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ちょいと偉人に会ってくる  作者: 鈴木ヒロオ
夏の末、秋のきっかけ

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広間の四隅と

 広間の四隅と、その間に二つ、合わせて六つの高灯籠たかとうろうに、いつの間にか明かりが灯されていた。


 二つの材を組んだ木製の四脚の中央に細い竿がすっと立ち、その先の火袋ひぶくろの中で、橙色の炎がゆらりと揺れている。


 寺や神社の参道の石灯籠とは趣が異なり、どこか優しげで、空間を小さな聖域のように照らしながら、質素な広間にもよく馴染んでいた。


 ふと、一体いつ、誰が運び入れたのだろうかと疑問が湧いた。


 いくつかの灯皿の灯りも据えられ、灯芯から上がる炎はか細く儚げで、人の息づかいにも小さく震える。


 時折揺れる蝋燭の炎と震える小さな灯りが、薄暗い広間の壁や障子戸に人影を朧げに映し、宴にいっそうの賑わいを添えていた。


 すでに瓶子へいしを持ち席を巡る者や、車座になり杯を回し呑む者の姿もある。


 俺の隣にも、瓶子を持った源太さんがやって来た。


 そろりと胡坐をかくと、無言で瓶子を傾ける。


 俺も黙って椀を差し出し、一口啜る。


 源太さんは、俺の視線の先にあった高灯籠に目を留めると、どこか照れたように語り出した。


 それは、源太さんが花里から相談されて制作したものだと話してくれた。


 花里は、ある所で見た大きな石灯籠が忘れられず、それを着想に家の灯りとして頼んだのだという。


 揺れる明かりの中で、源太さんは俺がこれまで頼んできた品々や、今回の高灯籠のことにも触れ、この家からはどうにも変わった注文ばかり来るものだと、どこか楽しげに笑っていた。


 俺はまだ酒の入る椀を源太さんに返すと、源太さんはそれを受け取り、飲み干すと、続けるように口を開いた。


 小六からは、何に使うのかも告げられぬまま、今年も底のない木箱を一緒に作ってほしいと頼まれたという。


 真之介からは、円形に穴を開けるための丸鑿まるのみを求めて野鍛冶を紹介してほしいと依頼されたのだと、苦笑まじりに話していた。


 淡い光の加減で影を作る俺の顔は、源太さんにはどのように映っているのだろう。


 口元が緩んでいたに違いない俺の表情。


 源太さんの言葉の端々で、俺の中で、点と点が線で結ばれる。


 おそらく、花里の見た石灯籠は、鎌倉の大通りで目にしたものに違いない。


 小六は、八基に増えた養蜂の今後を考えて、巣箱の準備をしているのだろう。


 真之介は真之介で、椎茸栽培のために鑿を手に入れようとしているに違いない。


 それぞれが、俺の指示がなくとも思い思いに考えて働いている。


 源太さんは椀を俺に返すと、そこへ酒を注ぎ、立ち上がった。


 少し覚束ない足取りで、車座の輪の中へ戻って行く。


 輪の中からさざ波のような笑い声が響いている。




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