1-26.涙の宝石
「キミ、悪目立ちしてるよ」とプルトさんに注意された。
悪目立ち?
「オリがお金持ってるのは街中の人が知ってるからね。君は8級にしては強い、だからね。そこ勘違いしないように」
小金レベルだが金額の問題じゃないんだろうな。
このギルドにも俺より強いのはいるし、その中には友好的でない冒険者もいる。
「6級急いたほうがいいですか」
「7級になるにはオークなど7級の魔物を10体討伐。これはオリならすぐ出来そうだけど。6級になるのは貴族の推薦状がないと無理」
「それ、ギルドマスターにもらえないかな」
「だーめ。それだと全員ギルドマスターからもらっちゃう」
オークか。
魔物にも集団生活をするのとしないのがいる。
集団生活をするので有名なのがコボルド。時には100を超える巣を作る。
ゴブリンは同族でも弱い個体を殺す習性があるので大きな集団になりづらい。普通4,5匹のグループで行動。逆に大きな集団の存在は強い個体が統治している事になる。
さてオークはと言うと、強いメス1匹に繁殖候補のオス3匹程度と子供が数匹。普通6〜8匹、最大でも10匹程度の群れを作る。これで1家族だ。
数はゴブリンほど多くはないがそれも居なくなるほどは少なくない。
それが街から半日で行ける距離にはオークが居ない、狩り尽くされてた。異常だ。
原因は俺だ。俺を進級させないために嫌がらせされている。
それはオーク以外の7級の魔物も同じ。極端に数が少なくなっていた。
ギルドも気づいているが魔物が減るのは良いとして黙っている。
そして街の外で俺を追跡しているヤツ。今は俺が探査できるギリギリにいる。
最初見つければ離れるをしていたためにシュリーゲンでの捜索範囲を知られてしまった。
そこから俺が獲物を見つけると'威圧'を発する。そうすると弱い獣や魔物は逃げ出して狩にならない。
威圧とは殺気に魔力を乗せたもの、人を殺そうと思ったことの無い俺には出来ない。ガナターンの冒険者でも出来るのは上位者。アイツも出来る。
煽って俺から手を出させるつもりなのだろうか。暇な事を考えるものだ。
「遠出するかー」
「残念。8級冒険者は依頼で他の街には行けるけど依頼を受けれるのは拠点でのみ。しかも常設依頼も拠点地域のみ」
そんな〜。
担当する地域の安全のためだろうけど。
仕方がない。しばらくは逃げない獲物に切り替えよう。
薬草採取の依頼を探す。
生息地の危険度が高い依頼は8級では受けれない。探すのが難しいのは日銭稼ぎには向かない。
貴重な品々。そもそも依頼に出されるような物を、8級冒険者が入手できるわけがない。
鉱物。
炭鉱は基本国が管理してて冒険者が出る幕はない。だけど何故かダンジョン産という貴重鉱物が存在する。
ミスティルだったり宝石だったりがダンジョン内で見つかる。ここで言うダンジョンとは俺が見つかったみたいに洞窟に魔物が住み着いた場所だ。
半分が光り物の好きな魔物が集めているのだが、残り半分は何故かダンジョン内で生まれている。
冒険者はそれを見つけてギルドに売る。
この前グラファイトを作った時閃いた、今の俺なら作れるかもと。
試してみる価値はある。
次の日、俺がいた清掃済みのダンジョンに潜る。
時間を潰し外で木を切り倒して炭を作った。木から炭以外の物質を取り除けばいい、ほんと錬金術は便利だ。
この世界でも高温料理用に木炭を使うので厨房に少し渡した。これでは厨房のために炭を作ったようにしか思えないだろう。
俺を遠くで見張っている連中へのカモフラージュだ。
自分の部屋に引きこもり炭素の結晶化を試す。
両手に木炭を乗せ魔力でつつみ、結晶化の手順を丁寧に思い浮かべる。
炭に含まれる炭素を抽出、六角形に結合。
何度か試すと、小さいダイヤモンドの塊が出来る。
「これ、俺大金持ちじゃないのか」
これで準備はOK。
翌朝、出かける前に
「いつも美味しい食事ありがとうございます、これお礼に。アイシャも頑張ってるから」と昨夜作ったダイヤをアイシャとお母さんに渡す。
ふたりとも「綺麗〜」と喜んでくれた。
良かった、アイシャを忘れたらなんと言われるか。
冒険者ギルドでプルトさんが空くまで待って彼女の前に綺麗な小石をコロコロと転がす。
「はぁ?」
「それはあげます、いつもお世話になっているお礼。他にも数個有るんでギルドで買い取ってもらえません」
プルトさんじっくり調べた後いきなり
「オリ大好き!」
