているのかベテランほど見抜いている。

 戦い慣れていない新人に多い現象で、視線や体の使い方で狙っている所がバレてしまう。

 平和に暮らしていた俺には顕著に出る。


「なんだ自分の弱点知ってんのかよ。つまんねえな」

 ケタラクは笑いを止めた。

「普通は身体強化すれば体を動かすのは魔力。身体の使い方とは連動しない、だがお前の身体強化筋肉は予備動作が見える」

「それに魔力がどこを狙ってるのかも教えてくれるからな。狙うとそこに魔力を飛ばしている」と腰巻きの1人。

「そこまで教える必要はねぇ」とケタラクが黙らす。


「そうか」

 ありがとう、それは知らなかったよ。


「お前から攻撃してきたんだ、反撃されても文句ないな」

 大きな一振り。

 後ろに避けると別の男が追撃。2人の連携はできている。

 もう1人は弓で狙っている。


 しばらくは1対2での攻防が続く。

 俺の攻撃は当たらないが向こうの攻撃は当たる。だがダメージはない。

「なんだこいつ」

 焦り出した。

 速度を徐々にあげてゆく、いくら攻撃が見切れていても全部はかわしきれなくなる。俺の攻撃が当たり始めた。


 腰ぎんちゃくがコケた。

 止めをと思ったが矢が飛んできて間を置かれた。


 仕切り直し。

 戦闘は向こうが有利に進んでいるが、結果は圧倒的に俺が上。

「本気出すぞ、やってもいい」

 身体強化のレベルを上げたようだ。なら俺も。


 もう一段速度を上げた。

 いくら狙いがわかっても防御が追いつかなければ防げない。

 一手目が間に合ったとしても次の攻撃は彼らの速度では防げない。


 この対策を試みた時に、定番の並列思考にもチャレンジしたができなかった。

 魔力が有っても出来ないことはある。


 顔と足を狙う。

「ぐぅ」腰ぎんちゃくの足の甲を貫いた。本能的に顔を防ぐがそうすると足に意識がいかない。

 連携に一瞬スキができた。

 目の前のケタラクを無視して弓使いの所に飛ぶ。手にしている弓では俺の槍は止めれない。

 両腿と両肩をぶち抜いて転がす。


「待て」

 ケタラクの静止を無視して彼の手足に槍を突き立てた。


 3人を一箇所に集め手足を縛り口を塞いだ。

 身体強化が出来ている彼らなら自己治癒も出来るはず。傷を癒せばこんな紐など簡単に引きちぎれるだろう。


 彼らの傷の治りを見て治ったら再度体に穴を開けた。

「ぐぅ」「っあ」などと声を上げるが気にしない。

 十数回繰り返すと彼らは気絶した。話に聞いた魔力切れ。これでしばらく彼らは動けない。


「見張ってて」とシュリーゲンに頼み。

 街に急ぐ。


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