その日の仕事終わりに
その日の仕事終わりに、働く人たちに甜瓜を持って帰ってもらう。
皆、一つ二つと手に取り、ゆっくりと沈む日に追われるように坂道を下っていく。
思わぬ土産に、門で見送る俺へと嬉しそうに頭を下げ、家族のもとへ帰ってゆく。
蝉は一日の終わりを惜しむかのように震わせて鳴く。
海から吹いていた風は気配を変え、山すそへと降りていく。
気が付かないほどに、微睡むほどに、光は風景の色彩を変える。
明るさはひと時の赤い濃淡で縁取られ、色は幾層にも重なり合って深みを生み、やがて夜となる。
一日は無言のままに綴じ、新しい始まりを小さな家で静かに待つ。
ひよこは小さな灯りの届かない家の片隅、籠の中で音も立てずにそこにいる。
時が水の流れのように小さな淵に滞り、渦流はやがてゆるりと淵を離れていく。
生々流転。
時間は、ゆっくりと経過する。
小六、真之介、花里は、わずかに届く灯りの空間で言葉少なく、眠れる夜を待っている。
明日からは、俺を含めて四人は敷地を囲む塀作りに参加する。
門のある正面は板塀で作られるが、後の三面は雑木の小枝を束ねて編んだ柴垣で囲われるらしい。
裏には、裏口と厠のための不浄門が設けられる。
そのため、普段働く職人たち以外にも、多くの女や子どもが山での柴集めにやってくるらしい。
翌朝からは、いつもより賑やかになりそうだ。
明日の賑わいを待つ宵は、今は夜気にふくらみ、静かに佇んでいる。
家の中は、もう物音ひとつしない。
花里は座ったままうつらうつらとしている。真之介が肩を優しく支える。
明日に備えて、三人は何も言わずに筵の上に横になり始める。
俺も小さな灯りを持って舟に戻る支度を始める。
もうすでに、小六は気持ち良さそうな寝息を立てている。
物音を立てないように気をつけて外に出て、空を見上げる。
雲のない空に月が浮かび、星が輝く。
月は日に照らされ、星は遠い過去に輝き、その光を今夜届ける。
夜気の中に立つ俺に、空は明日の快晴を約束している。
光を届ける星の一つへ、俺はふっと想いを馳せる。




