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1-2. 異邦人

 風景が変わった。

 暗かったが真っ暗ではない、壁に光る何かが設置されている。


 それよりも匂いがひどい。一呼吸で吐きそうになった。

 匂いの原因はすぐにわかった。近くにある死体の山。


 我慢し切れずに吐いた。

 ゲーゲーとしていると灯りが近づいてくる。


 灯りの正体は松明。

 燃えた木を持った何かが2体、耳障りな声を出しながら近寄ってくる。

 いきなり襲って来た「ギヤァグュ」と完全に攻撃の声。


 身構えることもできない。


 そう思ったが1体にボトリスが飛びかかり口と鼻を覆う。息ができないようにした。

 もう1体にはシュリーゲンの牙が食い込んでいる。

 2体は床に転がり暴れたがすぐに静かになった。


 助かった。


 彼らの持ってきた火で室内は照らされている。

 さっきと変わって人工物はない、自然な洞窟の中に思えた。


 そして転がる2体は小柄な人にも見えるが、彼らにピッタリな名を俺は知っている。

 ゴブリンだ。


 さっきの目覚め方じゃSFだろ。何でこいつらがいるんだよ。

 うすうす転生モンってことは気づいてたよ。

 入院中にはいろんな本を読んだ。人生とはみたいな重いのは無理だったから、軽めのこの手のも結構読んだ。


 さっき足で立てたのは嬉しかった時、こうなったのは人生をやり直したかったと無意識に思っていたせいだと受け入れた。

 だがそれはスペースオペラの世界と考えてだぞ。文明がある世界でのやり直しだ。

 現状は飲み込めない。そんなことを考えながら周りを見回す。


 いる場所は入り口が1つのそれほど広くない洞窟の行き止まり。

 そこに人の死体が積み重なっていた。臭いのはこの死臭。

 また吐き気が襲う。


 外からの音に気づいた。

 金属がぶつかる音と叫び声。断末魔も混じっているか。

 何かが戦っている音だ。


 どうすればよいのか考えても正解はない。どうしようもなくその場にいると騒ぎは静かになっていく。

 今度は叫び声が聞こえる。初めて聞く知らない言葉だ。


 隠れようと思ったがやめた。隠れるなんて無理だ。死体の山しかない。

 死体のふりをするのは、俺の精神が耐えられない。


 入り口が灯る。

 知らない言葉で叫んだが、なぜか『こっちだ』と言っているのがわかる。

 俺の知る'人型'だ。後ろにいる仲間を呼んだのだろう。

 ボトリスとシュリーゲンに隠れろと命令して、彼らが悪い人でないことを祈る。


 入り口から中を照らして、2匹のゴブリンの死体と俺を見つけた。

『だれだ』相変わらず知らない言語で言われているのに意味が理解できる。

「助けてくれ。攻撃しないでくれ、俺は人だ」と俺は叫び返した。

 反応がない。当たり前だが日本語は通じない。

『何を言っている』と返された。

 そうしていると男女三人が増えた。最初にいた男性と話をしているがここまでは聞こえない。


『両手を上げ手のひらを広げこっちに見せながら、ゆっくり立ち上がれ』

 剣を向けた男の指示に従い立ち上がる。

 男3人が剣を構えたまま近づいてくる。


 囲んでから『お前は人か』と聞く。

「そうだ」と答えたが反応が薄い。


『言っていることがわかるか。肯定するなら一回下を向く。理解できたか』と聞き直した。

 一回頷く。

『あれはお前がやったのか』とゴブリンを指差す。

 ブンブンと首を振ると『否定は横を一回向け』と言われる。ジェスチャーの常識が違う。


 いくつか質問されたがまともに答えられなかった。

 手を縛られて彼らに連れられて外に出た。

 そこは森。大きな岩の下が洞窟の入り口になっていた。


 グループの唯一の女性から『腰に巻け』と布を渡された。

 彼女は見ないようにしていたが俺はフル⚪︎ン。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 4級冒険者パーティ「烈風」は困っていた。

