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1-11.ターゲットは誰だ

 着く早々冒険者ギルドのプルトさんに

「嘘を見破る魔具ってありますよね。あれ騙す方法があると聞いたんですが本当ですか」

「誰に聞いたんですか」とプルトさんが怒る。

「調べればわかる事なんで言いますが、有ります。オリ、なにか悪い事考えてます」

 俺の素行を疑われた。


 さっき有った事を話すとギルド内は騒ぎになった。

 そして俺は個室に軟禁された。

 しばらくして副ギルマスのダロンが「やりすぎだ」と一言。

「状況は説明しましたよね」

「向こうは狩りに行く途中いきなり襲われたと言っている」

 彼らは回収済みか。


「どっちの言い分を信じます」と俺。

「どっちも信じない。人は嘘を言う」

 例の装置は使われていない。意味が無いと考えているのだろう。

「が、スジとしては向こうの言い分が有利だ」

 意外だ!

「お前はやりすぎたんだよ。魔力切れ起こすまで痛ぶって森に放置するなんて」

 そうなるのか。


「従魔契約できないなら、あのヘビは諦めるべきだったんだ」

 それは受け入れられない。この世界に来て初めての、大切な仲間だ。

「そんな顔は止めろ。お前も冒険者ならルールを受け入れろ」

 俺は冒険者でなければならない理由はない。自由に生きる力を求めてそのために縛られるなど本末転倒だ。

 冒険者以外の生き方も考慮する必要がある。


「腹は刺してないから私闘とは認定されなかった、やりすぎた喧嘩として処理される。ペナルティとして銀貨1枚。無料奉仕で1件の強制依頼だ」

「向こうは」

「大怪我したんだ、それでお釣りが出る」

 納得いかない。

「これ以上の騒ぎにするなよ」

 ダロンそう言ったあと声を下げて。

「しばらく因縁つけてくるのがいるだろうが買うな」


 ダロンの予言はすぐに現実になった。

「お前がオリか、俺の舎弟がずいぶん世話になったようだな」

 と上級冒険者に絡まれた。

 彼はネイロン。4級パーティ”ドラゴンの爪”のリーダー。本人は5級だったと思う。

 ギルド内でもうるさいので目立っていて知っていた。


「俺は鼻っ柱の高い若いもんは好きだ。どんどん行けとは思うが、加減を知らないと思わぬところでコケる。お兄さんはそれが心配だ」と俺の肩に腕を回す。

 近くの男2人はうんざり顔で、もう1人の女性は心配そうにこちらを見ていた。同じパーティのメンバーだったと思う。


「そこで世話好きの先輩が、ありがたい教訓を与えようと思ったのさ」

 声色がわかり「ちょっと付き合え」

 がっちり固定されている逃げれない。そもそも俺に拒否権はないのか。

 ダロンを探したが向こう側を見ている。これは俺が起こした騒ぎじゃないぞ。


 そして訓練所。


 模擬剣を持ってウキウキのネイロン。

「胸を貸してやる。打ってこい」

 ここの槍は俺には長すぎて合っていない、普段は気にならないが5級冒険者相手には影響が出るんだろうな。

 騒ぎにはしたく無いので早々に負けて終わらすつもりだ。


 例のごとく俺の攻撃は当たらない。

「そうじゃないだろう」といきなり頭を打たれる。

 身体強化していなければ今ので死んでいる。なんのつもりだ殺す気か。


 おらおらおら、と声をあげて攻撃してくる。

 攻撃も今まで経験した中で1番重い。

「ぐにゃぐにゃして気持ち悪い硬化だな。これじゃ通らないのか」

 結構効いているんだが。


「ケタラクから聞いたが、お前こんなもんじゃないんだろ」消えた。

 グッ。

 後ろから脇腹への一撃。あばらが行った。

「降参」

 ここで怪我をしてもつまらない。


「なに言ってやがる。俺が直々に指導してんだぞ、まだまだだ。ありがたく思え」

 高速化して避ける。

「さあ、面白くなってきた」


 それからは一方的。

 ネイロンの攻撃はヒットアンドアウェイ。

 俺の攻撃は一瞬で槍の届かないところへ逃げ、死角に回り一撃。

 速さは俺の高速化よりも速い。風切り音がする、音速を超えているかもしれない。

 魔力で体の保護と移動を同時にしているのだろう。今の俺にはできない。


 無闇に突っ込むのをやめ、カウンター狙いに変える。

「ちぇ、つまんねぇ」

 いきなり正面にいた。

 身体強化を防御に全振り。


 ぐあぁ!

 右腕が切られた。肘の先から血が噴出。

 止血。

 血管を止める。

 痛みが邪魔するがどうにか血が止まった。


 うずくまり痛みに耐える俺の前に立ち。

「痛いか。でもなお前はこれで止まらなかったんだ。自分のした事を味わえ」

 横に蹴り飛ばされた。壁に飛ぶ。

 意識を失いそうになるが右手を止血し続けなければならない。


「メーレ後頼む」

「やりすぎ」と女性が駆け寄ってくる。

 切られた俺の腕を持っていた。

 それを繋ごうとして「神よ……」祈りを口走っていたが、俺はこの不条理な状況を受け入れられない。


「私の治癒に逆らわないで、神は全ての人に公平です」

「なにそいつお前の治癒拒んでんのか、おもしれ~。直して欲しくなって言ってるんだ、それでいいだろう」

「でも」「さすがにそりゃダメだ」


 彼女の持つ落ちた腕を左手で掴んだ。

「えっ」彼女は驚いて手を放す。

 正しい位置に持っていき、血管をつなぐ。

 何も聞こえなくなった。ただ自分を治す事に集中した。


 血管が繋げたあとは血液を流す。血に刺激されて痛みが走る。

 先に骨と肉を先に繋げる。これは多少ズレていてもいいとにかく繋ぐ。

 最後は神経、再度集中して丁寧に繋げる。

 いつの間にかボトリスの視界を共有していたので体の中で起きているのが見えていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 寝ていた。いつの間にか気を失っていたようだ、気分が悪い。

「気が付いたか」

 知らない男が声をかけてきた

「少し待ってろ」

 と出て行った。


「オリ、気がついたって」とプルトさんがきた。

「2日も寝ていたのよ。もうダメだと思った」

 腕を上にあげて、手をグーパーグーパー。大丈夫だ。

「メーレにお礼言うのよ」

「メーレ?」

「ドラゴンの爪の神官。オリの腕を治癒した人」

 いや彼女の治癒は受けていない。


 それとも俺が気を失った後に治癒したのか。

<チガウ>とボトリス。服の裏地のふりをしてこの部屋にいた。

 彼は俺が気を失った後のことも知っていた。

 彼女は俺の自己治癒にオロオロしていただけだ。


 シュリーゲンからも無事を喜ぶ声が届く。が遠い。

 この2日、シュリーゲンはネイロンから追われていた。逃げて逃げてかなり遠くにいる。

 怒りで体温が上がる。


「ネイロンはあれでも面倒見がいいの、彼を慕う冒険者は多い」

 だからなんだ。

「俺死にそうになりましたけど」

「彼が本気だったら、死にそうではすまなかった。これは理解できる。契約していない動物や魔物は誰のものでもないの、理解して」


 ネイロンあいつは俺の敵だ。そして冒険者ギルドは俺の味方じゃ無いのを再認識した。

 この世界で俺の味方はあの2匹のみ、それを再確認させてくれた出来事だ。


 シュリーゲンは街の外でも俺から離れ空から見張ってもらった。俺が街の外に出てもシュリーゲンが寄ってこないとわかるとうるさい影も消えた。


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