カウンターの向こうからプルトさんが飛びついてきた。
「ちょ、ちょっと離れてくだいよ〜」
「プルトうるさい」「何あんのよ」「イチャイチャするな」
ギルド内が騒ぎになった。
「どこで取れたのか教えていただけたら金貨50枚、いや60枚お支払いします」
騒ぎの後ギルドお抱えの商人が呼ばれ、俺のダイヤを見ての第一声がこれだ。
情報量として破格の金額の提示を受けている、未発見度ダンジョンを俺が見つけたと思ったのだろう。
「素晴らしい、なんて素晴らしいんだ」とダイヤをまじまじと見ている。
「お前がそんなに驚くなんて珍しいな」ダロンも同席していた。
「この純度。一切の曇りがない」
炭素100%で作ってるからね。
「そしてこの結晶。いままで見たことがない。奇跡の輝きだよ」
あ、そうだったこっちの宝石は球体に加工されているんだった。
無意識でブリリアンカットしちまった。
「知られていない忘れ去られた文明で作られたものだよ」
そうなっちゃったか〜。無知でやらかす前にプルトさんから言われたとおりだ。
「しばらくは秘密にしておきます」と答えた。
「後から見つける奴が出てくるとそいつのものになっちまうぞ」
ダロンが助言してくれたが、ニヤリと笑って答えた。
見つけられるなら見つけてみろ。
「お前、まさか襲われんのを待ってるじゃないよな」
「この情報守る為ならやり過ぎにはならないでしょ」
ダロンが頭を抱えた。
その日から女性からのモーションが露骨に増えた。
工房に帰ると
「オリこれダイヤじゃない」
「妻まで手を出す気か!」
「私にまでくれるなんて、もっと有るでしょ」
そうか、そうだよな。天然じゃ探すのは大変だ。俺が思っている以上に価値が有ったかも。
俺が作ったなんて絶体に言っては駄目だ。権力者に監禁されるしこの世界の価値を大きく変えてしまう。
えへへと笑って誤魔化すしかない。
その夜。
ん〜何だ?
俺の寝具の中に誰かいる。
敵!
飛び起きた。
「起こしちゃった」アイシャだ。
「どうした」
「夜這い」
有るのかよ'夜這い'っていう言葉が。
「そこに座れ」ベッドの上を指差す。
説教を受けると思わなかったアイシャは俺の剣幕に驚いていた。
「なんで〜」
不満タラタラだ。
「私もほんとはもっと年上の容貌が好みだけど、最初がオリならいいかなって」
何だその’いいかなって’。
「お父さん母さんにもオリを逃がすなって言われたし。私ってそんなに魅力な〜い」
儒教が無いとはいえ倫理観終わっている。
大きく深呼吸したあと。
「1つアイシャは十分魅力的です」
「なら」とまた下着を脱ごうとする。
「待って」
「俺はこういう事は人生の最後まで一緒に居たいと思える人とする」
「は?」
「アイシャは年取っても俺と一緒にいたいと思っていたか」
「もっと年取ってくれる」
今度は俺が「はぁ」だ。
「私は中年と呼ばれる風貌が好きなんだよね。外見なんて気にしてない感じの人」
老いを魔力で抑えられるのにか。
「いるのそんな人」
「いたらいいな〜」なんだ居ないのかよ。
「そう言えばオリって外見気にしてないね。小さいし」
「小さい言うな」
俺の年代だと普通は早く大人になりたがる、魔力があれば当然大きくなる
俺は前世のイメージが成長の変化をさせているのか、身体強化が出来る魔力があるのに体には影響が出ていない。
「もしかしてオリって当たり!」
アイシャが何かに気づいて顔が明るくなる。
これは恋愛じゃ無いんだろうな。地球で言えば恋に恋するお年頃、アイドルを推しているのと変わらない。
ただし魔法があるせいで色恋事へのハードルが低い。
「オリって落ち着いてるね。お母さんはオリくんは初めてだからアイシャがちゃんとしなさいって。もしかして経験あるの」
女子高校生が男子中学生に言っていい言葉ではない。年齢的にはそうなるんだ。
この体ではないが、地球には恋人がいた時期もある。彼女を思い出して痛む。
そして、彼女の顔をはっきりと思い出せない事でさらに傷ついた。
「は〜ぁ〜」遠くなっちまいやがったな〜。
大きなため息がでた。
「そんなに嫌なの?」
なんて事を言い出す。
「だって今すっごい暗い顔してたよ」
「もう帰って寝ろ」
彼女を部屋から追い出す。今夜はものすごく疲れた。
翌日から尾行者が居なくなった。
代わりに俺がダイヤを持ち帰ったと思われる洞窟に人が湧いた。
はい、ご苦労さま、皆さん頑張って探してください。