 ゴブリンの巣の討伐。依頼内容の討伐はなんとかなったが、巣の中に生きた少年がいた。

 少年の救出は依頼にはない、追加報酬のオプションにもない。

 そもそもが巣に連れて行かれる時は死んでいる、普通考えられていない。

 身元が分かれば謝礼が期待できるが、少年に関しては身元を示すものがまるでない。


「ゴブリンのやろう、女と勘違いして連れ込んだか」と斥候のトード。

 少年は裸でなければ美少女と見間違えるほどだ。

「ゴブリンが繁殖に他種のメスを使っているというのは俗説。まだ信じてんの」呆れたと魔術師のキリミア。彼女はこのパーティ唯一の女性。

「死んでいないのに気づかず巣に持ち込んだのだろうな。あそこは食料保管庫だったんだろう」リーダーのザック。

「食料、おーやだやだ」神官のノリス。

「金にならないと森に捨てて行くわけにも行くまい」と戦士のチャロ。

「彼の手は労働しているものではなかった。裕福な商人か貴族の子の可能性は大きい」盾持ちのカロガダント。報酬が期待できると。


 カロガダントの言葉で少年を街まで連れていく流れになった。冒険者ギルドにも押し付けてしまえと話は決まった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 6人は話し合っていた。

 ここが異世界だというのは彼らの髪の色で理解させられた。青やピンクをしている。

 彼らはさっきと同じ言語を話していると思えたが、今度は話している内容を全く理解できない。


 話し合いが終わると、大きな男が近づいてきた。

『見て覚えろ』そう言うと死んだゴブリンの頭を大きめのナイフで割る。

「ひぇ~」悲鳴を上げてしまった。

 それを見ていた6人が笑う。

 いや、グロイって。


 男は血の塊から小さな石を取り出す。大豆より小さい。数箇所光っている。

 いきなり『自分でやれ』と持ってたナイフを投げてよこした。


 辺りにはゴブリンの死体が数体転がっていた。

 あれを、俺が、やるの。

『3つ必要、やれ』

 やらないと駄目みたいだ。


 最初はどうするのか教えてくれた。頭を割り、脳の下側にある光が漏れている小石を指で探す。

 もしかして魔石、そう思った瞬間に『魔石だ。金になる』と大男。

 魔石と思ったので魔石と自動翻訳されたようだ。


 3つどうにか回収できた。

 見ると俺以外は魔石を取り出していない。

 俺に回収作業を押し付けたと思っていたがそうではなさそう。


 最後の解体を終わらすとその死体を洞窟の中に持ち込んだ。

 他の死体はもうなくなっていた。


 杖を持った女性が入り口前で構えるとぶつぶつ何かを唱え始めた。

 彼女の頭上に炎の塊が生まれ、杖を振ったと同時に火玉が洞窟入り口に飛ぶ。

 洞窟内で爆発が起き轟音とともに炎が噴き出した。

 ダイナマイト以上の威力はありそうだ。


 洞窟の入り口から煙が上がる。

 その煙を見ていると『死体は他の魔物を呼ぶ』と俺を見張っていた男が言う。


 俺はそれどころじゃない、この世界には魔法がある!

 そして男たちは剣を持っている。

 間違いなくここは定番の剣と魔法の世界。


 大きな男が俺を担いで走る。

 全員オリンピックのマラソン選手より速く走っているじゃないか。

 シュリーゲンは飛べるのですぐ後ろにいるが、ボトリスは無理でゆっくりと追ってきていた。


 すぐに森を抜け道に出た。

 そこにいた馬車に乗せられ暗くなる前に高い壁の前に着いた。

 全体が見えなかったが多分城壁。


 門の横にいた槍を持った兵士が『ザックおかえり。なんだそりゃ』

『今日はゴブリンの巣掃除だったんだが。1人生きてた』

『その子の救出も依頼に』

『いいや無い』

『たしか依頼内容に無い拾得品はお前たちのものだな、娼館か奴隷商にでも売るのか』

 !?


『冗談。そんな金で飲んでもうまくない』

 よかった。

『それにこいつの親は多分金持ちだ、言葉に気をつけろ』

 多分違うが、今度は兵士が俺を舐め回すように見た。

『なるほどな』


 俺達は詰所みたいな場所に連れて行かれた。

『これを持て』と占い師が持っているような水晶玉を渡された。

『こいつは言葉を失っている』

『なんだと、面倒くせえな。ハイなら1回頷く、イイエなら横を向け』

 頷く。


 その後は『名前は』『人を殺したことはあるか』色々と質問されたが前回と同じく、何も答えられない。

『本当にカラッポじゃねえか』

 頭をぽりぽりかいた後

『まあ悪人じゃないってことは確認できた。入っていいぞ、鉄貨2枚だ』と投げやりに言う。


 俺を担いでいた男に『さっきの魔石2つを渡せ』と言われる。

 このためだったのか。

 魔石を2つ渡すと木の札を渡された。


『これで街にいられるのは3日。早々に教会か冒険者ギルドに連れてけ』

『冒険者ギルドだろうな』

『それもそうだな。ガナターンへようこそ』通れと合図した。


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