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1-22.灯火の女神

 単純な図だ、基本的に全部同じ事をしようとしている。

「魔燐水が魔力の供給元だとすると、全部魔燐水のタンクと発光する所を結んでいる図ですね」

「「え」」2人とも声が出た。

 違うのか?

 魔力の流れる方向や分量を制御するためだと思う記号もあるがだいたいそんなものだろう。

 電子回路を見慣れているとそれほど難しくないが、魔力の流れだからプラスとマイナスの考えが無いと思えばこんな図になるよね。


「どうしてそう思ったんだい」チャさんが聞いてきた。

 どうしてって「灯りの魔法回路って回路の目的を言ってたし、魔具は魔燐水が燃料なんでしょう。なら」他に考えようないかと。

「なんでそれだけで理解できちゃうの。魔法回路初めて見たんだよね」とアイシャさん

 そうか回路図って発想が広まってないんだ。小学校レベルの簡単な回路図でも江戸時代の人に見せればわかんないか。


「オリ、魔法具士にならないか、その才能は勿体ない」

「え、父さんの弟子にするの」

「いや、彼には独自に論理形態を編んでほしい」

 チャさんの盛り上がりに対してアイシャの顔が沈んでゆく。


「アイシャ、トトとこへの弟子入りの話はなしだ」

「やだ!」

 技術者バカ暴走中とチャさんの上に看板が見えそうだ。

「そもそもトトとこだって嫌なのに、何で父さんの弟子にしてくれないの」

「向こうのほうが将来性がある」

「同じ6等級の”冷“じゃない。父さんだってクーラー作れるのにこんな下請け受けちゃって。良いように使われてるだけだって」

「クーラーは直接貴族を相手にできる。冷蔵庫は市場関係に売り切ってしまえば終り、次がない」

「街の食堂は?」割り込む。数ならこちらが多いと思うが。

「店に売るには高すぎる。多少余裕のある所はすでに氷屋から氷を買って冷やしているんだ、代わりには買ってくれないよ」


「やだ」アイシャは感情的になっている。

「この話はここで止めません」とチャさんの暴走を止めた。

「そうだなガナターンに戻ってからにしよう」

「一応言っておくが、俺は錬金術に興味はあるが魔法具士になりたいとは思っていませんよ」


 そんな話をしていると上空から見張りをしていたシュリーゲンから合図。

 2キロ先に怪しい人、3名。

 シュリーゲンの視界を共有。

 いかにもな野盗、2人が弓を持っている。

 あ、こっちに気づいた。目がいい、目の身体強化をしてる?


 弓を持っていない男が走った。

 仲間を呼びに行くつもりか、させない。

 シュリーゲンが走る男の後ろから音も無く近づき足首にガブリ。

「うあぁ」

 うめいてこけたが、すぐに泡を吹いた。

 毒の量を調整している、殺してはいない。


「チャ、俺降りたらあと3人乗せれるかな」

 俺が突然今までと関係ない事を言い出したので戸惑うチャさん。

「ぅん。大丈夫だ。オリが降りる必要もない」

「ちょっと冒険者の仕事してきます。後からゆっくりきてください」

 と馬車を降りて走り出した。


 2人が隠れている近くで止まり。

「2人ともおとなしく出てくれば怪我をしないで済むぞ」と警告。

 少ないが一般市民の可能性もまだある、いきなり襲うのは不味かった。

 弓を構えて潜んでいた。

 一応少し待って1人が潜んでいる場所を指差す。


 その先で「うわぁ」と声が上がる。

 さっきと同じようにシュリーゲンが噛んだ。


 別の所にいたもう一人が矢を放つ。

 バリヤをしていたので余裕かましていたが矢に鏃がない、代わりに袋状になっていた。

 矢は俺に当たると袋が破裂。粉を撒き散らした。

 すぐに矢を撃った男も声を上げた。


「何だったんです」と道に集めておいた3人をみてチャさん。

「多分盗賊」

「「え!」」

「ガナターンの最後の村から隣領の最初の村の間を気をつけろと言われてたら、まさにその通りに」

「道があるから安全だと聞いていたのに」

「魔物とは出会ってません安全だったでしょ。でもそれは盗賊も同じ。巡回も最後の村から先にはきませんからこうなります」

 二重の意味でこの辺は野盗が安心できる場所。


「クーラーは高価ですが、盗んでも売れないし動かせない、盗賊には意味のない物でしょうに」

 あ、もしかして襲われない可能性も有ったのか。


 翌日夕方に隣街カベラルドに着く。

 3人の盗賊を連れてたので、俺は彼らと一緒に詰所へ。

 先に宿行っててと頼んだら、今夜は依頼主の館に泊まるから一人には出来ないと言われた。


 予定より遅くなった事を館の主人に謝ったが、俺の武勇伝を話す事で済んだ。

「ではオリは一瞬で移動し一撃で悪党を気絶させたと。すばらしい」

 適当な活躍劇を語って誤魔化した。


 館の主人は領主の弟で第10爵位の貴族だった。

「貴族といっても兄のお情けで第10爵位を貸してもらっただけ。子供には渡らないだろうからこうして商売をしています」

 彼は灯り系の工房の末娘と結婚していた。その立場で街の中の灯り関係を一手に握っている。

「暖房と冷房を家に揃えたら初めて一人前といいます。私もこれでやっと一人前になれました」と豪快に笑った。


 部屋に案内されアイシャが「何が一人前だ。錬金術を使えないくせに。偽物じゃないか」

「アイシャやめなさい。カロン卿は錬金術を使えなくとも立派な工房長だ。きちんと商売をされている」

 アイシャはフンと横を向く。

「工房長が錬金術使えなくても問題ないのですか」

「数は少ないですが問題にはなりません。工房内にちゃんとした錬金術師がいればいいのですから。奥様の実家から魔法具士が来ているんじゃないでしょうか。カロン卿にとって奥様はまさに灯の女神だったでしょう」


「それに彼が凄いのは錬金術師としてではなく商人としてですから。いい機会ですアイシャそこに座りなさい」

 自分のベッド上に座る。

 今日は3人同じ部屋で寝る。驚いた俺に対して2人は当然という顔をしていた。

 いや父親のいる部屋で悪い事は考えないが、それでもだろう。


「魔具というのは普通お客様の要望を聞いて作成します。無論お値段もどんなものを作るかによって変わります。まして灯りの魔具。初級魔法具士でも作れてしまうため品質がバラバラ。彼はこの問題を解決して工房を大きくしました、何故でしょう」

「規格化したのかな。先に見本を作っておいて公開、客は自分のだせる範囲で出来合い品を選ぶ。だとすると」

「オリ、ストップそこまで」止められた。


「娘にも考える機会をください。アイシャ、オリの言った事を理解できましたか」

 アイシャ頷いて小声で「多分」

「では規格をどうやって決めたと思います」

「大きさ、デザインでもそんなのは今までもやってたし」

「灯りで重要なのは」

「光ることでしょ。そうか明るさを保証したの」

「そうですね。明るさを数段階に分けてその明るさを保証したんです。でもどうやって作ったと思います」

 答えほとんど言ってたよね。


「見本を作って比較したとか」

 チャさんうんうん唸って「オリはどう思います」

「グラスにインクが溶け濃淡の違う水を用意すれば数段階に分けられそうですね」

「そうかもしれませんね」微妙な反応。

 ハズレか?

「カロン卿は魔具を作りました。この規格は国内で広く使われていますがこの魔具の作りかたが秘匿されています」

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