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1-15.何かが起きている

 2頭の大猪(デ・ブロ)を狩って冒険者ギルドに戻ってきた

「お疲れ様」とプルトさん。

「報酬の取り分は口座に入れといたよ」ギルドにはお金が預けられる。

 利子は付かないし手数料もとられるが手元に持っているよりかなり安心だ。


「逃げた2頭も討伐完了。赤のマーク焚いてきた」と言うと

 プルトさん大声で「ヤークにトードン村付近に赤1つ。大猪(デ・ブロ)2体って伝えて。急いで」と職員を指差す。

 まして魔力が乗っている「自分だとは思いませんでした」は通じない。最近この魔力の乗る話し方にも慣れてきた。


「本当オリって9級にしてはお金持ってるよね」

 実感がない。余裕はないと思うが。

「借金してないじゃない」

 基準が違った。

「冒険者は装備には手を抜けない。命に関わるからね、ギリギリ無理をする」

 俺は手作りと安物で誤魔化している。最近新調した胸当ても狩ったやつの革で俺の手作り、裏にボトリスがいるし十分だ。


 あ!

「そうだ、これ」と小さな黒い塊を出す。

 それをプルトさんが持ち上げて確認し始めた。

「これもしかして」

「もしかするかも知れませんが。実物見た事ないんでわかんないんです」

「待ってて」と奥に引っ込んだ。


 プルトさんが太った中年男性と一緒に戻ってくる。

 きた瞬間に「君すごいよ。黒丸キノコ(トトロク)が持ち込まれたの3年ぶりだ」と言い出してプルトさんを慌てさせた。

「声大きい。言っちゃだめです!」指向性は誰に向けてが本人にわかるもので、他の人にも聞こえる時は聞こえる。

 ゴホンとわざとらしい咳をして「二階へお願いします」

 今更、周りの人こっち見てるって。


 プルトさんについて行き、案内されたのは小さな談話室。

 遅れておじさんが3人分のお茶を持ってきた。

「彼はアルバルト。このガナターン・ギルドの検定士。彼はオリ9級冒険者」とプルトさんがお互いを紹介。

「このトトロクどこで見つけたの。このかじった痕は君が食べたの」

「ストーップ」とアルバルトさんをプルトさんが止めた。


「この場はトトロクを採集した状況の確認と情報買取の場です」とプルトさん。

 情報の売買は前にもしたが。

「昔、貴重な薬草の嘘の生育条件を売っていたやつがいたんです。しかも組織的に行われたので嘘と見抜くまで時間がかかってしまった」

 その後をアルバルトが続けた「嘘だと判明したのはそいつらが死んだ後、責任も取らせられませんでした。無駄にした時間でいったい何人の人が犠牲になったのか」

 自己治癒にも限界があり薬も必要なのだ。2人とも静かになる。

 俺が思ってたのと、重みが違った。


「その反省でギルドでは貴重な物を収集した冒険者に状況を聞いて誰にも言わないよう対価を支払う事にしたのです」

「情報の正しさが証明されれば公開しますし追加報酬も出ます」

 それまではギルドが伝える相手を選ぶのか。冒険者はギルドに嫌われたらやっていけない。


大猪(デ・ブロ)が泥の中で休むという話は」と俺が状況を説明し始める。

「聞いた事はある」とアルバルトさん。さすが専門家。

「前日に親が殺され逃げた2匹をおっていました。遠くに逃げたと思っていたら意外と近くの泥の中でじっとしていました」

 危険なのだ俺ならもっと逃げる。


「興味深い」

「その泥の中に黒丸キノコ(トトロク)の食い残しがたくさんありました」

「はぁ」「え」

「俺は原型をとどめていた1つを持ってきたんです。辺りには食い散らかした跡がありました」


「こうしてはいられない」アルバルト「調査に行ってきます」と走り出す。

「どこ行くんですか」と止めるプルトさん。

「どこ行けばいいんだい」ドアから顔だけが残って体は先行していた。

 頭を抑えながら「ヤークが先行してます。トードン村へ向かってください」


「他に何かありますか」とプルトさんに確認されたが

「ないですね」本当に無い。

「銀貨5枚で誰にも言わないと誓えますか」

 銀貨!


