翌朝、真之介と二人でぬかるんだ
翌朝、真之介と二人でぬかるんだ山道を歩く。
濡れた落ち葉や枯れ枝を踏みしめ、竹林へと分け入った。
選んで伐った二本の竹を抱えて家に戻ると、小六に節抜きを頼んだ。
土間に腰を下ろした小六は、いつでもどうぞと言わんばかりにこちらを見上げている。
俺は竹の節の位置を確かめながら指示を出し、小六に鋸を入れてもらい、必要な長さに切り分けていく。
二本の竹はわずかに太さが異なり、差し込んで組み合わせることで伸縮できる筒になる。
外径の大きい竹は対物レンズ用に四十センチほど、細い竹は接眼レンズ用に二十センチほどに整える。
これで焦点距離を微調整できる二段伸縮式の望遠鏡だ。
試作段階なので、竹の内側に残る節を滑らかに仕上げる必要はない。
まずは形にして、レンズとの相性を確かめることが先だ。
布に包んであった両凸レンズを取り出し、外筒の切り口にそっと合わせる。
とりあえずの固定には、飯粒を潰して作った糊を使い、竹の縁に薄く塗って貼り付けた。
接眼側の細い竹にも平凸レンズを同じように貼り付け、ゆっくりと差し込んで組み合わせる。
見た目だけは、ひとまず望遠鏡の形になった。
小雨に煙る外を覗いてみるが、風景はまだぼやけている。
上下左右が逆さまの倒立実像となって揺れていた。
レンズの形状を変えれば正立実像にもできるだろうが、天体観察にはこれで十分だ。
焦点が合う位置を探りながら、竹を伸ばしたり縮めたりする。
わずかに輪郭が締まる気配はあるが、まだ改善の余地があり、調整が必要だった。
それでも、まずは形になっただけで十分だと思えた。
成功の匂いは確かにある。
自然と口元に笑みがほころぶ。
その様子を見て覗きたがる小六を、俺は笑みを浮かべたまま制した。
不完全な状態で覗かせては、驚きが半減してしまう。
この試作品をもとに、雨が上がれば指物師の源太さんに制作を依頼しようと考えていた。
形になった二つのレンズの向こうで、銀河の夢は膨らみ広がる。
眠りに落ちた俺に、歌が星の瞬きのようにリフレインする。
♪The Galaxy Express 999
Will take you on a journey
A never ending journey
A journey to the stars
届かなかった月を越え、夢も現も境を失い、一つになる。
慈しみの瞳をした善が宙から手を伸ばす。
俺は腕を空へと掲げ、その手を握る。
小六、真之介、花里も一緒に、優しく旅へ導いてゆく。




