13.始末
オスカーは、目の前にいる男と魔女に言った。
「お前らに、未来はない」
淡白な声に、二人は張ったはずの結界が違うものになっていると気付いた。上から書き換えようとしても、魔王の大魔法には敵わないらしい。低級魔女だということがわかった。
「一つ聞く。何故、彼女は不死身なんだ」
「しーらないっ」
「カール、貴様は」
「……あのお方が、決めたことだ」
「あのお方って誰だ」
「あ、あのお方だ」
杖を首元に突きつけ、言う。
「最期に聞く。誰だ」
滝のように汗をかき、青ざめた顔でカールは喉を鳴らした。言わないらしい。いや、言えないのか。
「まぁ、言えないわよねぇ。いった私たちの首が飛ぶもの」
「何?」
「契約よ、け・い・や・く」
呪術的なものかと考えたが、言えないのなら仕方ない。
「なら、死ね」
「まっ、待て待て待て!そんな、一従者が人を殺すなんて…!」
「できないとでも?証拠を隠滅するんすよ。こいつらで」
涎を垂らした狂犬たちがカールににじり寄る。
「特級魔物に食べられるなんて、よかったっすね」
「や、やめてくれ、やめてくれよ」
「そう言ってやめたのか」
「は?」
「彼女たちもそう言ったろ。やめてやったのか」
黙り込んだカールを睨み、杖で一発、首を刎ねた。血が飛び散り、返り血を頭から浴びる。
「わぁお、容赦なぁい」
「次はお前の番だ」
「いやよ、いーや!私は逃げるの」
「ここから逃げられるとでも?」
「ふふ」
追い詰められた状況のはずなのに、にこやかに彼女は笑う。ふっと息を吸い、唐突に歌い出した。聞いたことのない言語の、呪文のような、祈りのような歌に困惑していると、スティーヴンの結界が敗れた。
「なっ」
「じゃーね!」
魔女は暗闇の中に消えていくーーと思えば、首がーー飛んだ。
真っ黒な液体が、顔面につく。血の匂いはしなかった。
オスカーの目に映ったのは、暗闇なのにはっきりと見える、細く永く綺麗な爪が、サキュリーの首を掻いたところだけだった。