「はい」

 今回は魔法で制約がかけられている契約書にサインして銀貨5枚もらった。

 右手の第5指、すなわち小指に規約用の紙を巻く。紙が燃え小指に模様が出てきた。

「契約紋です。ここを出たら色々聞かれると思いますが、それを見せれば皆んな黙ります」

 前回のは契約紋はでなかったし、従魔契約は腕に出ている。

 指の契約紋は話せない証拠になると言うことか。


「で、オリ8級進級おめでとうございます」

「え?」

「8等級の魔物の討伐数10匹または超貴重素材の採取が8級への進級条件です」

 知らなかった。

「私、トトロクの収集で8級になった人初めてみました」


 ふう~と息を吐いて「でも、いくら何でも早すぎて心配になります」

 プルトさん真面目顔。

「いいですか普通8級へは8級の魔物を10匹倒して進級します。毎回の証明部位を入手できるとも限らないので、実際にはもっと多く倒さなきゃならない。進級には安定して倒せる実力が必要なんです」

 なるほど、俺の戦闘面を心配してくれているのか。


「自信がなく、最後の討伐証明の部位を持ってくるのを遅らせる人もいます。ギルドとしてそんな慎重な人ほど評価しています」

 俺はもう条件クリアしちゃった、この方法は無理。


「遅らすって、8級になるとデメリットがあるんですか」

「強制依頼は等級に応じて仕事が振られるんです」

 あ~、有ったなそんなの。


「オリは魔物と戦ったことはありません。獣をいくら狩っても進級はありません」

 実は有ったりする。おもに2匹が倒しているが。

「8級の魔物といえばコボルトでしたっけ」

 ゴブリンは9級、同じ雑魚のイメージだがここではコボルトの方が1つ上だ。

「有名なのはコボルトですね。そのクラスと理解してください」


「悪知恵があって力押しだけではダメな相手。普通冒険者は9級でゴブリンやコボルトと戦って経験を積みます」

 テーブルに膝をつき腕を組む。プルトさんそれは某最高司令官のポーズ、シリアスシーンで笑わそうとするのやめてください。

「オリは圧倒的に戦闘経験が少なすぎます。このまま級を進める気なのですよね」

「級を上げない選択もあるんですか」

「10級のままの人はいませんが、低レベルのまま街や比較的安全な仕事のみを受ける人もいます。自分一人分と考えれば生活できますし、長く続けられます」


「でもオリはそうじゃありませんよね」

「そうですね、いずれ別の国を見てみたいとも思ってますし」

 それは6級以上必要だ。

「わかりました、しばらくは討伐依頼中心に受けていただくようお願いします」

 危険なのはやだな。


 声色を変え「国外ですか、私も行ってみたいですね」とプルトさん。

 もしかして自分を連れてけとか思ってないですよね。

「そういえば言葉がどこでも通じるんですよね」

「魔王統一時代に1つに統一されましたからね」

 ’方言はあるんでしょうね’と言おうとしたが’方言’の単語を知らなかった。


「地域によって言葉の揺れってあるんですか」

「何ですかそれ」

「たとえば南大陸とはあまり行き来できないじゃないですか、そうするとその地方だけの特有な言い回しが生まれると思うんですが」

「何でそうなるんです。そんなの聞いた事ないです」

 ん?

「言おうとすることが一緒なら、どこで話しても同じ言葉になるじゃないですか」


 はい?

 地球での常識が通じない。この国は南北に長い、長さなら日本の本土並みだ。

 その国の中に方言がない?

 まして大陸全土で言語が一緒。


 言葉って揺れるものだろうと思って、ボトリスを使っての発声の実験を思い出した。

 言葉が勝手に翻訳された。あれは俺専用のチートじゃない。

 この世界の住人全員に起きていることだ。


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