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ちょいと偉人に会ってくる  作者: 鈴木ヒロオ
夏の末、秋のきっかけ

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配膳が終わると

 配膳が終わると、俺の席から反対側の一番向こうで、小六と真之介、千太と半助の四人が向かい合って座っていた。


 小六が千太と半助の二人に何かを話している。


 説教でもしているつもりなのか。


 二人はどことなくそわそわとして、膳の上の料理をじっと見つめていた。


 お預けを食う子犬のように。


 上の空で話を聞いていない二人に、小六は気付かないまま、長々と話している。


 やがて、小六が話を締めるように息をつくと、おもむろに杯を手に取った。


 だが千太も半助も瓶子を持つそぶりは一切見せず、すぐに箸を手にして、椀に盛られた高盛飯たかもりめしを争うように夢中で食べ始めた。


 その二人の姿を、しばし呆然と眺める小六。


 持つ杯は行く場を失い、やがて苦々しい表情を浮かべて手酌であおる。


 口もとが緩む俺に、ちらりと小六の視線が向いた。


 俺は何も見ていないふうを装い、そっと視線を外す。


 小六の隣で静かに笑う真之介には、気付いていない。


 彼らの中に花里の姿はない。


 厨の板の間で、梅菊さんと和江さんの三人で宴を楽しんでいるのだろう。


 女三人寄れば姦しい、どんな話をしているのだろうか。


 花里の、幸せそうに笑みを浮かべる顔だけは思い浮かぶ。


 俺も目の前の膳に向かう。


 千太と半助がまず一番に食べていた高盛飯。


 玄米に少量の小豆を混ぜて蒸した強飯こわめし


 俺の椀にも同じように高く盛られている。


 食べ切れる自信はまったくない。


 鴨肉だろうか、牛蒡と一緒に蒸してある。


 脂の匂いと土の香りが、ほのかに野性味を帯びて立ち上がる。


 茄子の焼き浸しからは、炙った皮の香ばしさと味噌の香りが漂う。


 鯛のなますや、芋や大根、蓮根の炊き合わせ。


 貝から出汁を取ったわかめの澄まし汁は潮の香りを運ぶ。


 そして、俺が作った栗ぜんざいも小さな椀に盛られている。


 俺の前に座る、甘い物に目がない又左さんが、栗ぜんざいに舌鼓を打っている。


 「はや栗の時節となりにけり。この蜜煮、いと甘く、いと旨し。」


 椀の内側まで舐めるように食べる又左さんに、「それ、去年の栗で冷凍していました」とは言えない。


 あまりにも美味しそうに食べる又左さんに、俺の栗ぜんざいをどうぞとばかりに差し出すと、いちもなく嬉しそうに受け取り、食べていた。


 広間は和やかな光に満たされ、人は語らい、酒を酌み交わす。


 いつしか障子戸は閉じられ、染める明かりは、夕日から蠟燭の灯りに変わっていた。






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