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1-7. もっと書物を

 休みの日ゆっくりと起きて、図書館に向かう。

 ボトリスとの融合のおかげで文字も覚えた。


 この国の識字率は日本ほどじゃないが結構高いように思う。

 文字と発音が1対1なので学習コストが低いおかげかも。


 もっとも図書館にいるのは裕福な人が多い。本は高価商品。

 図書館では1冊借りるのに保証金がいる。戻ってくると言っても抵抗がある。


 冒険者ギルドにも魔物や植物などの図鑑が置いてあり、借りて読んだ。

 ただしこっちはしっかり金を取られる。図書館は保証金を必要とするが実質無償で本を読める。貧しいなら絶対こっちだ。


 図書館には広いフロアがあり大小のテーブルが並んでいる。

 使うテーブルを決めて、置いてある目録で目当ての本を探す。


 受付に目録を持って行き希望の本を告げ保証金を渡す。

 1回1冊。外に持ち出すことは出来ない。

 本が置いてある部屋には魔法結界があるのでボトリスでも覗き見はできない。


 おもしろそうな本を探すが、ほとんどが面白くない本。

 最も多いのが人を導く教えや宗教関係。

 歴史書もあるがこの国から見た歴史なので事実と違うはず。数冊読めば十分。

 最も読みたい魔法や錬金術に関係する本は、俺に借りる資格がない。


 俺が最初に読んだのが自然科学。

 この世界を知るために読んだ。

 宗教が幅を利かせているのに科学が真っ当に発展していた。偏見だ。


 天動説は唱えられた形跡さえない、大地が丸い星なのは常識。


 月は4つ、ただし月ではなく星と数えられている。

 一番内側が黒い星(コルアッシュ)

 その外に赤い星(ガーナッシュ)

