11.引き換えに
「魔王様、情報が手に入りました」
オスカーが帰ってきたのは、数時間たった頃だった。
「遅い」
「申し訳ありません」
ピリついた空気の中、オスカーが報告書を手渡した。
「カールが脱獄したそうです」
ソファーで休んでいたジャスミンが飛び起きた。オスカーの襟を掴んで、怒鳴る。
「カールって、あのカール!?」
「はい」
「終身刑のはずよね!?」
「落ち着いて、ジャスミン殿」
ロゼッタに嗜まれ、ジャスミンが青ざめた顔でその場に座り込んだ。
「そんな…っ、ロティー…!」
ジャスミンが震え出し、大声で泣き出してしまった。
「ロティーが…!ロティーが危ない…!嗚呼、どうしましょう…!」
「落ち着いて、大丈夫だ。オスカー、情報はそれだけではないな。お前がそれだけ時間をかけたんだ」
「はい」
オスカーは険しい顔で、報告を続ける。
「魔女の目撃情報がありました」
「こちらも分析をしましたが、魔法陣が魔女のもの、それもシャーロット様が幼少期に使われていた魔法陣と一致します」
テオドールの報告に、オスカーが頷く。
「おそらく、ウィルバートの助手、カールが魔女と契約し、シャーロット様を拉致したものかと」
「なんてこと…!」
取り乱すジャスミンに、皆何も言えない。もう終わったはずの過去が、今現在、繰り返されようとしているのか。
「ウェルバートとカールの目的は一体なんなんだ」
スティーヴンの怒りに満ちた声に答えたのはオスカーだった。
「シャーロット様は、稀血、と呼ばれる珍しい血の持ち主のようです。ウェルバートの書記を読みました。フェリクス宰相にも確認をとりましたが、稀血の少女は、魔女になると大魔法陣を使うことができるそうで、それは世界を滅ぼすほどの力があるとのことです。不死身の力が何なのかまではわかりませんでした。申し訳ありません」
「いい。それで、場所は割れたのか」
「はい」
一同が愕然とした表情を浮かべた。そして、スティーヴンが何かに気づいたように、青ざめた。
「お前…!まさか…!」
「ラヲを使いました」
「馬鹿者…!」
「………もしかして…寿命を…?」
ジャスミンが震える声で聞く。その声にオスカーはふっと微笑んだ。
「シャーロット様に、顔向けできないので」
ジャスミンは勢いよく立ち上がって、オスカーの頬を打った。涙をこぼして、嗚咽まで漏らしオスカーを詰る。
「なんで…!貴方は私を止めてくれたじゃない…!なんで…!」
「オスカー。何年だ」
「…20年ほど」
「オスカー、さすがにやりすぎ」
ロゼッタも怒りの顔を浮かべている。
「二度とやるな」
スティーヴンの声に、オスカーは口笛を吹くように答える。
「俺は、貴方様に遣う以外に生き甲斐はないんですよ」
「…全く…」
呆れたようにため息をつき、スティーヴンが険しい顔をした。
「説教は後だ。シャーロットの場所を教えろ」
「はい。リニアの鍾乳洞の奥、狭い道が続きます。その先の開けた場所に、彼女はいます」
「行くぞ!」
『はい!』
一同転移魔法でリニアへ向かった。転移魔法でシャーロットの元までは行けない。魔女が邪魔をしているからだ。皆で狭い道を進むしかない。
ーーどうか、無事で。
皆がそう願った。




