酔っ払い茉乃と柊の夜
「はあー。結城さん、彼女に結構飲ませました?」
少し遅れてやってきた柊が、茉乃の様子を見てため息をつく。
「んー?まあ、そこそこ?」
「ああ、やっぱり・・・」
結城もだいぶ飲んでいるようで、茉乃のことは一切気にしていなかった。そして当の本人はと言うと、江口にべったり絡んで、甘えている様子だった。
「こらこら茉乃!江口から離れなさい!ほら!!」
「うーん、そんなに近くないですよぅ。あ、柊さんも飲みましょ!ね?」
柊はもう一度大きなため息を吐き出してから、江口から彼女を引き剥がし、ぐいぐいと遠い場所に引っ張っていく。
少し離れた場所に置いてあるベンチに座らせて、柊は水を無理やり飲ませた。
「ほらこれ飲んで!俺がいない時に飲むのはダメって言ったのに・・・まあ仕方ないとは思うけどさ。江口に絡むのはダメでしょ!?」
「うーん、ひいらぎさんー。」
茉乃は柊にもたれかかる。
(くそう、可愛いな!でもどうするこれ?)
「好き・・・」
「茉乃・・・俺も好きだよ。」
「鷹宮さんのところに・・・行かないで・・・」
「え?」
「私帰っちゃうけど・・・でも・・やだよ、応援なんてできないよ・・・」
「どういうこと?」
「ずっと・・・好きだから・・最後まで一緒・・に・・・」
「茉乃!?」
そのまま柊の膝の上でこてん、と眠ってしまう。
「鷹宮を応援って、なんの話だ?」
不穏な言葉に柊は不安が募る。また何か起こるのか、あの時のように訳のわからない噂に振り回されるのか?
「茉乃、よくわからないけど、俺はずっと君のそばにいるから。離れ離れになんか絶対ならないから。」
柊は眠ってしまった膝の上の宝物を、そっと慈しむように撫でていた。
茉乃を、冷気を適度に張り巡らせた車の中に休めると、バーベキュー場に戻る。そこは先ほどまでと打って変わって、魔法術で肉や野菜を焼くといういつもの面倒な連中が現れ出した。
(酔ってくるといつもこうだよ!)
「ほらそこー、空中でやりすぎると下が汚れるから程々にしろよー。」
「鈴村さーん!りょーかいでーす!」
「飲んでますか?ビールまだありますよぅ?」
「俺は今日運転だから飲まないよっ・・て、そういえば結城飲んでたけど大丈夫?」
「あ、はい、僕が帰り運転します!」
どうやら川田は飲んでいないようだ。
出来上がっている連中を放っておいて、鷹宮に会いにいく。
「鷹宮。」
「鈴村くん?」
彼女はある程度食べ終わったのか、河原近くに椅子を置き、少し片付けながらも寛いでいた。市村は近くにいたが、柊が近付いていくとそっとその場を離れるのが見えた。
「何、どうしたの?」
「藤堂に何か言った?」
「え?・・・彼女、何か話したの?」
「いや。ただ、様子がおかしかったから。」
「そう。女同士の話だからあなたには言わないわ。」
「そうか。」
しばらく沈黙が流れた。
「ねえ、今度一緒に」
「俺は彼女と真剣に付き合ってるから。」
「・・・」
柊は真っ直ぐに鷹宮を見る。
「だから以前のような噂が立ったらもう放置はしない。鷹宮もその方がいいだろ?」
「・・・そうね。」
「意見が合って何よりだよ。ま、そういうことだから。」
「わかったわ。」
柊は目を逸らしてそこを離れた。
(釘はさせたかな)
その後佐藤や沢木に挨拶をして、その日は酔い潰れた茉乃を連れ家に帰った。
「ううん、頭が痛いいい。」
茉乃が目を覚ますと、そこは見たことのない天井と壁がある部屋だった。
「え?ベッド?どこここ?」
慌てて飛び起きると、ものすごく寝心地のいいベッドの上だった。薄手の羽毛布団が掛かっていて快適なベッドに少し惜しい気持ちも生まれたが、そうも言ってられないとズルズルベッドを降りようとする。
「あれ、起きた?」
柊がお茶を持って部屋に入ってきた。
(てことは、ここは柊さんの寝室!?)
「す、すみません!!また私何かやらかしました!?」
「・・・そうだねえ、まあ、あれはちょっとねえ。」
柊は思わせぶりな発言で茉乃をハラハラさせる。お茶をサイドテーブルに置いて、立ったままじっと茉乃を見つめている。
「なんだろう、なにしたんだろう?全然覚えていない・・・」
「茉乃?」
「は、はい?」
柊が、ベッドに乗った。ギシ、という音に茉乃の心臓がドキッとする。
「え・・・?」
そっと抱きしめられ、茉乃は少し力が抜ける。
「茉乃・・・」
「あ、あのこれはいったい?」
ゆっくりとベッドに倒され、柊はそのまま唇を重ねてくる。
「!?」
「ねえ、今夜、一緒に寝る?」
「!!」
「・・・なんて、冗談!」
「心臓が止まる・・・」
「でも、江口にあんなにべったりしてたのは許せないから、今日はキス百回ね。」
茉乃は目を丸くした。
「え?江口さんに何かしてました!?・・・ひゃ、ひゃっかい!?無理!無理です!!ごめんなさいー!!」
そのまま茉乃は柊にされるがままに、キスの渦の中に飲み込まれていった。