 次に一番目立つ白い星(ンーラッシュ)。これは地球での(ムーン)に近い

 星では太陽の熱い星(ボタッシュ)の次の大きさで(ムーン)の3分の1ほど。

 最も遠いのが青い星(コードリッシュ)。この星が自分たちの星と連星だと書かれていて、ここは声を出して驚いた。連星の概念が存在するんだ。


 自分のいるこの星には現地では名前がない。

 公転が楕円で惑星や月の軌道も正確に弾き出されていた。


 10にこだわる世界なので1日を10分割している。なのに年の日数が377日なのを疑問を持たず受け入れている。

 神の世界は人の理に含めないという考えらしい。逆にいえば10で割り振られているのは人の領域だと考えられている。


 この星には大きな大陸が1つしかない。

 北は北極を通って西に伸びた半島。ここは魔人の住む大陸で人はいない。

 赤道の大切断と言われる一直線で切り分けられている。

 大切断で大陸は南北に綺麗に分かれ細い海となり、その大切断では東から西への激しい海流と風が流れていて南北の往来を難しいものにしていた。


 この本に書かれているほとんどの事が魔王統一当時の発見だったらしく、魔王お前どんだけ優秀だったんだよ、となった。

 面白く読んだが1冊しかなかった。


 次が貴族の回顧録。

 自分自慢の本だがテンプレートが決まって、面白いのはそれ以外のところ。地域性が透けて見える。

 安いので俺でも借りられるのもいい。きっと書いた本人が配っているのだろうと想像している。

 ただしこの図書館にあるのは全部読んだ。自分の興味のあるところだけ読むので早い。


 おかげで彼らの暮らしも知れた。

 第10爵位は貴族だが土地はもらえず世襲もしない。

 それどころか国からはお金ももらえないので働かなければならない。地球の貴族と違い”働いたら負け”は通用しない。


 第9爵位は第10爵位が功績が認められ土地を与えられると自動的に陞爵する。

 土地といっても人の住まない未開の地。自分で開拓しろと言うのだ。

 性質上第9爵位も世襲しない。


 開拓して村を作り国に税を納められれば第8爵位、世襲もするのでここからで本格的に貴族の仲間入りだ。

 村を複数作ることを許されるのが第7爵位。

 城壁で覆えば街と呼ばれ、街を治めるのは第6爵位。


 そうしてここら辺の著者が多い。苦労した記録を残したい、そして出版する財力も貯まり始めるのが第6爵位あたりなのだろう。

 この街を治めるガナターン卿は第5爵位。


 ここクハドール王国は北大陸の付近に有る国。海には接していないが、西は大山脈ララコロ・アイエデに面している。

 山脈の向こうは西の海、その先は魔人大陸。


 この大陸から定期的に魔王と名乗る軍勢が攻めてくるが北大陸諸侯が連合し対処している。

 前回は約250年前。魔王軍を追い払ったが、その後の混乱期に国が倒れ、今のクハドール王国が生まれた。


 今、目を付けているのが魔具のカタログ本。


 これも魔具の製造元が集まって宣伝のため配っていると思っている。

 根拠は回顧録もカタログ本も保証金が大鉄貨一枚で最小価格。多分献本された本が大鉄1枚なのだと思われた。

 2つの本の違いは獣皮紙か板紙かの違い。地球のような紙はない。


 獣皮紙だ、羊皮紙ではない。

 羊のような家畜がいないので獲れた獣の皮で皮紙を作る。

 獣により製造過程が違うので生産工程が複雑になり高価。回顧録で使われている。


 板紙は木の板を魔法で薄く柔らかくしたもの。柔いプラスチックという感じ。

 錬金術師が作っている。

 紙と考えると俺には高いが、木材だと思えばあり得る値段。庶民でも買える。

 板に書いていたのが魔力で今の形に進化していた。


 今回借りたカタログは2年前の最新版。

 工房毎に作るものが分かれていて、各工房には何々系とまるでラーメン屋のように系譜がある。

 系譜別に得意とする分野がある。

 火を得意とする系統、ゴーレム作りを得意とするなど様々。


 冷やすのが得意な工房はミルアルと言う所からの暖簾分けが多い。名前の最後がミルアルで統一されていた。

 冷風機と冷蔵庫が同じ街で別工房で作っている、被らないようにしているみたいだ。

 かと思えば1つの街に1つの工房しか出していない系統もある。


 この本に書かれている魔具は見ているだけで飽きない。

 いろんなものが作られている。

 地球の文明と比べても遜色がないかもしれない。


 車の代わりにゴーレムの馬が引く馬車。

 すでに板バネ式のサスペンションは発明されているのは見ていたが、最上級品はスプリングや油圧式ではなく魔力で振動を抑える。上に振動を伝えない仕組みで地球の電子制御のサスペンションと差が無い。


 列車は大きなゴーレムに引かれ一両の車両がレールを走っている。昔日本で馬車鉄道と呼ばれるものだ。街を結び輸送を担っていた。

 料金的に庶民が気軽に乗れるものではないが。


 コピー機もある。

 コピーというか上半身だけの人形。ゴーレムだが見本そっくりに複製を”手書き”する。


 街と街を電報のように連絡する仕組みもある。

 コピー機そっくりな人形が2体1組で、1体が見たものを離れたもう1体が描き始める。

 その前で人形を通して会話する。


 映像を楽しむ文化は無いが、魔法で録音再生ができる魔具はある。

 これに歌、音楽、朗読劇を記録レコード屋のように上流社会で販売している人もいる。


 思った以上に文明的な機械がある。ただそれの基礎を魔法という属人的な所に頼っているため広がっていないように見える。


 カタログの最後の紹介は決まって空飛ぶ魔具。

 鳥やドラゴンなどを真似て下に小型の船を吊り下げている。

 なんで飛んでいるのか不思議な装置。


 国が数隻あとは上級貴族がやっと一隻買えるかどうか。値段は要相談とある。

 飛んでいるのを見たことはない理由が納得できた。

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